ワーナーミュージックの洋楽名盤シリーズ〈FOREVER YOUNG〉発のリイシューを紹介する連載! 今回はクイーン・オブ・ポップの16枚!

 洋楽名盤をリイシューするワーナーミュージック発の〈フォーエヴァー・ヤング〉シリーズからタイムレスな定番タイトルを紹介していく連載です。今回は5月27日に登場する第13弾より、〈もっとも成功した女性アーティスト〉としてギネス世界記録に認定されている問答無用の〈クイーン・オブ・ポップ〉ことマドンナの16タイトルを紹介しましょう。

 マイケル・ジャクソンやプリンスと同じ58年生まれ、ミシガン州ベイシティ出身のマドンナ・ルイーズ・ヴェロニカ・チッコーネは幼い頃に母を亡くし、父との関係に葛藤した思春期を経て表現の道へ進むことを決め、20歳の時にミシガン大学を中退してNYへ移住。そこで自身の音楽を模索し、82年にワーナー系列のサイアーから“Everybody”でデビューを果たしています。

 84年のセカンド・アルバム『Like A Virgin』で社会現象化して以降は、作品ごとに大胆な変化を重ねつつメインストリームの頂点でトレンドを牽引していくという独自の地位を確立。カイリー・ミノーグからレディー・ガガまで彼女の影響を受けた後進たちの多さは計り知れません。近年では、“Frozen”(98年)のシックキックによるリミックスがTikTok起点で再脚光を浴びたり、ビヨンセが“Break My Soul”(2022年)のリミックスに“Vogue”を使用したり、映画「デッドプール&ウルヴァリン」(2024年)で“Like A Prayer”(89年)が使われたり、新しい世代から評価される機会も多くなっています。

 そんななか2021年に古巣のワーナーに復帰し、この7月にはいよいよ7年ぶりのアルバム『Confessions II』を届けるマドンナ。そんな待望の新作を迎える準備という意味でも、これまでの歴史を作ってきた名盤たちを改めて聴いておきたいものですね!

7月3日にリリースされるマドンナのニュー・アルバム『Confessions II』(Warner/ワーナー)

マドンナの編集盤を一部紹介。
左から、ダンス・チャート首位の楽曲をまとめた『Finally Enough Love』(Rhino)、『Ray Of Light』収録曲のリミックスをまとめた『Veronica Electronica』(Rhino)

 

MADONNA 『Madonna』 Sire/Warner Bros./ワーナー(1983)

前年のデビュー・シングル“Everybody”、恋仲だった人気DJのジェリービーンによる代表曲“Holiday”を収めた初のアルバム。プロデュースに迎えた元エムトゥーメイのレジー・ルーカスとは本人のエッジーなダンス志向をめぐって衝突した逸話もあるが、ジェリービーンのリミックスした“Lucky Star”が全米4位、ルーカス作の哀愁美曲“Borderline”も10位とヒットが相次ぎ、アルバムも全米8位まで上昇。ニューウェイヴとブラック・コンテンポラリーを融合したポスト・ディスコ時代ならではの仕上がりで、以降の女性シンガーの方向性を示した意義も大きい。

 

MADONNA 『Like A Virgin』 Sire/Warner Bros./ワーナー(1984)

レーベルにセルフ・プロデュースを却下されるも、デヴィッド・ボウイ『Let's Dance』を当てたばかりのナイル・ロジャースをプロデューサーに起用し、初の全米1位を獲得したセカンド・アルバム。センセーショナルな表題曲も全米No.1を記録し、マリリン・モンローに扮したMVで名高い“Material Girl”(全米2位)も含め、同時期のシンディ・ローパーと並んで新しい女性ポップスター像を世に示した。ローズ・ロイスのカヴァーとなるバラード“Love Don't Live Here Anymore”、さらに“Angel”など元恋人のスティーブン・ブレイと共作した4曲も脇を固める。

 

MADONNA 『True Blue』 Sire/Warner Bros./ワーナー(1986)

世界28か国でチャートを制し、彼女を同年齢のキングやプリンスに匹敵するアイコニックな存在へと押し上げた3作目。〈Virgin Tour〉の音楽監督を務めたパトリック・レナードを共同プロデューサーに抜擢し、重厚なスロウの“Live To Tell”や解放的なアップ“Open Your Heart”、引き続きブレイの制作で10代の妊娠を歌った“Papa Don't Preach”という3つの全米No.1ヒットが生まれたほか、ラテン調の“La Isla Bonita”など多彩な切り口の曲が並ぶ。前年に結婚したショーン・ペンの好む言い回しから名付けたという“True Blue”も甘酸っぱい。

 

MADONNA 『Who's That Girl』 Sire/Warner Bros./ワーナー(1987)

ジェイムズ・フォーリー監督によるマドンナ3本目の主演映画「フーズ・ザット・ガール」のサウンドトラックで、クラブ・ヌーヴォーやスクリッティ・ポリッティの楽曲も収録。映画は酷評を浴びるも(マドンナはラジー賞の〈最悪女優〉部門を受賞)サントラは当時の勢いそのままにヒットし、レナードによるラテン・ポップ調のタイトル曲は全米1位、ショーン・ペンとの関係をモチーフにしたブレイ作のダンス・ポップ“Causing A Commotion”も全米2位を獲得した。なお、同年には初の来日ツアーを行い、大阪球場と後楽園球場で4公演を開催している。

 

MADONNA 『Like A Prayer』 Sire/Warner Bros./ワーナー(1989)

リミックス・アルバム『You Can Dance』(87年)を間に挿み、〈クイーン・オブ・ポップ〉の地位を磐石にした4作目。引き続きレナードとブレイを制作の核に据え、信仰や父母への想い、離婚など初めてパーソナルな領域に踏み込んだ表現に挑んでいる。アンドレア・クラウチのクワイアを従えたゴスペル仕立ての表題曲、レディー・ガガの“Born This Way”に直結する“Express Yourself”、ドゥワップ仕立てのシャッフル“Cherish”など人気曲が多く、日本も含む20か国以上でチャートを制覇。プリンスとの唯一のコラボとなった“Love Song”もここに。

 

MADONNA 『I'm Breathless』 Sire/Warner Bros./ワーナー(1990)

ヒロインのブレスレスを演じる映画「ディック・トレイシー」のサントラも兼ねたコンセプト・アルバム。本編の時代感に導かれてスウィングやジャズの要素が大きくなり、『Like A Prayer』とは真逆のショウガール的なキャラクターが改めて演じられている。馴染みのレナードに加え、“Sooner Or Later”などではマイケル・ジャクソン仕事で知られるビル・ボトレルを共同プロデュースに起用。アンコール的に収録された“Vogue”はリミックスで絡んできたDJのシェップ・ペティボーンを抜擢したファッショナブルなハウス・トラックで全米1位を記録した。

 

MADONNA 『Erotica』 Maverick/Sire/Warner Bros./ワーナー(1992)

露骨に性的なイメージで押した“Justify My Love”(90年)のヒットを挿んで届いた問題作。表層的なエロさを装いつつ実態はエイズが社会問題化した時代における愛とセックスを歌うという、ポップ音楽が踏み込まなかった領域に挑んだコンシャスな内容だ。ペティボーンとアンドレ・ベッツとの共同制作でハウスやヒップホップの要素を大胆に取り込み、表題曲や“Deeper And Deeper”などがヒットしたほか、ペギー・リーで知られる“Fever”のカヴァーや美しいバラードの“Rain”などが出色。自身のレーベル、マーヴェリック設立後の第1弾作品でもある。

 

MADONNA 『Bedtime Stories』 Maverick/Sire/Warner Bros./ワーナー(1994)

R&Bとトリップホップという当時のトレンドを各方面から取り込み、前作の急進的な印象を和らげることにも成功したロマンティックな6作目。ダラス・オースティンがTLC作法で臨んだ“Secret”、デイヴ・ホール作のヒップホップ・ソウル“Human Nature”、ビョークと共作したネリー・フーパー製の神秘的な“Bedtime Story”などが成果を上げるなか、ベイビーフェイス作のクラッシーなバラード“Take A Bow”が7週連続で全米1位を独走した。当初は恋仲の2パックと録っていた“I'd Rather Be Your Lover”もミシェル・ンデゲオチェロに差し替えて収録。

 

MADONNA 『Ray Of Light』 Maverick/Warner Bros./ワーナー(1998)

高く評価された主演ミュージカル映画「エビータ」(96年)の成功や第一子の出産を経て届いた、最高傑作に挙げる人も多い7作目。初顔合わせのウィリアム・オービットによるエレクトロニカやアンビエント、ニューエイジ系統のサウンドはインドやモロッコなどの要素を内包し、未来的であると同時にどこか懐かしさも纏っている。ミステリアスな“Frozen”、同時代のビッグ・ビートに通じる爽快感を獲得した表題曲など、新しいモードを開拓してグラミー3部門に輝いた快作。当初は『Veronica Electronica』のタイトルも想定されていたという。

 

MADONNA 『Music』 Maverick/Warner Bros./ワーナー(2000)

パリの新鋭ミルウェイズを抜擢して貪欲に先進的なスタイルを求めたミレニアム期らしい8作目。全米No.1を記録したエレクトロの“Music”、フォーク/カントリー的な要素を絡めた“Don't Tell Me”、アシッドでトランシーな“Impressive Instant”など、印象的なヴォーカルの加工も施しつつミルウェイズらしいクラブ・サウンドが展開される。ガイ・シグスワースによるエレポップ“What It Feels Like For A Girl”、オービットの手掛けた3曲にも注目だ。世界23か国で初登場1位を獲得し、USでは10年以上ぶりに総合チャートを制するアルバムとなった。

 

MADONNA 『American Life』 Maverick/Warner Bros./ワーナー(2003)

映画「007 ダイ・アナザー・デイ」の主題歌として前年にヒットした“Die Another Day”も収めつつ、〈9.11〉以降の社会不安や〈アメリカン・ドリーム〉への疑念を引き続きミルウェイズとの共同プロデュースで表現した野心的な一作。アルバムは本国を含む各国でNo.1を獲得する一方、ブリーピーな表題曲は反戦的だと取れるMVが批判を招いた。制作中にアコギの練習を始めた影響か、全体的にギターの音色と電子音の融合が試みられ、“Love Profusion”もゴスペル風の“Nothing Fails”も他のアルバムにはない独特の実験的な雰囲気に包まれている。

 

MADONNA 『Confessions On A Dance Floor』 Warner Bros./ワーナー(2005)

ダンスフロア回帰を宣言して世界40か国で1位を獲得、新たな代表作となった記念すべき通算10作目。前作で1曲を共作していたスチュアート・プライスをメイン・プロデューサーに迎えた一大ダンス・ポップ大会で、アバからサンプリングの公式許可を得た強力なヒット“Hung Up”を筆頭に、ドナ・サマーやセローン、ペット・ショップ・ボーイズらへの敬意も散りばめつつ、トランス風の“Get Together”、ディスコの“Sorry”や“I Love You New York”など全編ノンストップ状態で疾走する。ミルウェイズ作の幻想的な“Future Lovers”も良いアクセントだ。

 

MADONNA 『Hard Candy』 Warner Bros./ワーナー(2008)

当時メインストリームを席巻していたティンバランド&デンジャとネプチューンズの両巨頭がプロデュースを分け合った11作目。引き続き全米1位は獲得したものの、カラーの定まったヒットメイカーとの合体が珍しいこともあって、いま聴いても〈らしさ〉が希薄な部分はある。とはいえ、ジャスティン・ティンバーレイク&ティンバを交えて全米3位に輝いた“4 Minutes”、カニエ・ウェスト客演の“Beat Goes On”など質が低くなるはずもない。この後にリル・ウェインとの新曲を含むベスト盤『Celebration』を残してワーナーを離れることに。

 

MADONNA 『MDNA』 Interscope/Warner/ワーナー(2012)

〈スーパーボウル〉のハーフタイムショー出演で話題を高めてから届けたインタースコープ移籍作。当時のEDMブームをストレートに反映してベナッシ・ブラザーズやマーティン・ソルヴェグら初顔合わせの面々を大幅に起用、そこに久々のウィリアム・オービットも加わっている。ニッキー・ミナージュとM.I.A.を迎えたチアフルなシンセ・ポップ“Give Me All Your Luvin'”が全米10位を記録したほか、“Girl Gone Wild”や“Turn Up The Radio”のようなアッパーなエレクトロ・ハウス〜ユーロダンスが満載。引き続き全米/全英1位を記録した。

 

MADONNA 『Rebel Heart』 Interscope/Warner/ワーナー(2015)

コライトを常道とする時代の流儀に従った結果、アヴィーチーやブラッドポップ、カニエ&マイク・ディーン、DJダヒ、ジェイソン・エヴィガン……と、かつてなく大人数のプロデューサーやソングライターが名を連ねた13作目。ただ、トレンドをフォローした前2作と比べるとマドンナらしい味のする楽曲がカラフルに集まっていて、その意味での満足度は高い。なかでも、ソフィーと共作したニッキー・ミナージュ客演の“Bitch I'm Madonna”やディーヴァ・ハウス系の“Living For Love”(ピアノはアリシア・キーズ)などを仕切ったディプロの手腕が光る。

 

MADONNA 『Madame X』 Interscope/Warner/ワーナー(2019)

息子のサッカー留学に伴うリスボン生活で吸収したファドやレゲトン、バトゥーカ、レゲエ、サンバまで多文化の音楽を自身の世界と風情豊かに折衷した14作目。久々のミルウェイズや続投のディプロ、マイク・ディーンら参加プロデューサーは多いものの、“Like A Prayer”ばりの神々しさで銃規制を訴えるハウスの“God Control”、マルーマとのラテン曲“Medellín”やスウェイ・リーとのトラップ“Crave”、アニッタとの“Faz Gostoso”のようなコラボも含めて、隅々まで統一感がある。全米1位に返り咲いてインタースコープでの有終の美を飾った。