ワン・ダイレクションからゼインの脱退が騒がれているが、グループは世界的人気を極めれば極める分、困難も多いことだろう。ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』も然り。この作品がメガヒットしているのは、それまでヴェールに包まれていたザ・フォー・シーズンズの真実を包み隠さず描いているところだと思う。栄光の日々だけじゃない。ダメなところも露わにすることで、観る者は彼らの音楽とともに等身大の彼らに寄り添い、人生の機微を味わうことができる。
ザ・フォー・シーズンズは1960年代にビーチ・ボーイズと同等の人気を博した4人組のヴォーカル・グループだ。メインヴォーカルのフランキー・ヴァリによる鋼のようなファルセット、一度聞いたら忘れられない躍動的なコーラスとメロディ。《君の瞳に恋してる》など、今もリバイバルでよく歌われる名曲が多数。その名を知らなくても、フレーズを聞けば「ああ!知っている」という人が多いはず。山下達郎や大瀧詠一など、日本のポップスにも大きな影響を与えた存在だ。
『ジャージー・ボーイズ』では彼らの出会い、グループを結成してからスターになる過程、借金トラブル、仲違いと脱退、ひとり残り歌い続けるフランキー、私生活の悲劇、そして再会が赤裸々に綴られる。2005年にブロードウェイで上演されるに否や、瞬く間に大ヒット。トニー賞4部門、グラミー賞など錚々たる演劇賞を獲得した。2014年にはクリント・イーストウッド監督により映画化され話題に。10年経った今もブロードウェイ、ロンドン、ラスベガス、北米ツアー、イギリスツアーで上演中と人気は衰え知らずだ。
登場人物はほとんどが実在の人物。プロダクション・スーパーバイザーのリチャード・へスターによると、「皆、観に来たね。メンバーのひとりトミー・デヴィートは今も、6週間に一度は観に来る。俳優ジョー・ペシに至っては「僕を面白く描きすぎてる」と文句を言うから「仮名にしようか?」と聞くと、「いや、そのままでいい」と(笑)。マフィアの親分ジップ・デカルロは70年代に亡くなったけど、一族や友人がよく観劇するよ」とのこと。グループの生みの親でありトラブルの原因ともなったトミーがこの作品を繰り返し観ているとは、なんとも切なく愛しい。
「もちろんこの作品を企画したフランキー・ヴァリは稽古も公演も山ほど観て、自分の辛い時期を振り返らざるをえなかった。それって、心中は簡単なことじゃないと思うんだよね」とヘスターはフランキーを思いやる。しかしこのミュージカルの成功で、フランキー・ヴァリ、そしてザ・フォー・シーズンズが再び輝きだしたのも事実。やはり真の名曲は永遠なのだ。
LIVE INFORMATION
ブロードウェイミュージカル「ジャージー・ボーイズ」
フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズの物語
生演奏・英語上演・日本語字幕あり
○6/25(木)19:00開演
○6/26(金)13:30・19:00開演
○6/27(土)12:30・18:00開演
○6/28(日)12:30・18:00開演
○6/30(火)19:00開演 (6/29(月)は休演)
○7/1(水)13:30・19:00開演
○7/2(木)13:30開演
○7/3(金)13:30・19:00開演
○7/4(土)12:30・18:00開演
○7/5(日)12:30開演
会場:東急シアターオーブ (渋谷ヒカリエ11F)
作曲:ボブ・ゴーディオ/作詞:ボブ・クルー/劇作・脚本:マーシャル・ブリックマン&リック・エリス/演出:デス・マカナフ/振付:セルジオ・トルヒーヨ/出演:アメリカカンパニー