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鼻歌から始まる独学の作曲法

――アルバムの収録曲は全曲、池本さんのオリジナルですが、新作のために書きおろしたナンバーが多いのでしょうか?

「“Ampil”、“Neverland”、“Playground”、“Switch”を 今回のレコーディングのために書き下ろしました。平野さんも僕もトロンボーンの良さや音色をフィーチャーするアルバムにしたいという思いがあったので、新しく書いた曲は、先ほどもお話ししたように、トロンボーンがメロディを吹き、テナーサックスがハーモニーをつけるという構成にしています」

――“Ampil”には、ブラジル音楽の雰囲気が感じられます。

「大学からコンテンポラリージャズを演奏し始めて、マリア・シュナイダーの楽曲に、もう何曲やったかわからないほど一生懸命取り組みました。マリアの音楽にはブラジリアンがめちゃくちゃ根づいているんですが、それを4年間聴いてきて、僕自身の作曲レパートリーの中にもブラジリアン的な要素が入ってきたように思います。

“Ampil”は、最初に思い浮かんだメロディを鼻歌で歌って録音して、それを譜面に起こしたんですが、そのとき〈これはブラジリアンな感じが合うんじゃないかな〉と気づきました」

――ディスク2のエレクトリックサイドには、ネオソウルやファンクに通じる要素がありますね。“Carnival (electric version)”にはアフロビートの雰囲気もあります。

「それは、大先輩の黒田卓也さんとの出会いが大きいと思います。黒田さんの曲を聴いたり、ライブに参加させてもらったりしてきたので、そうした要素も自分の中にもあると曲作りをしていて感じます。僕はロイ・ハーグローヴの音楽も好きですし。

でもエレクトリックバンド用の曲をこうしてしっかり書いたり、演奏したりするのは、実は今回が初めてなんです。“Playground”を書いているときに、〈自分にはこんな一面があるんだ〉と発見がありました」

――作曲については、曲を書き始めた時点で、すでにオーケストレーションが頭の中で鳴っているのでしょうか?

「islesでもクインテットでも、曲を作る方法は全部一緒で、僕はメロディから作ります。ピアノが弾けないので、鼻歌を歌って録音して、いいなと思ったらそれを譜面に書いて、ハーモニーも歌ってそこにつけていくんです。例えばislesだとホーンセクションが8人いるので、8人分のハーモニーを鼻歌で作ります。コード(和音)は頭の中で鳴っているけれど、その時点ではまだそのコードが何なのかわからない。書いた後に8人分の音をピアノで確認して、これはこのコードかな?と当てていく感じです。多分一般的なミュージシャンの作曲方法とは全く違う作り方だと思います。クインテットの曲作りのときも、トロンボーンとテナーのメロディラインが先にできて、そこにベースラインをつけて、コードはこれかな?と最後に当てています」

――作編曲をなさる方では、珍しいタイプかもしれないなと思いました。

「作曲に関しては完全に独学で、3年前から始めました。それまでは作曲をしたいと思っていませんでしたし、理論も習っていません。でも今ではいろいろな曲を作りたいと思うようになりました。

islesは作曲が達者なメンバーばかりなので、リハーサルに新曲を持っていくと、みんないろいろと質問してくるんですよ。〈ここでこう積んであるコードは、〇〇を使ってやってるの?〉とか〈技〉の名前を尋ねてくるんですけど、僕はその〈技名〉が何もわからない(笑)。ただ僕は中高大とビッグバンドをやってきて、スコア自体はめっちゃ見てきましたから、サックスやトロンボーンがこの辺の位置にいたらこういうサウンドになる、というのはわかる。でもそれが、どういう理論でそうなっているのかはわからない。メンバーのみんなから〈すごく新しい音がする〉、〈誰か特定の作曲家っぽさがないね〉、〈いい意味でオリジナリティが出ている〉と言われることが多いのは、そういう作曲の仕方をしているからかもしれません」

――これからアルバムの発売、ライブツアーの開催と、このクインテットの音が一気に広まっていくのが楽しみです。

「レコーディング中にもメンバーの化学反応、その場でしか起こらないことがどんどん起こって、『Flip the Switch』は僕にとっても想像以上の出来になりました。レコーディングした音源を聴き返していると、〈ここをこうしたら、また違う世界に行けるかも〉という、リアレンジのアイデアも生まれてきています。僕はこのクインテットのサウンドが大好きなので、ぜひ皆さんに聴いていただきたいです」

 


RELEASE INFORMATION

池本茂貴 『Flip the Switch』 Days of Delight(2025)

リリース日:2025年4月24日(木)
品番:DOD-053/054
定価 :3,850円(税込)

TRACKLIST
Disc I: acoustic side
1. Crouching Start
2. Ampil
3. On a Jazzy Night
4. Fallen Snow
5. Neverland
6. Carnival_acoustic ver.
7. Lux

Disc II: electric side
1. Rhythm Blocks
2. Playground
3. Into the Darkness
4. Carnival_electric ver.
5. Switch

■演奏者
池本茂貴 trombone
西口明宏 tenor saxophone
武本和大 piano, electric piano, fender rhodes
中林薫平 bass, electric bass
小田桐和寛 drums, electronic drums

(2024年10月22日、23日 東京録音)

 

LIVE INFORMATION
2025年4月27日(日)滋賀・びわこジャズ東近江 2025
2025年4月28日(月)愛知・名古屋 Mr.Kenny’s
2025年4月29日(火)滋賀 COLTRANE
2025年4月30日(水)兵庫・神戸 VARIT.
2025年5月1日(木)静岡・浜松 Hermit Dolphin
2025年5月12日(月)東京・恵比寿 BLUE NOTE PLACE
2025年5月30日(金)東京・成城学園前 The Moment

 


PROFILE: 池本茂貴
1996年、兵庫県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。大学では慶應義塾大学ライト・ミュージック・ソサエティに所属し、約3年間コンサートマスターを務めYAMANO BIG BAND JAZZ CONTESTにて3年連続最優秀賞(1位)を獲得。黒田卓也グループや大西順子 presents THE ORCHESTRAに参加。現在は都内を中心に自身のラージアンサンブル〈isles〉(読み:アイルス)やクインテットにて活動している。islesでは2023年7月に初となるミニアルバム『Oath』をリリースし、東京・丸ノ内COTTON CLUBにてリリースライブをおこなった。2024年4月14日におこなった2度目となるCOTTON CLUB公演は完売、大盛況となる。同年7月にはグラミー賞を7回受賞しているマリア・シュナイダーとの共演を果たし、2025年4月にDays of Delightからリーダークインテットのデビューアルバム『Flip the Switch』をリリース。サポートではいきものがかり、上白石萌音などのレコーディングへの参加をはじめ、MISIAの各ツアーやKing Gnuのスタジアムツアーに参加している。

 

Days of Delight 公式サイト:https://www.dod-jp.com/