永遠の名画によるラヴ・ソング集、映画への愛を込めて

 1994年のデビュー以来、オペラティックなヴォーカル・シーンにスター・テノールとして君臨するボチェッリ。2013年の『Passione(情熱のラヴ・ソング)』以来となる待望の新作は、映画を愛する彼の、心に刻まれた数々の名シーンを彩った旋律を詰め込んだアルバム『CINEMA(シネマ~永遠の愛の物語)』。

 プロデューサーは前作に続きカナダ出身の巨匠デイヴィッド・フォスター。さらにはトニー・レニスフンベルト・ガティカの2人が加わって、2006年の名曲カヴァー集『Amore(貴方に贈る愛の歌)』と同じ「ドリーム・チーム」を再結成。それぞれに優れた芸術的背景を持ち、深い友情によって結ばれたこの4人が同じ屋根の下で一緒に過ごし、家族のような時間を共有しながら、じっくりと練り上げられた1枚だ。

ANDREA BOCELLI シネマ~永遠の愛の物語 ユニバーサル(2015)

 既に先行トラックとして『グラディエーター』の《ついに自由に》がiTunesで配信され、アメリカ南西部モハーヴェ砂漠で撮影された映画のようなスケール(しかもジョン・トラボルタがカメオ出演!)のPVもYouTubeで公開され話題を呼んでいるが、どの楽曲も原曲の持ち味をいかした絶妙なアレンジで、新しい生命を吹き込まれている。特に歌詞についてはボチェッリらしいこだわりが発揮され、オリジナルの英語のままでカヴァーされる楽曲もあれば、『ドクトル・ジバゴ』のフランス語や『ゴッドファーザー』のシチリア方言のように、愛のテーマに思わぬ美しさと官能を与えているものもあり、スペイン語ではラテンのリズムで斬新に蘇った『ある愛の詩』のテーマや、本来『エビータ』がバルコニーから民衆に語りかけた言語に戻った《ドント・クライ・フォー・ミー・アルゼンチーナ》が必聴だ。もちろん『イル・ポスティーノ』の《ミ・マンケライ》などイタリア語(母国語)の響きの美しさは言うまでもない。

 またマリオ・ランツァの歌唱で知られる《ビー・マイ・ラヴ》のような往年の名歌手へのオマージュもあり、特に《オール・マン・リバー》は1947年のジェローム・カーンの伝記映画でフランク・シナトラが披露したという伝説の熱唱を彷彿とさせる。

 加えてスペシャル・ゲストとして、《デボラのテーマ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』》のデュエット相手としてフィーチャーされたアリアナ・グランデにも大注目。若い世代に絶大な人気を誇る彼女の見事な歌声が、本作に素敵な花を添えている。

 2016年4月には6年ぶりとなる来日公演も決定。オフィシャル・インタヴューでも「コンサートでこれらの曲を歌うのが楽しみで待ちきれない」と語っているので、そちらも大いに期待したい。

 

LIVE INFORMATION
ボチェッリ、6年ぶりの来日公演が決定!
○2016年4月28日(木)
会場:東京国際フォーラム・ホールA
www.universal-music.co.jp/andrea-bocelli