こんにちは。starRoです! またもや2か月空いてしまいました……すみません!

完全に言い訳ですが、今年3度目のツアーをやっておりました……。今回はMichal Menertというコロラド出身のわりと大御所のビートメイカー/バンドに帯同するツアーで、移動はMichalのバンド・メンバー+クルーと一緒に機材車で。15人乗りのヴァンに男がギュウギュウ詰めという、女子なら絶対に乗りたくない感じでの移動が来る日も来る日も続きました。

過去にtoeとのツアーではそういう移動をしましたが、もともと気心が知れていることもあって遠足みたいな感じだったし、Chet FakerLittle Dragonとのツアーでは別々に移動して現地で合流する形式だったので、それまで会ったことがないアーティストと一緒に移動するツアーはこれが初めてでした。今回は運良くすごくフレンドリーな人たちばっかりだったのでよかったですが、一緒に回るアーティストがワガママで1か月~数か月間地獄を味わったという話をたまに聞くので、そんなのに当たったらトラウマになりそうですよねー……。

今回参加したMichal Menert & Pretty Fantastic Band。通常は7ピースでしたが、ツアー中最大のライヴとなったデンヴァーでは12人編成のビッグバンドで圧巻のパフォーマンスでした。僕も自分自身のセットの他にパーカッション+キーボードで全ライヴに参加させてもらい、貴重な体験でした

 

今回の機材車。サンフランシスコで夜、窓ガラスが割られて窃盗被害に……

 

欧米のツアーはとにかく移動距離が長く、日数も多いので、体力的にも精神的にも結構きついです。こちらではツアーに辟易して、音楽活動自体を辞めちゃうアーティストがいるんですが、ツアーに行かなくたって音楽の売上とかで活動を続ければいいじゃないかと思いませんか? しかしそれがそうもいかないんです。ライヴはミュージシャンのメインかつほぼ唯一の収入源という状況が、アメリカでは年々鮮明になってきています。

もちろんそれは、いま音楽が売れない状況にあるからです。日本でも音楽が売れないっていう悲鳴がよく聞こえますが、僕の感覚としてはCDも昔ほどじゃないにしてもまだ一応売れているし(CD屋が存在してること自体がその証拠)、僕はリスナーがちゃんと音楽にお金を使うカルチャーは素晴らしいと思うので、日本ではこのままできるだけ続いてほしいです。

一方、アメリカではCD屋がまずもうありません。ウォルマートやターゲットといった巨大スーパーに、ビルボード・チャートのトップ10に入るようなCD作品が売られているだけで、基本音楽はネット経由でアクセスするものという感じになってます。あえて〈アクセス〉と書いたのは、音楽をネットで購入するだけじゃなく、Spotifyのようなストリーミング・サーヴィスで聴く人、SoundCloudといったプラットフォームで無料ダウンロードできるものだけを入手する人など、形態はさまざまだからです。

しかし、全体的にはストリーミングが主流になっていて、デジタルで音楽を買う人はやはりかつてのCDのような人数とは程遠い状況です。ご存知の通りストリーミング・サーヴィスは一応アーティストにプレイ回数に応じてお金が入ってきますが、その金額は微々たるもの……。超売れっ子でない限り、音楽販売による収入は頼り甲斐がまったくありません。

Michal Menert & Pretty Fantastic Bandの2015年作『1』。SoundCloudとBandcampでフリーDL可

 

こういう状況に対して、音楽コンテンツの無料化に批判的になったり、力技で抑え込もうとする動きもいまだに見かけますが、もともとそれほどCDなどを買う習慣がない現在の10代後半~20代前半あたりのこれからの音楽産業を担う世代では、音楽の無料提供はあたりまえで、むしろそれを踏まえてもっと大きなヴィジョンでアーティスト活動を考えている人が大部分だと思います(特にエレクトロニック・ミュージックの場合は顕著)。

具体的には、音楽リリースは、スーパーの広告の〈本日の目玉商品〉のようにファンを集めるための入口という位置付けで、ネットで無料で展開し、ファンが集まったところで活動の範囲を広げていくというやり方です。もちろん、膨大な数のアーティストが同じように目玉商品を出すわけなので、そのなかから頭一つ抜きん出るには、クォリティーはもちろんのこと、リリースの仕方に関する工夫が相当必要です。ただ、いまやライヴのブッキングや音楽メディアの取扱いなどは、ソーシャルネットワークでのフォロワー数や話題性を基準に決まる時代。なので、音楽をネットでできるだけ広めて、ネット上での認知度を増やさないことには何も始まらないわけです……。

アメリカのフェスなども、YouTubeやSoundCloudでキャリアを築いたアーティストがラインナップを占めていますが、そうやってネットでのプレゼンスをフックに、ライヴや物販など〈リアルな世界〉で売上を作り出していくのが定番になってきています。かつて音楽が普通に売れていた時代だったら、ライヴをやって宣伝して、それをアルバムなどの売上に繋げていくという順番だったと思うので、いまはその真逆ってことですね。

まあいずれにしても、順番はどうであれ曲作りもライヴも両方きちんとやり続けないと生きていけないというのは、今も昔も変わらないんでしょうね。

ということで自分自身も2週間はライヴをお休みし、LAでじっくり新EPの仕上げやオフィシャル・リミックスの仕事に専念した後、12月頭からアジア・ツアーに入ります!

日本では、12月4日(金)に福岡・Black Outに出演予定です! 皆さんにお会いできることを楽しみにしてます!

 

PROFILE:starRo


LAを拠点に活動するプロデューサー。いま注目を集めるかの地のレーベル/コレクティヴ・Soulectionに所属し、オリジナル曲の制作に加えてフランク・オーシャンアウトキャストリアーナアッシャーなどのリミックスを自身のSoundCloudで多数公開するほか、滴草由実ら他アーティストへの楽曲提供なども行う。2015年2月に初EP『Emotion』をリリース。コンスタントに現地でライヴ/ツアーも行っている。文中にもある通り間もなくアジア・ツアーに乗り出し、12月には日本でもライヴが!! 最新情報はこちらでチェックを! 

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