近年、中国市場の成長著しいとはいえ、やはりハリウッド発エンタメの上得意客である日本。今日も国中で胸ときめかせながら恋愛映画やTVのラヴコメ・ドラマをせっせと消費しているはず。そんな我が国ではあるが、たとえば女子に「〈愛の国〉と聞いて思い浮かぶのは?」と質問して、〈アメリカ〉という答えが返ってくるのは恐らく稀。〈愛の国〉とくれば、その後に続くのは〈フランス〉とか〈イタリア〉なのは日本の常識(※Google先生の予測変換でご確認を)。果たしてどちらがより〈愛の国〉に相応しいかどうかは意見の分かれるところだが(…実際お付き合いしてみたら、フランス男は理屈っぽくてジコチューだし、イタリア男は例外なく強度のマザコンなので大和撫子は苦労すると思われ…)とにかくこの2つの国はこと恋愛に関しては2強なのである。

AMAURY VASSILI 美しき愛の詩 ~ Una Parte Di Me Japan Edition HATS(2014)

さて近頃、音楽シーンで話題を集めているこの、アモリ・ヴァッシーリというフランス北西部ノルマンディー地方出身の若きテノール。本国でのブレイクに続き、2011年の〈ユーロビジョン〉出演で欧州を席巻。その後、人気のクロスオーヴァーヴァイオリニスト葉加瀬太郎とのコラボを実現させ、昨年の〈ライブ・イマージュ13〉東京公演で会場を沸かせたのも記憶に新しいところ。そんな彼が、今年は〈ライブ・イマージュ14〉全国9会場フル参加も決定し、ニュー・アルバムを携えて帰ってくる。


日本で2枚目となる『美しき愛の詩』は、全編クラシックの名旋律にオリジナル歌詞をのせて歌い上げた注目作。アルバム・タイトル曲の《モーツァルト交響曲第40番第1楽章》を始め、《チャイコフスキーピアノ協奏曲第1番》や《バッハ無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード》など、クラシカル・クロスオーヴァーに吹く新しい風を予感させるような、意外すぎる選曲と仰天アレンジは必聴。何よりしなやかで力強い美声に魅了される。しかも今回はボーナス・トラック以外の全てがイタリア語歌唱という完璧なタッグが実現。考えてみたら、ヴェルディの《椿姫》もプッチーニの《ラ・ボエーム》も舞台はパリで登場人物はみなフランス人。イタリア・オペラの世界ではフランス人の魂に輝かしいイタリア声というスペシャル・コラボの深い伝統があったのだった。つまり本作は日本女子の憧れる〈愛の国〉の濃いエッセンスがたっぷり詰まった最強のラヴ・ソング集なのでは?