歴史的なデビュー・アルバムを全曲再現する30周年記念ツアーを大成功で終えた後、4人はただ4人が集まって演奏することを選んだ。原点回帰の意欲とライヴ録音のシンプルな一体感をゴールドに輝かせた20枚目のアルバムは、これまで以上の勢いと逞しさで彼らの普遍的な魅力を証明する!
青から始まり、緑、赤、白、ティール(鴨の羽色)、黒と続いてきて、次は何色?と思ったら、まさかの金色。ウィーザーのニュー・アルバムは通算7枚目のセルフ・タイトル作品となる。そういう場合に応じて長らく〈Blue Album〉〈Green Album〉といった通称で親しまれてきた作品群ながら、今回の『Weezer (Gold Album)』は、カラー・アルバムとしては初めてジャケにメンバーの姿が写っていない。ミーム化を誘うような集合写真の代わりに、鮮やかなゴールドのジャケにはメンバーそれぞれを象った紋章のようなマークが刻まれている。往年のレッド・ツェッペリンのシンボルを連想させるこうしたアートワークも、個性の集まりとしてのバンドの現在の一体感を示したもののように思えてくるかもしれない。
そのように感じられるのは、今回の『Weezer (Gold Album)』が、長らくソングライティング面をほぼ独占していたリヴァース・クオモ(ヴォーカル/ギター)だけでなく、ブライアン・ベル(ギター/ヴォーカル)とパトリック・ウィルソン(ドラムス/ギター/ヴォーカル)がソングライターにも名を連ね、スコット・シュライナー(ベース/ヴォーカル)も含めた4人のバランスがよりバンドらしさを強調する方向へと回帰しているからだろう。何より、アルバムのキックオフとなった先行配信曲“Shine Again”はパトリックがおよそ15年ぶりに単独で作曲したウィーザーの楽曲であった。新曲にまつわるリヴァースの〈自分たちへの自信を取り戻し、4人組のクリエイティヴなユニットとして自分たちを信じる〉という発言も、現在のバンドのモードを率直に物語っている。仮にそうした制作面の舞台裏を気にしないとしても、アルバムを聴けば多くのファンが望むであろうウィーザー節が追求されている部分も多いわけで、本作をもって原点回帰のアルバムと歓迎する声が多いのも頷ける。
当然ながら、そうした回帰のイメージに辿り着くまでにさまざまな逡巡があったのであろうことは、リヴァース作の先行配信曲“C.E.O.”のメタ的な内容からも明らかだ。あえて94年の人気曲“Undone - The Sweater Song”を思わせるサウンドに乗せて〈また90年代風のジャムを量産している/新しいことをしたいのに〉と歌われる同曲は、バンドの最高責任者(CEO)として〈クリエイティヴな意欲〉や〈ビジネス的な判断〉〈ファンの期待〉などの間で揺れるリヴァース自身の葛藤を、自虐的なパロディ含みで吐露した皮肉な一曲になっている。ただ、こうしたユーモラスなエクスキューズ(?)が必要なほど、新しい作品を出すたびに比較対象とされてきた『Weezer (Blue Album)』は世界中のファンにとってあまりにも大きな存在だったのだ。

悩める日々
ウィーザーの歴史は、コネチカット州マンスフィールド育ちのリヴァース・クオモが高校で組んだメタル・バンドと共にLAへ移ってきた89年から始まっている。そのバンドを解散したリヴァースはパトリック・ウィルソンと出会い、友人のマット・シャープ(ベース)の家に引っ越したあたりから、旬を迎えつつあったオルタナティヴ・ロックに傾倒。いくつかのバンド結成と解散を経てジェイソン・クロッパー(ギター)が加わり、92年に結成されたのがウィーザーだ。その年の秋にバンドは〈The Kitchen Tape〉と呼ばれるデモを録音。そのテープがゲフィンのA&R担当の耳に届いたことで、彼らは順調にメジャー契約を手にしている。
当初セルフ・プロデュースを望んだ彼らではあったが、レーベルからプロデューサーを付けるよう指示され、最終的にはカーズで知られたリック・オケイセックをプロデューサーに指名。93年の8〜9月にかけてNYのエレクトリック・レディ・スタジオでレコーディングされたのが、94年のファースト・アルバム『Weezer (Blue Album)』である。制作期間中には私生活の事情から不安定な状態に陥ったジェイソンが脱退するというアクシデントもありながら、録音が済んでいた彼のギター・パートはすべてリヴァースが録り直し、並行して後任のギタリストにブライアン・ベルを招いて(音源におけるブライアンの参加はヴォーカルのみ)、かの有名なジャケットには4人の姿が並ぶこととなった。“Buddy Holly”や“Say It Ain’t So”“Undone - The Sweater Song”といったシングルが人気を博したこのアルバムは全米16位まで上昇し、翌95年の時点でトリプル・プラチナを獲得。現在では〈史上最高のデビュー・アルバム〉や〈90年代を代表するロック・アルバム〉のひとつとして名盤認定されており、時代や世代を超えて長く愛されている。
ただ、いきなりの大成功はメンバーそれぞれを混乱させるものでもあったようで、故郷に戻ったリヴァースは成功への複雑な感情やツアーへの葛藤を表現したロック・オペラ作品『Songs From The Black Hole』を次作として構想するに至る。95年を通じての断続的なセッションでバンドは彼のヴィジョンを形にしていくが、同年末にリヴァースはハーバード大学に進学し、そこで孤独とフラストレーションを経験したことによってソングライティングの傾向も大きく変化したため、アルバムのアイデアは破棄されることになった。そんななか、マット・シャープは新たにレンタルズを結成してアルバム『Return Of The Rentals』でデビュー。一方のウィーザーはセルフ・プロデュース体制で作られた2作目『Pinkerton』を96年にリリースしている。現在では多くのエモ・バンドに影響を与えたことで名盤としての評価を新たにし、現在では彼らの最高傑作とされることも多い人気作ながら、当時は初作に比べて商業的に失速したこともあって失敗作と見なされ、アルバムのツアーを終えるとバンドは活動休止に。パトリックはサイド・プロジェクトのスペシャル・グッドネスに専念し、ブライアンも自身のスペース・ツインズで活動。さらにはレンタルズを軌道に乗せたマットが脱退している。リヴァースも98年のサントラ『Meet The Deedles』にホーミー名義で“American Girls”を提供するなど、新しいプロジェクトに取り組んでいた。
そうしたなかで残った3人には、ホーミーで演奏していたマイキー・ウェルシュ(ベース)が新たに合流。それでもメンバー間の緊張状態やリヴァースのメンタルヘルス問題などでブランクは長引いたものの、2000年に再結集して〈ワープド・ツアー〉参加や〈フジロック〉出演も果たした後、2001年に再度リック・オケイセックをプロデューサーに迎えたセルフ・タイトル作『Weezer (Green Album)』を発表した。同作が全米4位の成功を収めたことで、彼らは現在にまで繋がる人気バンドとしての支持を広く獲得していくことになるのだった。

フレッシュな原点回帰
以降のウィーザーは国内外にコアなファンベースを構築して大物バンドとしてのポジションを磐石のものとしている。2001年にマイキーが脱退してからは後任のベーシストにスコット・シュライナーを迎え、当初サポート扱いだった彼もスムースに正式加入。それ以来20年以上もバンドの体制は磐石であり、その結果としてツアーやアルバム制作もコンスタントなペースで行われるようになっている。ただ、そうやってリリースが積み重なるたびに〈C.E.O.〉はやはり悩んでいたということなのだろう。外部のソングライターを積極的に起用したり、意外なプロデューサーとマッチングしてみたり、コンセプトを設けたり、HR/HMをやってみたり、クラシック音楽にアプローチしたり……それでも作品は常に過去の作品と比較される。〈同じことばかりやっているわけにはいかない〉というのはリヴァースの本音だろうし、〈みんなに望まれることに応えたい〉という気持ちも嘘ではないはずだ。それでも……というジレンマが“C.E.O.”から滲んでいたのは言うまでもない。
が、にもかかわらずニュー・アルバムが原点回帰のモードになっているのは、やはりそれがちょうど自分たちのやりたいことと一致していたからでもあるのだろう。それに加えて、〈Blue Album〉のころと違うのは、先述したようなソングライティング体制の変化やレコーディング環境の変化もある。4人が集まって楽曲の基礎を作り上げ、その場で顔を合わせて微調整しながらライヴ録音の形式で楽曲を形にしていくという作業は、長らくバンドに欠けていた部分でもあったようだ。それゆえにこちらが考える原点回帰とは違う意味において現在の彼らがフレッシュな気持ちを取り戻しているのは間違いない。
また、クラス・アールンドとケネス・ブルーム(ケニー・ビーツ)という初顔合わせのプロデューサーの存在も大きかったようだ。クラスが緻密で計算された厳密なレコーディング手法をとる一方で、〈史上もっとも凶暴なウィーザーのアルバムを作りたい〉と意気込んでいたというケネスは、〈部屋で鳴らすロック・バンド〉のフィーリングを引き出すプロダクションを追求し、グリッドも、クリック音も、ピッチ補正も一切なしという徹底ぶりで生々しいウィーザーの姿を録音することに成功している。ウェンズデイのカーリー・ハーツマンを迎えた“We Might As Well Be Strangers”という収穫もあって今回のウィーザーは期待通り、かつ期待以上のフレッシュなサムシングも備えている。これはもう楽しむしかない!
左から、マット・シャープが発掘したウィーザーの初期デモ音源集『1192』(Ernest Jenning)、“We Might As Well Be Strangers”に客演したウェンズデーの2025年作『Bleeds』(Dead Oceans)、ケニー・ビーツの2022年作『LOUIE』(XL)
