藤田貴大
©篠山紀信

演劇 × エレクトロニカ 話題のコラボ作品

 綾戸智恵、渡辺香津美などの作品を多く手掛けて来たイーストワークスだが、その指向性は非常に幅広く、DCPRG、大友良英、大島輝之、恩田晃といったジャズに軸足を置きながらも、そのオルタネイティブな様々な音楽性を抱合した非常に魅力的なレーベルカタログを備えている。今回またその幅を増す素敵な作品が加わった。

マームとジプシーと大谷能生 『マームとジプシーと大谷能生』 ewe(2014)

 大谷能生プロデュースによる、今最も注目を浴びる若き演出家/脚本家、藤田貴大率いる劇団マームとジプシーのコラボアルバムだ。マームとジプシーはこれまでに飴屋法水、今日マチ子、川上未映子等、様々なジャンルのアーティストとコラボを重ねて来ており、第56回岸田國士戯曲賞を受賞する等、非常に高い評価を得てきた新進劇団。

大谷能生
青柳いづみ
©篠山紀信

 今回のアルバムでは詩を藤田貴大、音楽を大谷能生、ヴォーカルを青柳いづみ、ジャケイラストを今日マチ子が手掛けている。平仮名が多く、シリアスとコミカルのどちらでもあって、どちらでも無い様な独特な詩、大谷による作り込み過ぎないトラック。また、(1)(2)などのトイトロニカな音の質感は360°やHEADZよりリリースする女性エレクトロニカアーティスト、miroqueによるものだ。同じくHEADZよりリリースする木下美紗都のカヴァーも収録している。そして青柳によるキュートかつ無機的でもある歌唱が相まって独創的なエレクトロニカ~アヴァンポップに仕上がっている。藤田も大谷も青柳も、その本来活動するフィールドでのアプローチとは異なるやり方が恐らくは求められたであろう今回のコラボ作。そのある種ズレが融合した所に非常に魅力的な落とし所が偶然出来た様な面白さがある。“さやけさと、きたならしさと、糸井重さと”というトラックがあるが、このタイトルが丁度このアルバムの気分を表してる様にも感じた。

マームとジプシーの2011年の公演「Kと真夜中のほとりで」