今年2月の二期会『ドン・カルロ』公演でタイトルロールに抜擢され、一途で情熱的なキャラクター像とヒロイックな歌唱で聴衆を魅了した新星テノール。

 「元々バリトンで、少しずつ音域を上げてきた。カルロ王子はヴェルディのテノールの中でも重い方なので慎重に取り組んだし、とてもいい経験になりました」

山本耕平 Mi manchi キング(2014)

 待望のデビュー・アルバムでは様々なジャンルに挑んで期待と可能性を披露。冒頭にアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』の劇中歌として話題を呼んだ《魂の中の永遠の海》を持ってくるところなども、大胆で素敵だ。

 「歳上の姉がいたおかげで小さい頃から原作のファンで伝説の場面に参加できて夢のようでした。作曲の岩崎琢さんが僕の声にぴったりな、オペラのようなスケール感を持った素晴らしい曲を書いてくれました」

 アルバム・タイトル曲《ミ・マンキ》はイタリアン・ポップスの名曲。“私にあなたが欠けている=恋しい”という意味の、大切な人に向けて使われるフレーズ。

 「最初のイタリア留学(2009-2011)の時、友達に教えてもらって当時何度も聴いた。曲も歌詞も大好きなので今回、悶絶しながら訳詞にも挑戦してみました」

 歌曲ではトスティ(イタリア語)に続いてR.シュトラウス(ドイツ語)の人気曲でも才能を発揮。

 「ドイツ語はバリトン時代の先生に鍛えられました。歌曲でも楽譜と言葉を大切に、舞台と同じようにライヴ感を意識してレコーディングに臨みました」

 日本語ものでは《初恋》と共に、父上に先立たれた母上へ贈る応援歌とも云えるオリジナル曲も聴き処。

 「作詞は全くの素人で、両親への想いをそのまま綴っただけの歌詞を、うちの家族とも親しい作曲家の平川加恵さんが見事な歌曲に仕上げてくれて嬉しかった」

 王道オペラ・アリアは、先ずドニゼッティ『愛の妙薬』の《人知れぬ涙》やチレア『アルルの女』の《フェデリコの嘆き》といった陶酔的で甘美なアリアを。

 「ちょっとヒロイック過ぎって言われそうですが…」

 そして、ドラマティックな《星は光りぬ》(プッチーニ『トスカ』)では自らクラリネット・ソロも演奏。

 「実は藝大の前に、学芸大でクラリネット専修だったこともあって、ひとりコラボも面白いかなって(笑)。ただカヴァラドッシはいつか舞台でやってみたい役です」

 最後はテノールの愛唱歌3本にクラシカル・クロスオーヴァーの雄《君と旅立とう》で華麗に締めくくる。

 「今はいろんなレパートリーの方向性を試してみたい。そういう意味で来年2月の二期会《リゴレット》のマントヴァ公は音域も高く、恐らくこれまでで最難関の役なので楽しみです。どうかご期待下さい!」

 

LIVE INFORMATION

東急ジルベスター・コンサート

○12/31(日)【第1部】22:00~23:00 【第2部】23:30~24:45 会場:Bunkamuraオーチャードホール 山田和樹(指揮)東京混声合唱団(合唱)東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)他

ニュー・イヤー・オペラ・コンサート

○1/3(土)19:00開演 会場:NHKホール 広上淳一(指揮)新国立劇場合唱団二期会合唱団藤原歌劇団合唱部(合唱)東京フィルハーモニー交響楽団(管 弦 楽)他 

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