
Mikikiブログ〈ヤセイの洋楽ハンティング〉でお馴染みのYasei Collectiveが、自身のレーベル=Thursday Clubからの初作品となるニュー・シングル“radiotooth”を11月25日にリリース! Mikikiではこれを記念し、ヤセイブログのスピンオフ企画として各メンバーをフィーチャーした短期集中対談連載〈ヤセイの同業ハンティング〉をスタートしました。メンバーそれぞれがいまバンドマンとして&同じ楽器を演奏するミュージシャン(同業者)として尊敬する人たちを招き、あんなことやこんなことをディープに掘り下げていく全4回!
その第2弾は、Yasei Collectiveのリーダー・松下マサナオが、今年結成20周年を迎えたクラムボンの伊藤大助を迎えたドラマー対談です。クラムボンは、松下氏がドラマーを志す前から聴いていた思い出深いバンドなのだそうで、それが約15年の時を経て〈同業者〉として伊藤氏と出会い、以降親交を深めているとのこと。前回の鍵盤奏者対談と同様に、ドラマーとしてのキャリアだけでなく、パーソナリティーもまったく異なる両者ということで、お互いに良い刺激を与え合っていることが窺える対談になっていますよ!
★〈ヤセイの同業ハンティング〉
Vol.1 別所和洋(Yasei Collecitive)×芹澤優真(SPECIAL OTHERS)はこちら
尊敬しているからこそ同じことはしない
――まず、松下さんは今回なぜ伊藤さんを対談相手に……?
松下マサナオ(Yasei Collective)「クラムボンは僕が高校生の頃、バンドを始めたての頃に聴いていた音楽のなかでもすごく特別な存在で。その頃の僕から見ても、あれは上手い人じゃないとできないやつだ、という括りだったんです。技術的にも、ロックだけじゃなくていろいろ聴いている人たちならではの音楽なんだろうなと。当時の僕みたいに音楽のことを何も知らない人にそう思わせるバンドってすごいじゃないですか。そのうえそれを20年も続けているというのはすごいことですよ。そういう方と、たった5年しかやっていないのに偉そうなことを言っている僕らYasei Collectiveの実力を含めたすべての〈差〉みたいなものをちゃんと伺っておかないとと思いまして(笑)」
――15年の差を。
松下「すごくデカイと思います。僕らはたった5年の間に何度もメンバー間でいろんなことがあって、バンドを辞めようと思ったこともあるし、これからどうしたら……みたいなストラグルもたくさんあったなかでやっと5年が経ったわけですけど、20年って……」
伊藤大助(クラムボン)「そう言っていただけて嬉しいし、長くやってるといいことあるなと思います。自分としては目の前のことひとつひとつに取り組んでいたら20年、という感じですけど。時代が変わってきているなかで、マサナオくんをはじめとした若いミュージシャンたちは、昔のミュージシャンが10年20年かかっていたことを、2年3年でやっているかのように見える、すごい人たちがいるなーと思っていたので、ちょっと怖いけど早く友達になりたいと密かに思っていたんですよ(笑)」
一同「ハハハハ(笑)」
伊藤「これからの時代をリードする人たちの姿はこういう形をしてるんだ、と思って。いま僕は学生にドラムを教えているんですけど※、彼らに〈どんなドラマーが好き?〉と訊くと〈松下マサナオさん〉は必ず名前が挙がるんです。僕なんて〈まだ先生はバンドやってるの?〉とか〈なんてバンド?〉って感じですよ(笑)」
※尚美ミュージックカレッジ専門学校のプロミュージシャン学科で講師を務めている
――いやいやいや……。
松下「なわけない(笑)」
伊藤「いや、本当にそういうこと言われる(笑)。でも彼らはね、生まれつきYouTubeがあって、好きなものを好きなだけ観られる世代だけあって、そういうのを活かせている学生はとにかく楽器が上手です。羨ましい」
松下「昔、リットーミュージックとかから出ていた教則ビデオを買って、観すぎて画面がザーッてなるくらい必死になってコピーしたんですが、いまじゃそのビデオがDVDになって、それがまた全部YouTubeにアップロードされたり、さらにYouTuberみたいな人もいて、超有名なドラマーでも自室で録ったレッスン動画をフリーで公開していたりとか、そういった環境の差はすごくデカイんですよね。楽器が上手くなってあたりまえというか」
伊藤「そういう世代の人たちが、どういうミュージシャンをお手本にしているかはかなり興味があります。彼らがどんなものに惹かれるのか、普段どんな音楽聴いてるか、といったことを知る必要があると思っています。もうすでに、先人が時間をかけて得た技術やアイデアをいとも簡単に料理するすごいミュージシャンがたくさん出てきてると感じていますけどね。そんな意味でも、ヤセイはtoeを初めて聴いた時のような衝撃度がありました。こんな音楽があるんだ、という。変拍子だったり何分の何拍子なのかとはは関係なく、聴き手として素直に彼らが作る流れに付いて行きたくなってしまうような、持っていかれる感じ。そのなかにアイデアが散りばめられていて、細部までカッコイイ、という印象を持ちましたね」
松下「すごい嬉しいっす! 若手がのし上がっていくうえで、toeは絶対的な影響力があるバンドの代表だし、そういうバンドを比較対象として挙げてもらえるというのは。柏倉(隆史、toe)さんもすごく好きな先輩ドラマーですし」
伊藤「衝撃度、という意味合いでね。単純にいちリスナーとしての第一印象として、です。ヤセイはヤセイだし。彼らの作る〈流れ〉に第一に魅力を感じますね。圧倒されます。真面目で筋が通っているけど、お茶目なところも感じるというか……いろいろな気分にさせてもらえますね」
――実際にお2人の交流が始まったのはいつ頃からなんですか?
松下「今年っすよね」
伊藤「ほんとつい最近」
松下「共通の知り合いはたくさんいたんですけど、最初はdownyのドラムの秋山(タカヒコ)さんによる呑み会(秋山会)で伊藤さんを紹介してもらって。ここ半年の間に秋山さんを介して伊藤さんや柏倉さんや岩城(智和、LOSTAGE)さんを立て続けに紹介してもらっているんです」
伊藤「秋山さんのことは以前から知っていますけど、最近は特に、若くて良いドラマーをチェックしていたりとか、ドラマー界隈を盛り上げたいといつもおっしゃっていて。ドラマーがもっとおもしろがられる環境があってもいいんじゃないか、といったことを考えてらっしゃる方ですね」
松下「すごいアンテナ張ってますよね。downyの他にもfresh!やTHE MORTALに参加していたり、それ以外にも幅広くいろんなレコーディングをやっているし。初期のポンタ(村上“ポンタ”秀一)さんがやっていたような、ミュージシャンの地位を上げていくという活動をいままた改めてやっている感じでしょうね」
――いまジャズ界隈が盛り上がっているなか、ドラマーにいま一度光が当たりはじめている時期かなと思うのですが。
松下「ジャズ界が盛り上がっているかどうかは僕にはわかりませんが、そうですね、確かに今年はすごく感じますね」
伊藤「イメージは良くなってきていると思いますけど、そのドラマーたちがみんなドラムだけで生活できるようになっているかというと、その状況はあまり変わってないと思う。ただ単純にギャラ単価とかの問題ではなく、ドラマー自体がどうしないといけないのかというのは姿勢が問われるなと」
松下「バチ振ってるだけで食える時代はもう終わってるんですよ、どんなに上手かろうが。だからセルフ・マネージメントというのは絶対にしていかなきゃいけないし、ブランディングもすごく大事だと思っています。いつの時代でも同じですが、〈あいつのドラムってこんな感じだよね〉というのがまずあって、それを欲しがっているところで演奏すべきだと思うんですよ。日本だと山木(秀夫)さんやポンタさん、カースケ(河村“カースケ”智康)さんとか素晴らしいドラマーがいっぱいいて、彼らを見てスタジオ・ワークだけをめざしちゃう人がたくさんいるけど、何でも叩けてどこにでも呼ばれたい、スタジオ・プレイヤーになりたいなんて奴は留学してた頃のアメリカにはほとんどいなかったですから。スティーヴ・ガッドやピーター・アースキンのようないまスタジオ・ワークの大御所と言われる人たちはもともとバンドをやっていて、そこでの仕事が認められてオファーが来ているわけじゃないですか。それを履き違えちゃいけない。僕がポンタさんをなぜ尊敬しているかというと、PONTA BOXという自分のスタイルでワガママできる場所であるバンドをメンバーは変われど、ずーっとやっている。だからこそあのスタイルがあって、あの音が求められていろんなレコーディングに呼ばれてきたんだと思うんです。僕が〈若い子〉と言うのはアレですけど(笑)、10代のプレイヤーが出てきているなかで、そういう人たちがドラマーを簡単に〈仕事〉と考えることの怖さはありますね」
伊藤「現在のスタジオ・ワークで求められるものはとんでもないレヴェルのことだと思うので、簡単に考えちゃいけないですよ」
松下「〈職人〉の意味がいまと昔で全然違うので、かつては〈味がある〉〈例えば60、70年代風〉とか、その人にしかできないテイストやグルーヴが出せる人が職人だったんですけど、いまはピタッとグリッドに合わせて叩ける人が職人。時と場合によるけどそれだったら打ち込めばいいじゃん、という感じですよ。よく〈アオジュン(青山純)さんや山木さんは○○BPMでずっと確実に叩けるからすごいんだよ〉みたいに言う人がいますけど、実際はそこだけが彼らのすごいところではないじゃないですか。でもそれがウェブ上などで出回ると、みんな〈そーなんだー〉ってそれを信じちゃうのが見てると怖いなと思いますね。スタジオ・ワークって何なんだろうというところで」
――情報のリテラシーが身に付く前だから鵜呑みにしてしまうというのはありますよね。おっしゃった通り、情報がそれだけ多いからスキルの上達は早いかもしれないけど、何か大事なものが抜けちゃってる危険性もあると。
松下「そうですね」
――では、お2人のそもそものルーツというか、自身のプレイ・スタイルの指針になったものをうかがいたいのですが。
伊藤「僕は何かを聴いてドラムを始めたのではなく、楽器を始めるところからスタートしました。吹奏楽のパーカッションを始めて、ドラムはその後でした。とりあえずドラムが叩けるからという理由で、吹奏楽部で活動する傍ら、同級生や先輩に誘われて学園祭でロックやパンクを一緒に演奏したりすることで(音楽を)知っていったんです。なので指針のようなものはなく、〈楽器ができると声をかけてくれる人がいる。楽しいからやろう〉という感じでやっていたんですよね」
――誰かドラマーに憧れて、みたいな感じではなかったんですね。
伊藤「それがなかったことが、良かったんだろうか……と思っています。もう遅いですけど」
――それが自分らしさを手に入れることに繋がっているとか?
伊藤「〈こうありたい〉〈こうしよう〉はあるけど、僕がどうやって僕たり得ているのかはわかりません。でも例えば、ドラマーとして好きな人がたくさんいるなかにマサナオくんも入っているんですが、僕は絶対にマサナオくんみたいにはできないというのを知っているし、尊敬しているからこそ同じことはしないぞ、と考えたりしますね」
松下「それはみんなそうですよね。この人すげー好きなんだよな、という人ほど自分とは全然スタイルが違って……というか悲しいことにそもそも僕と似たスタイルの人は日本にはあまりいないですが、若い世代では石若駿や横山和明といったMikikiで対談した奴らからもすごく影響を受けるし、こいつらスゲェなと思うけど、そうなりたいとは思わない。〈これどうやってやるの?〉とかいろいろ教えてもらってるし、そのテクニックを自分のプレイに採り入れようと思ったりはするけど、だからといってあれをそのままやろうとは思わないし、同じ楽器を使おうとは思わない。それは伊藤さんにも感じていて。めちゃくちゃ尊敬していて好きなドラマーだからこそ、もし仮に自分が伊藤さんの現場で叩かなくちゃいけなくなったらどういうことができるかなというのを必ず考えるようにしています」
伊藤「そういう想像力はとても大事ですよ」
松下「例えば、超尊敬する海外のドラマーが来日した時に、その人が事故か何かに遭って替わりのプレイヤーを探しているとする。ジャズだとすぐにそのポジションをカヴァーできる奴を探すじゃないですか。もしそういう時に僕が呼ばれた場合、自分に替わりが務まるのか、何をしようかって考えたら、それで眠れなくなっちゃうんです。でもそういう想像が翌日のリハや練習へのモチヴェーションに変わるんですよ。練習ができない時でも、そういうことを考えるだけでインテンスな自分を保てるんですよね」
――なるほど。
松下「最近はそういうことは減ってきているんですが、この間クラムボンの武道館公演※を観た時に、バンドを20年間続けてきてのこの公演、自分たちだったらどういうふうにできるだろうと考えたんです。でも全然想像つかなかったですからね。想像つかないということは絶対にできない、いまの自分たちでは全然足りないということは間違いない。単純にライヴを観て感動しちゃうというのは、ドラム云々、音楽云々のみで観てないじゃないですか。自分のキャリアと照らし合わせてみたりとかいろいろ感じるところがあって、僕含めて一緒に行ったメンバーみんなが感動しちゃったんです。ウワーッて気持ちになった。最終的にはそういうライヴができるようにならなきゃいけないんですけど、それを僕らの音楽性でできるかというのは物凄く難しいところで。〈よくそんな音楽ずっと続けてたね〉という意味で感動させられるかもしれないけど(笑)」
※去る11月6日、クラムボンの結成20周年記念ツアー〈tour trilogy〉の最終公演が東京・日本武道館で行われた
伊藤「やっぱりこうやってね、自分だったらこうしようと想像力を働かせられる人は、そりゃいい仕事しますよ(笑)。そんな人の想像を超えたことができたのなら、嬉しいですね」
〈自分だったらどうするか〉を想像するだけで全然違う
――クラムボンも初期から変拍子バリバリだったり、かつては〈え、ギターいないの?〉という反応をよくされたとおっしゃっていましたが、当時そんなふうに思われていたバンドが、それから20年経って武道館でライヴをやっていたりするわけです。なのでヤセイがいずれあの舞台に立つ可能性も十分あり得ることだと思いますよ。
松下「目標として常にありますね。僕が高校2年の時にモリシタくんといういちばん仲良かった奴の家で〈バンドやろうぜ〉という話をして、同じ時期に親戚の兄ちゃんにPearlの安いドラム・セットを譲ってもらってドラムを始めたんです。その頃に、そいつんちでクラムボンの“はなれ ばなれ”か“君は僕のもの”のどっちかのミュージック・ビデオを観て、〈あ、こんな人たちがいるんだ。カッコイイ〉と思ったことを武道館で観ている時に思い出して、エモかったっすねー(笑)。15年くらい前ですよ。そうやってドラム始める前から見ていた人にいまこうして知り合えたのは、伊藤さんがバンドを続けてきてくれたおかげだし、僕も漠然と〈バンドやろうぜ!〉となって、それからアメリカへ行って帰ってきて、それでもなお良いと思える音楽を続けていられたからこそですから」
――そうですよね。
松下「あのライヴの後に、曲を大事にしようっていうことを改めて思いました。僕、ヤセイとは別でZa FeeDoというバンドをやっているんですけど、ヤセイのアートワークなどもやってくれている沖メイがヴォーカルで、その子がいつもめちゃめちゃ難しい曲を書いてくるんです。Yasei CollectiveよりもよっぽどZa FeeDoのほうが難しくて、僕らは譜面を書かないので頭の中で譜面を起こして、覚えて……」
伊藤「譜面書かないんだ! すごいな」
松下「そうなんです。リズム・セクションはYasei Collecitive、僕と中西(道彦)と(斎藤)拓郎で、それプラス、田中“TAK”拓也というスタジオ・ワークなどもかなりやっている、アメリカに10年くらいいたすごいギタリストがメンバーなんですが、その4人で必死こいて覚えた曲を、ある日突然〈あたしこの曲もうやりたくなーい〉って言うんですよ。すごいがんばって、スタジオに何回入った?っていうくらいの曲を。突然そういうことを言ってやるのを止めちゃうんです。信じられないでしょ(笑)? それで、この間のクラムボンの武道館にその子も一緒に行っていたんですが、ライヴが終わった後に〈やっぱり曲は大事にしなきゃいけない〉とすごく言っていました。〈あの沖メイが! 良かったー〉って(笑)。真面目な話、僕らが高校の頃に聴いていたクラムボンの曲を基本同じ形で、同じ3人で演奏していても、やっぱりいいんですよ。全然古くない。ディスではなく、ちょっと難解に聴こえるリフを入れた曲をやって満足してる、いま勢いのあるバンドはたくさんあると思いますが、それを何年か後に聴いたらどうですかね。〈これダサくねぇ?〉ってなると思うんだけど、クラムボンやtoe、チャットモンチーもそうですが、曲が普遍的なんです。昔の曲っぽい感じがない。それってすごいことだし、なかなかできることじゃないですよ。僕らみたいに、アメリカでやってる最新の音楽に喰い付いてやろうと思って始めたバンドとしては、そういった先輩たちを見ると〈うわ、そうだよな〉と思わされちゃって。考え方が楽器を始めたあの頃にまた戻った気さえします」
――トレンドを追いかけて採り入れることは新しいものを作り出すという意味では大事だと思いますけど、それと同時に普遍性を持たせることも重要と。
松下「普遍性ってめちゃめちゃ大事だと思うんですよね。タワレコとかに並んでるCDで、名盤とされているものはどれもやっぱりいいですもんね。ビートルズ然り、ストーンズ然り、ジャズももちろん。ジャズの50年代、60年代の名盤とされる作品は大体いいですもん(笑)。でも90年代からいまに至るバンドの作品を、何年か後に全部フレッシュに聴けるかと言ったら、たぶん聴けないと思う。でもその普遍性を保っているクラムボンへのリスペクトは大きいですし、これからも30年40年と続けてくれたらなとすごい感じます」
伊藤「(クラムボンの)最初の頃は好きなようにやっていて、夜中のクラブでライヴをやっていたら、お客さんはどうノったらいいかわからないし、もう寝るしかないみたいな感じで(笑)、誰も観てくれてないというステージをだいぶ昔にやったことがあるんですね。そこで、単純に自分たちの曲を聴いてもらいたいなと思ったんです。好きなようにやるだけじゃ聴いてもらえないという経験を踏まえて、初期の頃の曲は出来ているというのはありますね。またそこから時間が経って、最近の曲ではドラムの面で〈歳を重ねて落ち着いてくるかと思いきや、手数が増えてるけど体力的に大丈夫?〉みたいに周りの人から心配されることもあります(笑)」
松下「そうそう、音数が増えてる感じがありますよね」
伊藤「そういう面を喜んでもらえていたらありがたいけど、評価に甘んじるようなことでは生き残れないから〈なんかこのドラマーおもしろい〉と思ってもらえるように、積み重ねてきたスタイル以外のことにもチャレンジしはじめています。だからやることが増えてきちゃってる状況も楽しく思える。それがフレッシュでいるということに繋がるかもしれない」
松下「いろんな音楽を聴いて、いろんなドラマーに目が行くことで、良い意味での嫉妬みたいなものは絶対に出てくる。例えばマーク・ジュリアナやキース・カーロックとかを好きで聴いてるんですけど、そもそも(彼らのプレイは)規格外じゃないですか、〈これって……〉みたいな感じなんですよ。それでもがんばって付いて行こうとして聴くか、〈この人は神様〉と言っちゃうか。でも僕は〈神様〉と口に出したら終わりだと思うんです。〈ブライアン・ブレイドは神様〉〈キース・カーロックは鬼〉みたいなことをみんな言うし、僕も言ったりするんですけど、それをオフィシャルなところで言っちゃったら絶対にダメだと思う。心の中で思うのはいいんですよ、実際に素晴らしいので。でもそれを口にしないで、さっき言ったように自分だったらどうするか、ということを想像するだけで全然違うはずで。モチヴェーションの問題ですけど」
伊藤「そうだと思う。とても悪い言い方をすると、そうじゃないと思考が止まっているということになりかねないので。あの人は神様だよね、すごいよねと言ってそれ以上何も考えないのであれば、それは尊敬の気持ちになるだろうかっていう」
松下「ちょっと宗教的な感じになっちゃうんですよね。それが見てて怖いなと」
伊藤「そうそう。それはそれでそのドラマーが商売をしていくうえで役に立つかもしれないけど、本当の意味でその人がさらにがんばれる糧になるようなものって、祀り上げることだけではない。それはキース・カーロックとマサナオくんと僕が同じ土俵に上がってしまっているという事実のなかで、キースとは会ったこともないし、一生会うことはないかもしれなくても、こちらが勝手に物凄い刺激と、考えるネタを与えてもらっていると感じられる。そういうことが起こるのがすごく良いことで」
松下「僕はこんな感じなので、上の人から否定されたり、出る杭は打たれる的なことがあって。それは甘んじて受け入れるけど、否定する前に僕がやっている内容を見てほしいというのはある。やってる内容を否定されるんだったら、それは考え方が違うということだから仕方ないですけど、ドラムやバンドのこれからとか、アメリカで学んできたことを日本に持ち込んでやろうとしていることに対して、〈この国では……〉という感じで叩いてくる人もいっぱいいて。僕は〈こういう考え方の人もいるんだ、勉強になる〉と思えるからいいんですけど、僕より若いこれからのドラマーだったら〈うわ~、こんなこと言われちゃった。がんばってきたのに……〉って思う奴がほとんどだと思うんですよ。だから僕はそういうことを後輩に絶対にしちゃいけないと思ってるし、同時にそうやって頭ごなしに叩いてくる人たちを納得させるにはどうしたらいいかをいま考えていて。そのためにはもっとドラムが上手くならないといけないし、そういう人たちが屈服するような何かを僕らのコミュニティーのなかで築き上げないと……それが数字なのか、ドラム・ヒーローになることなのか、それだけじゃない何かがきっとあると思うんですよ。それをいま探している」
――なるほど。
松下「だから、伊藤さんのように周りから尊敬されるドラマーたる所以は何なのかが気になっていて。日本の音楽シーンにおいて独特な立ち位置にいるんですよね。バンドマンなんですけど、〈“良い”ドラマー〉として同業者みんなが見てる」
伊藤「そうなの? 怖いね(笑)」
松下「楽器のこだわりもすごくあるじゃないですか」
伊藤「そういうことばっかり考えてるからね(笑)」
松下「ライヴをする際に、スネアやペダルしか持って行かずに他の機材はお任せで、みたいな感覚がわからなくて。僕だったら逆にスネアは何でもいいからシンバルは全部持って行きたいし、セットがダメならヘッドだけでも持って行って変えたいし。たぶんそういうことを考える最後の世代なのかもしれません、機材に対して」
伊藤「かつては自分の楽器でしか自信持ってできないというのは違うかなと思って、〈現地調達〉みたいなことも修行だと思ってやったことがあるけど、だんだんどうでもよくなってきて(笑)。いいじゃん自分ので、と(笑)」
松下「持って行けるうちは持って行ったほうがいいですよ(笑)」
伊藤「僕、楽器はよく変えるんだけど、〈こういう音が出したい〉というのは使う楽器やメーカーが変わってもだいたい統一できてるつもりではある」

――武道館のライヴはすごく音がいいなと思ったんですが、ドラム・セットにおいて何か特別なことはあったんですか?
伊藤「普段通りですよ。それこそああいう大きな会場においての生楽器はもう、普段通りの生音を増幅してもらうしかない。隅々まで届くように、というところはPAさんにお任せしています」
松下「マイク乗りの問題ですよね」
伊藤「マイクで拾われる前にいい音にするというのは工夫してるけど、チューニングの精度と関係なく、その会場に合った良い感じになることも……」
松下「PAが良ければ良いほどそうなりますよね」
伊藤「そうそうそう。現場次第なところはある。ドラムの音って主役ではないし、部品のひとつかもしれないけど、その部品ひとつに至るまでをできる限り質の良いものにしたい、という気持ちで向き合ってますけどね」
松下「そのこだわりはあの機材に出てますよ。PAさんとのやりとりも演奏を聴いていてわかる。クラムボンは伊藤さんのスネアのゴースト・ノートが聴こえなくなっちゃうと一気に違うバンドに聴こえるんですよ。〈ダッ〉とか〈タタタ〉といった小さい音がどれだけ出るか。そういう音はゲートをかけたりリヴァーブをかけたりすると潰されていって、音楽のなかの大事な部分が聴こえなくなっちゃうんです。そのぶん安定感は得られるんですよ。同じ音量で、同じダイナミクスでとなると。細かいニュアンスは武道館のような大きい会場だと出しづらい。生音はもう聴こえなくなるから、どのバランスで出すか、どういうチューニングにしたらそれが出るかをPAさんも自分たちの音楽の一部として考えて動かないと、あの音は出せないんです。伊藤さんが左手1本でやってる内容を理解しているPAさんじゃないと意味がないですから」
伊藤「そこはデビュー前からお世話になってる西川一三さんのおかげ。フィッシュマンズ、木村カエラ、最近ではゲスの極み乙女。など、超売れっ子です」
松下「大御所ですよ」
伊藤「でも本人はいたって飄々としていて、僕には〈好きなようにしなさい〉といつも言ってくれる。バランスを取って、〈こうしたほうがいいですかね〉と僕が機嫌を伺うようなことを言っても、〈いいから好きなことしなさい〉って」
松下「そういう関係性って大事ですよね。僕もいつもお願いしているPAの伊藤ハルクさんやエンジニアの葛西敏彦さんにわがまま言っていろいろ聞いてもらっているので、彼らがいない時は不安になります」
~互いのバンドのミュージック・ビデオを鑑賞しながらトーク・セッション~
クラムボン “yet”
松下「家で観たんですけど、間奏のところ(2分53秒頃から)の拍子が全然取れなくて。ちょっと変拍子が入ってますよね?」
伊藤「あれね、間違わないようにドラムのフレーズだけで憶えてるんだけど(笑)、基本4/4(拍子)で進行していると。4/4のなかで、決めが入っている状態。この曲に限らず〈あの曲のあそこは何拍子だ〉ってよく訊かれる(笑)」
松下「だんだん拍が減っていってるように聴こえるんですよ。ここの譜割りがわからない」
伊藤「かたまりで考えちゃってるところがあるからね。それに加えてストリングスのアレンジがさらに複雑に絡んでくる」
松下「クラッシュ(・シンバル)の位置とストリングスの決めは同じところに入ってるのに、カウンターで入ってくるベース・ラインがちょっと違ったりするじゃないですか」
伊藤「そこを深く考えすぎるとね……(苦笑)」
松下「このクラッシュが僕を惑わせるんですよ(笑)」
伊藤「ドラム的に考えるとわからなくなるかもね」
松下「そうですよね……分析します。伊藤さんのこのハイハットはいい音してますね」
伊藤「でも最近(ハットを)磨くかどうか悩んでるんだよね」
松下「あんまり磨かないほうがいいんじゃないですか?」
伊藤「ライド(・シンバル)のほうを磨いちゃったからバランスが悪くなっちゃって」
松下「スティーヴ・ガッドも絶対磨かなかったですからね」
伊藤「あと、ああいうタムの連打を10インチとフロア・タムでやるのは本当はおかしいのかもしれないんだけど……」
松下「でもサウンドしてますよね。ところで、僕らが録音しているオールアート・スタジオはちょうどこのドラム・ブースくらいの広さで、そこにヤセイのメンバー全員入ってせーので録るんですよ(笑)」
伊藤「それはいいね~」
松下「これMV撮るの大変だわ。決めがいっぱいある」
伊藤「ちゃんと楽器にマイクを立てたりしてますけど、実は全部〈演奏シーン〉のための演出です。エンジニアさんまで映ってるのに(笑)」

Yasei Collective “radiotooth”
松下「ライヴで初めて演奏するにあたって久々にリハでやってみたら誰一人としてできなくて(笑)。10回くらい通しました(笑)」
伊藤「難しいもんね(笑)。この曲にはシンプルで太い線が一本通ってるけど、そのなかに細かいアイデアがいっぱい入ってる。イヤホンでゆっくり聴いても楽しいし、スピーカーで聴いても曲の主張がはっきりしてる」
松下「わー、嬉しい」
伊藤「シンプルなのに贅沢な感じもするよ」
松下「マジっすか。いや~、さっきのクラムボンのMVでの(原田)郁子さんは可愛かったなと……拓郎(ヴォーカルも担当する)を見て……横顔の差が(苦笑)。今回のMVは演奏シーンしか入れなかったんですよ」
伊藤「それはなにか意図があったの?」
松下「移籍して初のシングルなんで、特に演奏に焦点を当てたものにしようと」
伊藤「そりゃみんな(演奏しているところを)観たいもん」
松下「ドラムに関しては僕が作ったパターンじゃなくて、ギターの拓郎が組んできたフレーズなんです。僕の好きなドラマーをあいつも好きで、そのドラマーのやりそうなフレーズや彼が好きな打ち込み主導でやってる音楽、例えばスクエアプッシャーやエイフェックス・ツイン、最近だとデイデラスあたりの曲からニュアンスを借りて打ち込んでくるんですよ。それを〈マーちゃんドラムで……〉って持ってこられて、〈できるかボケッ!〉って感じなんですけど(笑)、それをAメロのほぼ全部のパーツを揃えて譜面に書いて、そうしたら1拍5とか7とかで割って、そこを1個抜いたり、キックをちょっとずらしたり、スネアを速めたり、それをキーボードがループしてるなかで、僕だけ淡々と違うところに決めが入ったものをやる。さらにそれをよく聴くと足のパーツだけベースとユニゾンになるんですよ。だから僕がドラム・パートをコピーするということは、ベースの中西も同じことをやらなくちゃいけなくて。もうね、デモを聴かせたいくらい(笑)。一方でBメロは難解すぎて叩けなくて、ここは僕なりにヘンなことをやって何とか辻褄を合わせたんですけど」
伊藤「わからない、難しすぎて(笑)。でも、メンバーが本気で練習しなきゃライヴでやれないっていうのを聞いてすごく嬉しい。ただでさえすごい人なのに、そんな人が自分の限界に挑んでるから感動するのね、と。専門学校の学生やレッスンの生徒にいつも〈はい、がんばります、って言ったな、ならそんなもんじゃないぞ、もっとがんばれ、もっともっとがんばれ〉とか言いたくなっちゃう自分が無責任な奴に感じることがあるんですけど(笑)、そういうことって言葉で発表するものでもなくて、本人が努力や苦労と思わずにやるから素晴らしいのかもしれない。だから、まさにそれを実践している人と……会うのが怖いなと思っていたのかもしれない……」
松下「いやいやいやいや」
伊藤「そうやって、人の苦労も知らないで勝手に想像し合うのもおもしろいのかも(笑)。マサナオくんとは最近友達になったけど、そんな気がしないというか」
松下「僕もそうです」
伊藤「マサナオくんのことを〈すごく怖いドラマーがいる!〉と思っていたけど、それを、せっかく同じ土俵にいる人なんだから会ってみたい、という気になれたのはマサナオくんも僕を気にしてくれていたからだろうと思いたい。尊敬する同業者の刺激になり得る演奏をしていきたいなと思いますね」
松下「でも実際“radiotooth”はいまだにちゃんとできている感じがしないので、ライヴでやっていくうちに涼しい顔して余裕でできるようになるまでにはまだかかると思うんです。これまではライヴで曲を完璧にやれるようになってから録音して、アルバムにするという形を取っていたんですが、“radiotooth”はライヴでやっていないから、録音まではすごく大変で。このタイミングでACIDMANの事務所に所属したということで、いろんな人の意見を聞く時かなと思って今回は初めて外部の意見を採り入れたんです。制作の段階で大木(伸夫、ACIDMAN)さんの見るヤセイ観みたいなところから来る意見をもらって、4~5回キャッチボールしました。これまでだったらメンバー以外に音楽的な指摘を受けても〈なんでそんなこと聞かなきゃいけないんだ〉という感じでしたけど、大木さんはめちゃめちゃ尊敬しているミュージシャンというだけでなく、やっている音楽も作り方も違うというところがすんなり意見を聞き入れられた理由ではないかなと……。ヴォーカリストで、3ピースのロック・バンドをずっとやってきている人の意見は全然違いました。俺たちがこれまで言われてきたような〈もっとなんかこうしろよ〉というただただ抽象的なものとは違っていたし、細かい音楽的なことは言わないんです、逆に。〈もっとこういうふうにさ……〉って具体的に言われたことはあえて言いませんが、いつも良い感じに言ってきてくれて、それがとてもやる気に繋がって楽しかったですね」
――ACIDMANはクラムボンとはまた違う形でずっと続けてきたバンドですからね。
松下「大木さんは見てるところが全然違うんですよね。何歩も先を行っているというか、僕らが〈最近調子良くなってきて、こういう人にも聴いてもらえて……〉みたいにちょい自慢げに話すと、〈え? で? 全然まだまだだから〉っていう。それが全然嫌味じゃないんです、〈ですよね〉と思っちゃう。そんなところで足踏みしてちゃだめだ、ということを気持ちの良い形でいつも伝えてくれて。それは(浦山)一悟さんもサトマ(佐藤雅俊)さん(いずれもACIDMAN)もそうで。〈でも大丈夫だから〉って最後に必ず言ってくれる。こういう尊敬する先輩ミュージシャンと同じ事務所に所属できて、次のステージをめざす準備段階を共に過ごせるのはとてもありがたいことです」
――今回のシングルの後はアルバムの予定も?
松下「はい。今度のアルバムはほとんどがライヴでやらずにレコーディングするという、これまでにないプロセスで作っています。あと、音を絶対に被せないというのをルールにして、ヴォコーダー以外は一発録りできる素材しか使わないようにしています。すごくシビアな条件なんですけど楽しくはありますね。それにしてもクラムボンのこのMVカッコイイな……僕らもストリングス入れたい……(笑)」
――ハハハ(笑)。クラムボンの武道館公演ではミトさんが“バタフライ”(最新作『trilogy』収録曲)を〈一番難しい曲〉と紹介していましたが、実際に演奏は難しいですか?
伊藤「いやそんな……難しいですよ(笑)」
松下「こっち(“yet”)のほうが難しくないですか?」
伊藤「どれも大変なんで(笑)」
松下「違う大変さですよね。でも僕は逆に“はなれ ばなれ”のような〈ザ・クラムボン〉という感じの曲のほうが料理しにくいですよ。“yet”のMVもやっぱり自分だったらどう叩くかを考えながら観てましたが、これはある程度想像がつくんです。でもクラムボンらしい曲のほうが〈どうしよう……他の人に頼もう……〉ってなっちゃう(笑)。つまりクラムボンの3人じゃなきゃいけない曲になっているということで、それが理想ですよね。よく僕のパートを〈替わりに入るなんて無理っすよ〉みたいに言われたりするのは技術的なことを言っているだけであって、完コピするだけだったらいずれできると思うんです。そうじゃなくて、真の意味で〈やっぱりヤセイはマサナオじゃなきゃダメだよ〉となるまではまだ全然浸透していない。石若駿なんて〈ヤセイ、俺にやらせてくださいよ!〉とか普通に言いますからね。あいつだったら余裕でやると思うし」
伊藤「僕は、僕の替わりはいくらでもいるというつもりでやってきてますね。自分にしかできないことがある、とは考えない性分なんです。積み上げてきたものには自信があるんですけどね。卑屈な気分ではなく、替わりはいるのかもしれないからこそ、〈自分ならどうするか〉をとことん追求していきたいという意味合いで」
松下「でも確実に、他の人にはできないですよ」
伊藤「うん、やっぱりそうなんだけど、〈僕のやってることは替えが利かないので〉とは自分からは言わない」
――それは周りの人が判断することだと。
伊藤「うん。僕が出すことの良し悪しを判断するのは僕じゃない。〈自分がやりたいこと〉と〈作品の完成度〉は別問題だな、と」
松下「聴くのは他人ですもんね。〈このテイク超良く録れたんだよなー〉って思っても、絶対選ばれないですもん、僕なんて」
伊藤「僕も1回もないよ。これまでレコーディングしたものほぼ全部ね。でもそれは悪いことじゃないと思っていて。特に〈ドラム的〉〈ドラマー的〉なこだわりは全体の完成度と関係ないことのほうが多い気がする。だから僕は〈自分らしく〉とか〈ドラマー的には〉といったことにこだわりすぎないようにしているうちに、素直に(他人の言ってくれることを)聞けるようになってきた。〈いまのテイク、OK〉って言ってもらえたら〈チームに貢献できたんだ〉と、〈あなたの替わりはいない〉って言ってもらえたら〈そう思ってくれる人がいるのね〉とありがたく受け止めるようになった。〈自分らしい演奏〉だったか、〈自分らしいやり方〉だったか、とかそういうことはその後考える」
松下「スタンスとして、この曲は自分にしかできないという気持ちを持ってもいいと思うんですけど、それが驕りになってしまってはダメだと思うんですよね。真面目な顔してそういうことを言ってる奴はだいたい大したことないですから(笑)」
伊藤「そういう人がいるのかー」
松下「ドラムで武装できないからそうやって言葉で武装して、それが表現の一部だと思ってるんですよね。それで実際に演奏を見たら〈え?〉ってなるのがよくあるパターンで。僕もそれに近いことを言ったりするので、それを動画やライヴで観られて、大したことないじゃんと言われるのが嫌だから練習してきたというのも正直ある」
――ある意味、言葉で自分を追い込むことでみずからを高めるというか。
松下「それがいつかブランディングに繋がるんじゃないかと信じていた時もあって。いまは全然そういう感じはないんですけど。前は音楽をいつ辞めてもいいと考えていたので、その時に思ったことを全部言っていたんですが、僕が参加したとある対談記事をきっかけにウェブ上で叩かれたことがあって、それを読んだ僕の(ドラム・レッスンの)生徒、僕より年上の方なんですが、その人に〈この言い方を変えただけで伝わり方が違っただろうし、言ってる内容は僕だから理解できるけど、この(叩いている)人はそれが理解できないから反発しているのであって。言い方が悪いことが理由で勘違いされて叩かれる。これは無駄な反発でしょ?〉と言われたんです。その(発言をした)時は、そういうことを言って反発されてもしそれが理由でドラムを辞めなくちゃいけなくなっても別にいいと思っていたんです。でもこの一件があって、同じ頃にいろいろな出来事が重なって起きたことで、バンドを続けたい、ドラムをずっと続けたいという気持ちがすごく強くなった。あのアドヴァイスは物凄く勉強になりましたね。僕の言い方ひとつで言いたいことが伝わらずに敵になるのは不本意なので、ちゃんと言い方も勉強しなくちゃいけないなと思いますし、これまでそういう発言力は僕にはないと思っていたら、狭いドラムの社会ではいつの間にかそういう発言がちゃんと受け止められてしまう立場に置かれているので、〈ダメだこれ、居酒屋じゃねーんだ〉と(笑)、慎重に発言しないとなと思うようになりました」
伊藤「まあでもマサナオくんはさ、高い技術を持っていつつ、時には歯に衣着せない物言いもする〈言うだけのことはやる男〉という意味で有名になってるんだから」
松下「ハハハハハハ(笑)」
――無視できない存在という。
伊藤「そうそう。マサナオくんのことが好きな人はもちろん、思うところがある人でも、避けて通れない気分にさせられる人だと思う。それは、言うだけのことをやってるから」
松下「すげープレッシャーだし、ハードル上がりますね(笑)」
伊藤「自分からも進んでハードルを上げてるでしょう。だからカッコイイんだよね」
松下「伊藤さんには何も隠せない(笑)」
伊藤「ハハハハ(笑)。僕は言いたいことのすべてを言いきれる勇気はないし、〈ドラムで語る〉なんてほど技術も人生経験もない。自分でも思うけど、不器用を絵に描いたような人間なので。だからマサナオくんには憧れちゃう」
松下「いやいやいや」
伊藤「真似したくても絶対できないけど(笑)」
――でもこのタイプの違う2人がドラマーとしてリスペクトし合っているという関係性はすごくいいですよね。ドラマー界隈の縦横の繋がりを見せていくことで、ドラマーという存在を広く伝えていくのも大事だと思うので。
伊藤「意外に孤独なんですよ、ドラマーって。だから意味があってもなくても寄り集まっちゃうというのはあるかもしれない」
松下「〈ギター呑み会〉〈ベース呑み会〉ってあんまり聞かないでしょ? でも〈ドラム呑み会〉はありますからね。僕もオフの時とか、ちょっと誰かと話したいなーと思って電話するのはドラマーですから(笑)。そういう楽器なんでしょう」
伊藤「一人じゃ何もできないからね……」
松下「〈叩き語りツアー〉とかできないですからね(笑)」
一同「ハハハハハ(笑)」
伊藤「ドラマーは自分と向き合わないといけない時間が比較的多いから、そうやって同業者と集まることでバランスを取るというか。〈この気持ちわかってほしいな〉と思うとついついドラマーに電話しちゃう、みたいな。僕もそうですね」
松下「あとみんな楽器が好きなんですよ。僕ら、この後一緒に楽器屋へ行こうって話してて」
伊藤「モノに執着する感じも楽しいんだよね、ドラマーは」
松下「結局のところ、機材にはこだわらなきゃいけないんですよ(笑)」
Yasei Collectiveニュー・シングル“radiotooth” リリース・パーティー
日程:2016年1月30日(土)
会場:東京・代官山UNIT
開場/開演:16:30/17:00
チケット:前売3,000円/当日4,000円
ライヴ:Yasei Collective/FULLAROMOR
DJ:社長(SOIL & "PIMP" SESSIONS)、仰木亮彦(在日ファンク)
オープニング・アクト:沖メイ(Za FeeDo)
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