ウェストコーストへの回帰
そんな最中の2024年11月、前作から約2年半ぶりにリリースされたのが、このたび日本盤が登場する『GNX』だ。これまでのケンドリック作品と比較すると12曲44分強とコンパクトにまとめられ、その時点での衝動を勢いのまま封じ込めたようなミックステープに近い印象の作品であり、“Not Like Us”や一連のビーフ用に発表された楽曲は未収録。ただ、冒頭の“wacced out murals”からドレイクを揶揄するだけでなく、地元開催のハーフタイム・ショーにケンドリックが選出されたことに不満を述べていたリル・ウェイン(ドレイクも所属したヤング・マネーのボスでもある)や、ドレイクとのバトル時に不穏な動きを見せたスヌープ・ドッグといった先輩格のレジェンドたちをも牽制しており、交戦モードは継続。一方で、ハーフタイム・ショーでのパフォーマンス決定を祝福してくれたナズには感謝を述べ、彼のストイックな名曲“One Mic”を下敷きにした“man at the garden”がアルバムに収録されている。
“Not Like Us”のMVで先行公開されていた“squabble up”ではデビー・デブのフリースタイル/エレクトロ・クラシック“When I Hear Music”を引用し、Gファンク調に仕上げてウェストコースト・ヒップホップ回帰を強くアピール。“reincarnated”では2パックの“Made Niggaz”を下敷きにして故人が憑依したようなラップも披露していて、先述の“man at the garden”も含めてミックステープ作品におけるビートジャックというストリート流儀の手法をオフィシャルな形に仕上げたようにも思える。また、先述の〈The Pop Out〉にも出演したAZチャイクやウォーリー・ザ・センセイといったウェストコーストのネクストブレイカーたちを数多く客演に招いているのも今作の特徴で、マスタードらの手掛けたリード曲のひとつ“tv off”でもレフティ・ガンプレイなる新鋭ラッパーをフックアップ。同じく〈The Pop Out〉にも出演していた同郷の人気ラッパーであるロディ・リッチは、ウォーリーらと共にタイトル通りのLA愛に満ちた“dodger blue”に参加した。
