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そして、2025年は……?

 一方で、TDE時代の同胞でもあったシンガーのSZAをフィーチャーした“luther”や“heart pt. 6”ではソウル~R&Bの名曲をサンプリングし、少し鎮めてクールダウン。ケンドリック作品ではお馴染みな“The Heart”シリーズの第6弾となる後者ではTDE時代を回想しながら関係者やブラック・ヒッピーの面々を次々とネームドロップし、自身が原因でブラック・ヒッピーとしての活動が上手くいかなったことへの謝辞も述べている。SZAをフィーチャーしたもうひとつの楽曲“gloria”では(コモンの名曲“I Used To Love H.E.R.”に代表される)ヒップホップを女性に擬人化するオーセンティックな手法で、ケンドリックが自身の体験も踏まえながらヒップホップに対する愛を綴り、アルバム通じてのテーマでもあるヒップホップというカルチャーへの敬意も強く感じさせて『GNX』は幕を閉じる。

 そんな『GNX』リリース以降もケンドリックの勢いは衰えることがなく、2025年2月に開催された第67回のグラミー賞では主要部門と呼ばれる〈最優秀楽曲賞〉と〈最優秀レコード賞〉を含む最多の5部門を受賞する快挙を成し遂げ、同月に開催されたスーパーボウルではSZAやマスタードだけでなく俳優のサミュエル・L・ジャクソンやテニス選手のセリーナ・ウィリアムズまで登場するメッセージ性の強いパフォーマンスを披露して高い評価を得た。なお、本稿執筆の最中にリリースされたプレイボーイ・カーティの新作『MUSIC』では、ケンドリックが参加曲の“GOOD CREDIT”でドレイクのことをふたたび揶揄しているのでないか、とリリース直後からネット界隈をざわつかせており……まだしばらくは火種が燻り続けそうな雰囲気だ。

ケンドリック・ラマーの参加作。
左から、バスタ・ライムズの2020年作『Extinction Level Event 2: The Wrath Of God』(The Conglomerate/Empire)、R+R=NOWの2021年作『Live』(Blue Note)

『GNX』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、ジャック・アントノフが在籍するブリーチャーズの2024年作『Bleachers』(Dirty Hit)、カマシ・ワシントンの2024年作『Fearless Movement』(Young)、テラス・マーティンの2020年作『Drones』(BMG)