悲劇からの復活後、その創作意欲がさらなる広がりを見せるausの歩み
Yasuhiko Fukuzonoのソロ・プロジェクトであるausは2004年に活動を開始。Uカヴァーなど海外レーベルからの音源発表を経て、2006年にprecoからリリースしたセカンド・アルバム『Lang』が国内外のエレクトロニカ・シーンで高く評価される。ピアノやシンセによる美麗で心地良い温度感を湛えたウワモノ、繊細さと肉体性を同居させたビートは、続く『Curveland』(2007年)と『After All』(2008年)で磨き上げられていくも、自身の運営するFLAUの活発化などもあり、ausとしての活動は緩やかになっていった。
加えて2017年、レーベル・オフィスへの不法侵入と盗難によって機材や楽曲データをすべて失うという悲劇が彼を襲う。そのショックから、しばらく制作に意識を向けることができなかったそうだが、2023年に4つ打ちを敷いたフロア・オリエンテッドなシングル“Until Then”、ヘニング・シュミートや高原久実ら多くの知人たちと制作したアルバム『Everis』で復活。同年に長岡亮介とのフォークトロニカ的なコラボ作『LAYLAND』、2024年にメグ・ベアードやジュリアナ・バーウィックを招き、ポスト・クラシカル色を強めた『Fluctor』をリリースするなど、以降は精力的に活動中だ。配信のみだがマシュー・ハーバートが2023年に発表した『The Horse』の特別版にダブ・テクノを思わせるリミックスを提供するなど、再始動後はそれまでに増して音楽的な幅を広げている印象のaus。喪失を乗り越えた彼が音を鳴らす様は、逞しく、凛々しい。 *田中亮太
ausの作品を一部紹介。
左から、2006年作『Lang』(preco)、2013年のリミックス集『ReCollected』(PLOP)、2023年のシングル“Until Then”(FLAU)、2023年のアルバム『Everis』(Lo/FLAU)、長岡亮介との2023年のコラボ作『LAYLAND』(ENNDISC/FLAU)、2024年作『Fluctor』(FLAU)