架空の街のサウンドトラックをカラフルに奏でる5人組バンド、Awesome City Club。SoundCloudやYouTubeで公開してきた数々の楽曲が噂を呼び、今年4月にファースト・アルバム『Awesome City Tracks』でデビューを果たした彼らが、早くも2作目『Awesome City Tracks 2』をリリースした。
「結成以来、作ってきた曲を収録した前作は、バンドのヒストリーをみずから辿るような、そんな作品だったんですけど、新しく作った曲と作りかけだった曲をレコーディングした今回は、いまのAwesome City Clubに限りなく近い作品になったと思います」(atagi)。
前作から半年という短い期間で目覚ましい成長を遂げた彼らのいまのモードは果たして?
「一言で言えば、素直になったんだと思います。結成から前作までは、コンセプトだったり、どう見られるかということを意識して肩に力が入っていたんですけど、音楽に集中できる環境に身を置くようになって、〈良い音楽を作る〉という目標にフォーカスが絞れるようになったのかなって」(PORIN)。
「前作までは、音楽を通じて現実や生活が垣間見えることを良しとせず、そういう側面はあえて出さないようにしていたんです。でも、自分たちの音楽を広く届けるためには、みずから課した枠組みから積極的に外れて、外側に手を伸ばす必要があるな、と」(atagi)。
80年代のシティー・ポップが好景気の幻と共に熟成させた、無菌的で洗練されたイメージ。ヴェイパーウェイヴはそれを皮肉としてモチーフにしたのに対して、Awesome City Clubは本作において、幻から現実へと新たな一歩を踏み出している。CD/アナログでのリリースのためにクラウドファンディングを行った“アウトサイダー”はその象徴的な一曲だ。資金を募る目的以上に、〈バンドとリスナーが一体となって、自分たちの遊び場を作り上げたい〉という主体性が、ストリングスを纏ったフィリー風のディスコを成り立たせている。
「この曲に関しては、〈いま、このタイミングで世に問うて大丈夫なのか?〉という不安もあったんです。できること、やりたいことは少しずつ変化しているんですけど、新機軸というのは〈求めていた!〉と思ってもらえなかったら失敗ですからね。そう思いながらも、僕のなかにはちゃんとしたポップソングがまだ出来ていないというモヤモヤした気持ちもあったので、一念発起して、この曲のレコーディングに臨んだんです」(atagi)。
この曲を筆頭に、Awesome City Clubは内に秘めたポップ感覚を一曲一曲に濃縮しながら、“WAHAHA”と“愛ゆえに深度深い”の2曲では、ヒップホップに傾倒しているマツザカタクミがラップを披露。前作から引き続きプロデュースを担当したmabanuaとの関係を深めながら、沸き上がるアイデアを自由に形にするようになった今作のラスト・チューン“Lullaby For TOKYO CITY”では、乾き切った日々を送る都市生活者の心情に触れた歌詞世界に、atagiとPORINのヴォーカルが肉薄する。
「この曲は、東京への憧れを綴ったものではなく、東京で生活してきた人が知っているリアルな東京ですよね。音楽も同じで、厳しい部分もあるし、夢や希望も感じられるじゃないですか。まあでも、私の場合、24歳にして、こんな目まぐるしいスピード感でいろんな経験ができるAwesome City Clubの活動は新鮮で楽しいですけどね。そして、これから先も、好奇心旺盛なメンバーがその時々で変化しながら、聴く人を飽きさせない、そんな音楽を作っていきたいです」(PORIN)。
Awesome City Club
atagi(ヴォーカル/ギター)、モリシー(ギター/シンセサイザー)、マツザカタクミ(ベース/シンセサイザー/ラップ)、ユキエ(ドラムス)により2013年春に結成され、2014年4月にPORIN(ヴォーカル/シンセサイザー)が正式加入して現編成となった男女5人組。SoundCloudやYouTubeで公開した楽曲が海外メディアにも取り上げられるなどウェブを中心に知名度を上げ、同年にはサン・シスコやタヒチ80の来日公演におけるサポート・アクトも務める。2015年4月に初アルバム『Awesome City Tracks』を発表。8月にはクラウドファンディングによるシングル“アウトサイダー”を送り出し、このたびニュー・アルバム『Awesome City Tracks 2』(CONNECTONE)をリリース。