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アジカンの躍進とエモ〜ポストロックの賑わい

バンプと並んで〈下北系ギターロック〉の顔と言うべきバンドが、結束バンドのモチーフであり、“転がる岩、君に朝が降る”がカバーされてもいるASIAN KUNG-FU GENERATION。彼らのインディーズデビューは2002年11月リリースの『崩壊アンプリファー』で、レーベルはUNDER FLOWER RECORDSから。代表曲“リライト”を含む2004年発表の『ソルファ』がオリコンチャートで1位を獲得したことは、下北系の流れの一つの到達点だったと言える。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『崩壊アンプリファー』 ソニー(2003)

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『ソルファ』 キューン(2004)

2020年代にUK.PROJECTによって発掘されたWurtSが当初アジカンをモデルとし、TikTokで人気を獲得していったことや、〈20年代型ネオ解釈邦楽カバーコンピレーションアルバム〉と銘打たれ、主に2000年代〜2010年代の楽曲を若手アーティストがカバーしたAVYSS主宰のコンピレーション『i.e』の1曲目がアジカンの“Re:Re:”だったことも時代を感じさせる出来事だった。

VARIOUS ARTISTS 『i.e』 AVYSS(2025)

当時の下北沢のバンドたちは90年代の欧米のシーンに触れて育ち、ニルヴァーナ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、レディオヘッドなどからの影響を日本語の歌へと昇華するバンドが多かったが、アジカンもウィーザーやオアシスといったバンドからの影響を受けつつ、同時にeastern youthやNUMBER GIRLといった日本のハードコア〜エモの系譜に連なるバンドに影響を受けていたことは、この後の流れを考える意味でも重要だったと思う。

同時代のバンドで言えば、スマッシング・パンプキンズやダイナソーJr.に加え、COWPERSやBP.といった日本のバンドからも影響を受けたVELTPUNCHも再評価の機運があり、すでにひとひらやsidenerdsといった下の世代のバンドが彼らのファンであることを公言している。

このように、2000年代前半は〈下北系〉の流れと並行するように、ハードコアをルーツとするエモ〜ポストロックの流れが生まれた時期でもあり、bloodthirsty butchers、HUSKING BEE、eastern youth、NUMBER GIRLらを契機としつつ、downyや54-71らがメジャーデビューをして、MONOやenvyらはいち早く海外へと進出。the band apartが特異な存在感を示しつつ、ポストロックの文脈においてはtoeの登場が決定打になったと言える。