今世紀最高のアーティストの一人にして、Aの衝撃と情熱は記録にも記憶にも残る。〈サマソニ〉のヘッドライナーとして12年ぶりの来日を控えるなか、タイムリーなベスト・アルバムを入口にしてそのタイムレスな魅力に触れてみよう!

DISCOGRAPHIC ALICIA KEYS
アリシア・キーズを知るための11枚

ALICIA KEYS 『Songs In A Minor』 J(2001)

コロムビアでリリース拒否された曲も収めながら、全米1位を記録してグラミーにも輝いた圧巻の初作。“A Woman’s Worth”のように完成されたアリシア節と、ジャーメイン・デュプリ制作によるODBネタの“Girlfriend”のようにプロダクション主導の楽曲が好ましく並ぶ。キャンディやブライアン・マックナイトとの仕事もいま聴くと新鮮だ。

 

ALICIA KEYS 『The Diary Of Alicia Keys』 J(2003)

ジンクス不問でその人気を不動のものにしたセカンド・アルバム。新進気鋭のカニエ・ウェストを共同制作者に起用したドリーミーな“You Don’t Know My Name”と持ち味を発揮したエモーショナルなピアノ・バラード“If I Ain’t Got You”の2大ヒットをはじめ、ヒップホップ調の“Karma”、ティンバランドやトニーズとの共演も聴きどころ。

 

ALICIA KEYS 『Unplugged』 J(2005)

規格外の2作品に続き……というマライアの成功コース(?)を辿ったMTV番組でのライヴ録音盤。カニエ作の新曲“Unbreakable”のほか、ブレンダ・ホロウェイやストーンズのカヴァーも他では聴けないロウな熱演が楽しめる。当時ヒット中だった“Welcome To Jamrock”でダミアン・マーリーらを呼び込んでシメるストリートなノリもいい。

 

ALICIA KEYS 『As I Am』 RCA(2007)

問答無用の“No One”を筆頭にエモーショナルな歌声の遠心力を増した特大ヒット作。リンダ・ペリーやハロルド・リリーら共作者も交えて普遍的な歌心を紡ぐ懐の深さが頼もしいなか、当時のレトロ・ソウル熱に呼応したようなジャック・スプラッシュ共作の“Teenage Love Affair”が瑞々しい。いま見るとジャケは『Piano Man』風?

 

ALICIA KEYS 『The Element Of Freedom』 J(2009)

プロダクションの核を担うジェフ・バスカーが幻想的なタッチで新たな魅力を引き出した4作目。これが最後の参加となったクルーシャルもドレイクとのアトモスフェリック系など新機軸に挑む一方、初参加のスウィズ・ビーツはビヨンセとのAB共演“Put It In A Love Song”でキャッチーな新色を添える。過渡期ならではの多彩さが光る傑作。

 

ALICIA KEYS 『Girl On Fire』 RCA(2012)

レーベルもマネジメントも制作陣も一新して臨んだ転機の一作。サラーム・レミやポップ&オーク、ベイビーフェイスらと組んだ手合わせの新鮮さもありつつ、伸び伸びと広がるサウンドの濃厚な振り幅が楽しい。ドクター・ドレーとスウィズによる威勢のいい“New Day”、マックスウェルとのデュエット“Fire We Make”など佳曲揃いだ。

 

ALICIA KEYS 『HERE』 RCA/ソニー(2016)

もともとファレルとの制作から始まり、マーク・バトソンやスウィズらとの共同制作でまとめられた6作目。ノーメイクのジャケが示すようにプリミティヴな剥き出しの意識をルーツであるNYヒップホップ中心のサンプルに託したような印象もある。エイサップ・ロッキーとコラボした“Blended Family (What You Do For Love)”も重要。

 

ALICIA KEYS 『ALICIA』 RCA/ソニー(2020)

前作の音像を受け継ぎつつスタイルの軸を初期のR&Bに揺り戻した側面もある7作目。数年かけて制作した痕跡か、エド・シーランやライアン・テダーもコライト陣に名を連ね、サンファやミゲル、ティエラ・ワック、カリード、スノー・アレグラ、ジル・スコットまでゲストもかつてなく多いが、全体に緩やかな統一感があるのはアリシアならでは。

 

ALICIA KEYS 『KEYS』 RCA(2021)

RCAでの最終作ながらも初の2枚組で届けた意欲作。同じ曲を盤ごとに別ヴァージョンで聴かせる趣向で、〈Originals〉はラファエル・サディークらと本来の作法で聴かせ、〈Unlocked〉はマイク・ウィル・メイド・イットと組んだヒップホップ寄りの作りとなる。スウェイ・リーやブランディ・カーライル、カリード、ラッキー・デイらも参加。

 

ALICIA KEYS 『Santa Baby』 Alicia Keys/Mom + Pop(2022)

そのお目見えがクリスマス企画盤だったことも思い起こさせる、独立後の初リリースとなったホリデイ・アルバム。スタンダードや“Happy Xmas (War Is Over)”などのカヴァーに加え、書き下ろしの“December Back 2 June”などオリジナル曲も上品で麗しい出来映えだ。セルフ・プロデュースでシンプルに原点回帰した趣もある。

 

VARIOUS ARTISTS 『Hell’s Kitchen』 Alicia Keys/Interscope(2024)

自身の楽曲を用いてアリシアが製作し、トニー賞で13部門にノミネートされた半自伝的なミュージカルのサントラ。各時代の代表曲の数々がブロードウェイ・キャスト陣による圧巻の歌唱で味わえる内容で、アリシアが主演のマレア・ジョイ・ムーンとデュエットで披露した書き下ろしの新曲“Kaleidoscope”も収録されている。