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必然的な反応を積み重ねて作り上げる時間の芸術

――その場の閃きを重視することはまさに即興的なアプローチだと思いますが、即興演奏の最大の魅力とはなんでしょうか?

「即興にしろコンポーズ(作曲/構成)されているものにしろ、最終的にはどっちも一緒であればいいというのが理想です。理想を言えば、コンポーズしてあるものも全部即興で出来上がればいいけど、現実には、たとえばメンバーが複数いると、即興だけだとまとまりがなくなってしまう。ある程度コンポーズされていたほうが聴きやすいですよね。でも、もともとは即興を書き留めたことがコンポーズの原点だと思うんです。それを拡大解釈すると、全部インプロビゼーションであればいいなと。僕はそういう気持ちで演奏しています。

最大の魅力となると……一番大事なのは必然的に物事が進んでいくことですかね。急に変化する部分もあっていいですが、それも〈こうなったから、こうなる〉というふうにつながっていて、全てが必然的に進んでいくことが理想です。相手がこういう演奏をしたから僕の演奏はこうなった、みたいなことの連続で音楽ができていくと面白い。即興演奏だとそれが如実に現れるんです。それが一番大きな魅力だと思います。コンポーズされたものもそういうふうに、その場で出来上がったかのように演奏できれば、一番フレッシュで面白いなと。曲を演奏していても生まれたてのものが出てくれば説得力がある。

今回のアルバムは即興演奏の比重が大きいので、必然性をもってその場で生まれたフレッシュなものがパッケージされていると思います。それは説得力という意味で強固なものなんじゃないかという自負があります」

――根底に必然性があるという考え方は興味深いです。どんなにカオティックでもその裏側に必然性を見出すといいますか。予定調和の〈機械的な反応の連鎖〉と似ているようで別の話だとも思います。

「素晴らしいミュージシャンは相手の音をちゃんと聴くことができる。聴いた上でいろんな会話ができて、そのつながりが音楽になっていくのが理想です。必然性といっても、この人はこういう演奏をするだろうとか、このメンバーが集まったらこういうセッションになるだろうとか、そういう予測できるものではなくて。

実際、メンバーの組み合わせを見てどんな音楽になるか予想していたけど、蓋を開けたら全然違う演奏だった、みたいなことはよくありますし、それこそがライブの面白さの一つですよね。だから予定調和とは全然違います。むしろ予定調和に終わるとがっかりする。そうではなく、その時その場に集まった人たちが、カオスな状況も含めて必然的に反応し合うことが積み重なることで、時間の芸術が出来上がっていく。そうなれば退屈な瞬間もないと思うんです」

――即興演奏やフリーな表現は、そうした面白さがある一方で、リスナーを限定してしまう側面も否めないと思います。新しいリスナーを開拓する、もしくはシーン全体を活性化していくにあたって、どのようなことが必要だと感じますか?

「どのジャンルでもそうですけど、ダメなものがあると良くないイメージになるんです(笑)。縦割りで見るのではなく、良いものをちゃんと評価して、底上げされるといいんじゃないかな。多分フリー系はダメなものが多くて、全体的なイメージもあまり良くない(笑)。偉そうな言い方ですけど、本当に素晴らしいフリージャズ、一瞬たりとも飽きさせない即興演奏が増えて、そういうものに触れる機会も増えると、フリーと呼ばれるものも見直されるんじゃないかと思います。紹介する人が良いものを取り上げて、良いものに触れる機会を増やしていくことが大事だなと。それはすごく難しいでしょうし、そもそも良いとはなんなのかという問題もありますけどね。

ただ、より多くの人に受け入れられればより素晴らしいかというと、そうとは限らない。たとえば、人がたくさんいると当たり障りのない話しかできないけど、2人きりになると会話が弾んで、プライベートな話とかディープな話ができることってあるじゃないですか。音楽もおそらく一緒で。たくさんの人には受け入れられないけど、限定された人数のほうが深く語り合えることがある。もちろん今回のアルバムはより多くの人に聴いてほしいですけど(笑)、少ない人数だから届けられる音楽もあるはずで、その面白さはあるんじゃないかと思いますね」

(左から)類家心平、平野昭臣(Days of Delightファウンダー&プロデューサー)

 


RELEASE INFORMATION

類家心平 『メタモルフォーゼ』 Days of Delight(2025)

リリース日:2025年8月28日(木)
品番:DOD-056
価格:2,750円(税込)

TRACKLIST
1. Improvisation#1
2. Improvisation#2
3. Splicing
4. Improvisation#3
5. Dear
6. Improvisation#4
7. Improvisation#5
8. Coerulea
9. Improvisation#6
10. Improvisation#7
11. Amber Gris
12. Improvisation#8
13. Improvisation#9
14. Improvisation#10
15. Improvisation#11

(2025年6月10日 東京録音)

■演奏者
​類家心平 trumpet, sampler, pedals

 

LIVE INFORMATION
発売記念ライヴ

2025年10月10日(金)東京・渋谷 公園通りクラシックス

《Jazz Night at the Gallery 2025》powered by Days of Delight

2025年10月25日(土)東京・南青山 岡本太郎記念館
開場/開演:18:45(予定)/19:00(予定)
出演:類家心平(トランペット)+瀬尾高志(ベース)
参加費:入館料のみ(一般650円/小学生300円)
定員:限定25名(抽選制)
詳細:https://taro-okamoto.or.jp/event/《jazz-night-at-the-gallery-2025》powered-by-days-of-delight/

 


PROFILE: 類家心平
トランペット奏者。1976年の青森に生まれた類家心平は、10歳のときにブラスバンドでトランペットに出会い、高校生のときにマイルス・デイヴィスでジャズに開眼。高校卒業後に海上自衛隊音楽隊に入隊してトラペットの腕を磨いた。2004年にジャムバンド〈urb〉でメジャーデビューを果たすと、リーダーバンド〈類家心平 4 piece band〉〈RS5pb (Ruike Shinpei 5 piece band)〉を次々に始動させ、多彩な作品を送り出す。一方では〈RS5pb〉のバンドメイトでもある中嶋錠二とのデュオユニット〈N40°〉や完全即興のソロパフォーマンスなど、さまざまな編成・コンセプトの活動を併行的に展開している。このほか、〈菊地成孔ダブセクテット〉〈DCPRG〉〈WUJA BIN BIN〉をはじめ多くのユニットに参画し、さらには星野源や藤原さくら等のレコーディングに参加するなど多彩なフィールドで活躍している。

 

■Days of Delight
公式サイト:https://www.dod-jp.com/
YouTube:https://www.youtube.com/@daysofdelight6986/videos