
気持ちが高揚したままレコーディングした
──トピックもいろいろあって。
「前々作の『crepuscular』(2021年)はコロナ禍、前作の『Steppin’ Out』(2023年)は〈コロナ禍が明けるかな〉ぐらいのタイミングだったので、今回のアルバムに至るまでの期間は、ライブもいっぱいできましたし、わりとアクティブだったんですね。弾き語りのライブも始めて、とくに2025年はいろんなイベントのお誘いをたくさんいただくようになって。でも制作もあるから、ライブは月1本にしようっていう感じで決めてやってたんです。月1本って言っても、やっぱり準備とかがあるからそれなりに時間は取られるし。あと、フジロックにも出まして、そのときはいきなり本番っていうのもちょっとキツいから、ちょこっとライブをやっといたほうがいいよねって……〈ちょこっとやろうね〉って言って、会場がビルボードライブっていう(笑)。
それでまあ、7月は全くアルバムの作業はできなかったんですが、そのあと作業に戻って、そうこうするうちにツーマンや海外でのライブがあり、ライブと制作が常に交互にあって。だから、ライブのノリっていうのかな、ライブ感のあるサウンドとかそういうことじゃなくて、ライブをやってるときの、ライブ期間中の気持ちの盛り上がりみたいなものを持ったままレコーディングしてたから、こもって作業してどうこうって感じとちょっと違ったんですね、気分が」
──それはおのずと作るものにも影響が出てくる。
「例えばその、ライブ前にベーシックを録って、ライブをやった後に作業に戻ると、前に録ったものがちょっとかったるく感じたりして、もうちょっと元気よくテンポを上げて録ればよかったなと思ったり。そうやって気持ちが高揚したままレコーディングをした、曲を作ってた感じだから、自然とビートが立った、リズムが立ったもの、テンポがちょっと速くて、っていうものが揃ったんじゃないかなと、後になって思います」
皆さん、より一層歌詞に引っかかってるっぽいです
──『Steppin’ Out』のときはふわ〜っと始まる感じでしたが、今回は1曲目“ルームダンサー”からぐいぐい来ますね。ここ最近のライブサポートで歌っていらっしゃる小田朋美さんをフィーチャーして1曲目から胸躍るビート、そしてKIRINJIでしか味わえないメロウ感!
「小田さんをフィーチャーして何かやりたいなとずっと思ってて、お願いするんだったら、絶対にシングルか、アルバムのリードトラックでと思ってたんです。それでまあ、この曲がわりとシングルっぽくできて、曲調も小田さんに合ってる気がすると思ってお願いしたんです」
──これまでKIRINJIでフィーチャーされてきた女性シンガーの方々は、レベルが高い方ばかりですよね、って今さら言うのもあれですが、音感、リズム感がよくって。
「やっぱりそれは、ええ、上手じゃないと(笑)。〈味〉だけで選んではいないですよ。小田さんには“LEMONADE”もライブでずっと歌ってもらってて、そしたらアルバム9曲中2曲でフィーチャーすることになってという、これまでのKIRINJIにはあまりないパターンなんですけど」
──今回はビート感っていうのもあれなんですけど、やっぱり相変わらずな言葉のチョイスというか、普段何を考えていてこういう言葉を拾ってくるんだろう、っていうチャーム……あえてチャームと言いますが、そんなところを改めて感じました。
「曲がわかりやすくなったせいかわからないけど、聴いた皆さん、より一層歌詞に引っかかってるっぽいですね(笑)。前は、なんかよくわかんない比喩とかで、カッコよさげなことを言ってるけどよくわからないな、っていう感じで、変わったことを言ってるけど取り付く島もないっていうか、そういう感じがあったっぽいんです。だけど今回は、何を言わんとしてるかってのが、だいたいどの曲でもわかるでしょ。なのでなおさら、何言ってんだお前は、っていう感じが強まるみたいです(笑)」