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3年ぶりのソロ作は、ポスト・ロック、エレクトロニカを通過した最新型AOR!
Jimanicaと言えば、Itoken、山口崇司とd.v.dとして活動する腕利きドラマーというのが一般的な認識だろう。d.v.dはやくしまるえつことの連名でも作品をリリースしており、Jimanicaは山下智久 《愛、テキサス》、ももいろクローバーZ《Z女戦争》、花澤香菜《アブラカタブラ片思い》といったやくしまるが作詞や作曲を手掛けた楽曲でもドラムを叩いていた。その堅実でツボを押さえた仕事ぶりは職人的という形容がしっくりくるものだ。が、3年ぶり4作目となるソロ作『GRAND AGE』は、山田杏奈、小貫早智子、やくしまるえつこ、蓮沼執太、木下美紗都といったヴォーカリストがフィーチャーされ、メロディアスなうたものに接近。これまでのソロ作で最もポップでキャッチーな仕上がりとなっている。
特に注目すべきは、AORやシティ・ポップ、R&Bなどのエッセンスが自然な形で注入されていること。カラフルなシンセサイザーや幾何学的なリズムなどはd.v.dにも通じるが、本作はよりソウルフルで、時にブラック・フィーリングを滲ませるアレンジが特徴となっている。沖縄出身のヒップホップ・グループSUBMARINEの日渡正朗が流麗なラップを聴かせるナンバーなど新機軸も多数。EDMを彼なりに咀嚼したようなエレクトロ・ナンバーがあったり、湧き出るアイディアを片っ端から投入したようなゴージャスな構成だ。これは、彼のキャリアの中でも転換点となる意欲作と言っていいだろう。
タイトルの『GRAND AGE』は造語だが、“全ての世代に潜むオトナ”という意味が込められているそうだ。なるほど、先鋭的でありながら慎ましやかなうたごころを秘めた本作は、ポスト・ロックやエレクトロニカを通過した新しい形のAORと捉えれば腑に落ちる。最新鋭のエレクトロニック・ミュージックを愛する若者から耳の肥えたオトナまでを唸らせる、Jimanica流最新型AORの誕生。そう呼びたくなるマスターピースである。