トバイアス・ジェッソ・Jr.、250と完成させた〈新たな藤井 風のサウンド〉
まず、楽曲を再生すると〈Doko ni ikō Hachikō...〉というサンプリングボイスがリフレインする。それに続いてシンセストリングスと藤井の漂うような歌声が重なり、音像がゆっくりと立ち上がっていく。ダンスミュージックを基調にしたサウンドと、ループ感のあるビートがY2K的な質感を帯び、さらに骨太な四つ打ちのリズムがしなやかなグルーヴを生み出す。シンプルなコード進行ながら、聴く者をじわりと楽曲の深部へと引き込んでいく。
コライトで参加したトバイアス自身のオリジナル曲は、ピアノを軸にしたメロディーとイノセントな歌声が印象的で、今回の“Hachikō”を聴くと少し意外に感じるかもしれない。だが、彼が昨年コライトで参加したデュア・リパ『Radical Optimism』の収録曲にはクラブサウンドのものも多く、そこには“Hachikō”と地続きの音楽的感触が見て取れる。藤井とトバイアスが具体的に“Hachikō”をどう書き上げたかはわからないが、サウンドやアレンジに関係なく両者の非凡なメロディーセンスが発揮された楽曲であることは間違いない。
そして、ポンチャック(日本の演歌から派生したトロットという韓国の音楽ジャンルの別称)を独自のダンスミュージックとして消化するなど、ジャンルにとらわれない音楽性を持つ250が加わることで、新鮮さと安定感を併せ持った〈新たな藤井 風のサウンド〉が完成したのだ。
また、“Hachikō”がすべて英語詞というのもひとつポイントかもしれない(ニューアルバムも全曲英語詞とのこと)。英語のリリックと前述した日本語のサンプリングボイス(楽曲後半ではコーラス部分で実際に歌唱される)との対比がおもしろく、英語と日本語が交錯する構造そのものがボーダレスな時代における音楽のあり方を体現しているとも言えそうだ。
タイトルも〈Hachiko〉ではなく長音符号を付けた〈Hachikō〉と表記したのも、日本(と、その文化)を正しく世界へ届けるという心意気の表れなのかもしれない。
飼い主の帰りを辛抱強く待ち続けたハチ公は、10年後に天国でようやく再会を果たした。忠誠心への敬意が込められた“Hachikō”は、〈愛する人を信じて待つこと〉をひとつのテーマとして掲げているように感じた。それは、藤井のニューアルバムのリリースを待ち続けるファンたちの姿にも重なる(藤井本人もそうコメントしている)。同時に、タイムパフォーマンスが重視されるこの時代に対する、ささやかな問いかけのようにも響く。
この曲は、大衆に向けたメッセージというより、リスナーやファンの一人ひとりへ静かに語りかけてくる。焦らず、日常を楽しみながら信じて待つ。その先に、愛する人と過ごすかけがえのない時間が待っているのだと。
RELEASE INFORMATION
リリース⽇:2025年6月13日(金)
TRACKLIST
1. Hachikō
リリース⽇:2025年9月5日(⽔)
■初回盤(2CD)
品番:UMCK-7275
価格:4,950円(税込)
仕様・特典:紙ジャケ 三つ折りソフトパック、ブックレット、歌詞/対訳・解説付き、両⾯ポスター(B3変形サイズ:515mm × 364mm)
DISC 2には前作『LOVE ALL SERVE ALL』リリース後からこれまでに発表された6 曲(全世界でストリーミング累計3.5億回再⽣されている“満ちてゆく”やプロデューサーにA.G.クックを迎え制作された“花”、“Feelinʼ Go(o)d”など)に未発表曲「Itʼs Alright」を加えた作品『Pre:Prema』(読み:プリプレマ)を収録
■通常盤(CDのみ)
品番:UMCK-1798
価格:3,520円(税込)
仕様・特典:紙ジャケ 三つ折りソフトパック、ブックレット、歌詞/対訳・解説付き
TRACKLIST
DISC 1 ※初回盤・通常盤共通
1. Casket Girl
2. I Need U Back
3. Hachikō
4. Love Like This
5. Prema
6. It Ainʼt Over
7. You
8. Okay, Goodbye
9. Forever Young
DISC 2 ※初回盤のみ
1. grace
2. Feelinʼ Go(o)d
3. Workinʼ Hard
4. Itʼs Alright
5. 花
6. 満ちてゆく
7. 真っ⽩

