このアルバムにはソウルがある
精神的なリラックスを求めるセラピーも兼ねた本作では、黒人コメディアンのドルスキがジャスティンと対話しながらブラック&マイルド(葉巻)を勧める3種のスキットも挿まれる。パパラッチ事件を仄めかすものもあるが、“SOULFUL”ではドルスキが「このアルバムにはソウルがある」「お前の肌は白いけど魂は黒い」と、ポップスとR&Bの狭間で揺れるジャスティンにソウルなシンガーとして太鼓判を押す。以前、R&Bを意識して作った『Changes』(2020年)がグラミー賞でR&B部門ではなくポップ部門にノミネートされたことに不満を漏らしたジャスティンを勇気づけるかのような対話だが、本作は全米R&Bアルバム・チャートで1位を獲得した。
来る第68回グラミー賞でアルバムと共にノミネートされた“DAISIES”と“YUKON”は、フィールドを跨ぐジャスティンらしさに癒しの要素が加わった本作の目玉だろう。ギターのオーガニックな音色を生かしたこれらの楽曲ではディジョンが制作に参加。ディジョンの右腕とでも言うべきミック・ギーも制作に関わった“DAISIES”はシャッフル調のポップ・ロックで、〈最優秀ポップ・パフォーマンス(ソロ)〉部門にノミネート。一方の“YUKON”は〈最優秀R&Bパフォーマンス〉部門にノミネートされているが、ピッチを上げたヴォーカルの中でエミネム“Untitled”のヴァースを引用し、2チェインズの声も挿んだとされるこれも、ヒップホップへの愛を示しながらフィールドを跨ぐ。
カントリー風でもある“DEVOTION”はディジョンがヴォーカリストとしても参加したアコースティックなスロウ・ジャム。セクシャルな歌詞に〈ハレルヤ〉という言葉も交えたこの曲には、以前“Peaches”に客演したダニエル・シーザーも共同制作者として名を連ねている。最新作『Son Of Spergy』で家族や教会との繋がりを再確認したダニエルとは心境的にもシンクロしていたのかもしれない。“GLORY VOICE MEMO”で神に救いを求めながら賛美するジャスティンは、本作の随所にクリスチャンとしての信仰心も滲ませている。その着地点としてアルバムの最後では、ワイナンズのリード・シンガーで牧師のマーヴィン・ワイナンズに代唱させた“FORGIVENESS”で神に赦しを乞う。讃美歌の定番“Lord, I Lift Your Name On High”をアレンジして歌った清美な曲。神の恩義に感謝して過去をリセットしたジャスティンは、晴れやかな気持ちで続編となる『SWAG II』に向かうのだった。
ジャスティン・ビーバーの客演した作品を一部紹介。
左から、ジュース・ワールドの2022年作『Fighting Demons』(Glade A/Interscope)、ケラーニの2022年作『blue water road』(Atlantic)、スクリレックスの2023年作『Don’t Get Too Close』(Owsla)、ドン・トリヴァーの2023年作『Love Sick』(Cactus Jack)
左から、ジャスティン・ビーバーの2020年作『Changes』(Def Jam)、2021年作の豪華盤『Justice (The Complete Edition)』(ユニバーサル)、客演したミーゴスの2021年作『Culture III』(Quality Control/Motown)、DJキャレドの2021年作『KHALED KHALED』(We The Best/Epic)