〈ほぼ完成〉との報にも疑心が晴れぬまま、突然の発表で衝撃を与えた約15年ぶりの3作目。一聴して前作『Voodoo』を踏襲した感の強い内容は壮絶なまでに黒くスモーキーでありながらも明快で、スライファンカデリックジミヘン、電化期のマイルス・デイヴィスプリンスといった革新的な先達の姿が随所で思い浮かぶ。近年のライヴやリーク音源としてお馴染みの曲も含め、Q・ティップケンドラ・フォスターとペンを交え、名義を共有したヴァンガードとの共同作業で丁寧に煮詰められた楽曲群は黒豆の如き艶を放ち、硬派なメッセージと破壊的なエッジを携えながらスピリチュアルで甘美な一面も見せる。ため息が出るほどの完成度だが、音楽的な革命というよりは、〈出た〉こと自体が何かを変えていきそうな怪作だ。