『Led Zeppelin II』でZEPはZEPになった
リフ主導のヘビーでブルージーなロックという点では、5曲目“Heartbreaker”や8曲目“Moby Dick”、ラストの9曲目“Bring It On Home”もそうだ。“Heartbreaker”では歪みまくったジョン・ポール・ジョーンズのベースがメタリックな重さをさらに加重しており、中盤のブレイクから始まる饒舌なギターソロ以降のテンポアップといい、構成や展開の妙にもZEPらしさが満載。静と動を自由自在に切り替えるテンポチェンジやドラマティックな構成で聴かせる曲は演奏力なくしてできないことだが、そこは常に彼らの強みであり、“The Lemon Song”でも同様の〈らしさ〉を聴くことができる。一方、“Moby Dick”はジョン・ボーナムがメインになる曲で、これもZEPにしか実現不可能な作品。4分20秒の曲尺で3分近くを占めるボンゾの雄弁なソロは、ドラムが、あるいはドラマーがロックナンバーの主役に躍り出ることが可能だと証明している。
本作は1969年12月、米ビルボード200でチャート1位を獲得し、デビュー間もないバンドが早くも頂点にのぼり詰めたことを決定づけるアルバムになった。強い刺激に満ちたまったく新しいロックに当時のリスナーが惹かれたことは想像に難くないが、ポップさも『Led Zeppelin II』の成功の要因の一つにちがいない。たとえば、軽快なリズム&グルーヴが曲の中心にある“Living Loving Maid (She’s Just A Woman)”は、かなりキャッチーかつポップで親しみやすい。
ロバート・プラントが妻への愛を歌った感動的な“Thank You”はどうだろう。アコースティックギターや12弦ギターを活用したフォークロックサウンドとジョンジーのハモンドオルガンがもたらす温かみは、ほかの曲のヘビーさとは真逆で胸を打つ。それに、この曲は歌がとにかく素晴らしい。彼が得意とする甲高い声で叫ぶように歌うのではなく、通常よりも低めの声で感情を込め、抑制的だがエモーショナルで叙情的な歌唱表現が見事だ。ロバート・プラントの歌心がここにある。
歌心という点では、“Rumble On”のバースにおけるボーカリゼーションも切ない。「レッド・ツェッペリン:ビカミング」を見て意外だったのが、その“Rumble On”が本作の制作、およびバンドにとって重要な曲だったことだ(それなのに2007年の再結成時以外ライブにてフルで披露されたことがなかったというのは、なぜなのだろうか)。フォークやブルースを折衷させた独自のアプローチ、コントラストが効いた構成は、まさにZEPならでは。高音も自在に用いたジョンジーの多弁なベースとボンゾのキック&スネアワークが生むグルーヴも唯一無二だ。
なおロバート・プラントが主軸になって書いたという“Rumble On”の歌詞は、J・R・R・トールキンの言わずと知れたファンタジー小説「指輪物語」から影響を受けたものであることは有名だ。エキセントリックな変わり者ロバート・プラントの英国ファンタジー的な歌詞世界が花開いたのが、この2ndアルバムでもある。映画ではそのあたりもしっかりと押さえられており、見応えがあった。
『Led Zeppelin II』で、バンドはついに完成した。だからこそ4人がレッド・ツェッペリンに〈なる〉ことを描いた「ビカミング」は、1970年1月のロイヤル・アルバート・ホール公演で幕を閉じる。本作をもって、ZEPはZEPに〈なった〉のだ。そのことを堂々と宣言し、世界のロックシーンの王座にいよいよ就いたのがこのアルバムである。