2020年のファースト・アルバム『Walls』はミリオン・セールスを突破、また21年に行った配信ライヴが男性ソロ・アーティストにおける配信コンサートの最多視聴記録を更新してギネス世界記録に掲載されるなど、着実にソロ・アーティストとしての存在感を大きくしているルイ・トムリンソン。この12月で31歳を迎える彼の約3年ぶりとなるアルバム『Faith In The Future』は、これからの未来を信じるために〈選択〉し、〈変化〉した姿を刻む作品にしたかったと語る。
「年齢を重ねるごとに、〈選択〉と〈変化〉という2つは、自分に大きく関係するようになってきた。実際に、周囲はもちろん自分自身の変化もたくさん目にしてきたしね。その2つは成長するための大切な要素だと思う。もっと大人になって、もっと責任感を強くするうえで、欠かせないものなんだ。だから、このアルバムのテーマは、この2つがメイン。それと同時に、〈未来を信じている気持ち〉も込められている」。
アルバムのプロデューサーには、The 1975などを手掛けるマイク・クロッシーを筆頭に、ロブ・ハーヴェイ(元ザ・ミュージック)やセオ・ハッチクラフト(ハーツ)ら錚々たる顔ぶれが参加。力強いバンド・サウンドをベースに、耽美で壮大な雰囲気の漂うロックなナンバーから、ワン・ダイレクション時代を連想させるキラキラしたポップ・トラックまで、ルイがこれまで〈選択〉した道のり、輝かしい未来に向けた〈変化〉へ思いを巡らせる楽曲が揃っている。
「意識的に影響を受けたと思う音楽はあまりないんだ。今回、自分の頭の中に目標としてあったのは、サウンドというよりはフィーリングだったんだよね。興奮を与えてくれるようなサウンドを作りたいという意識。そしてもうひとつは、前作から進化したサウンドを作るということ。なかには、自分がこれまで聴いたり表現してきた音楽が自然にサウンドに描かれているのかもしれない。でも、それは意識的ではなくて、オーガニックに出てきたものなんだ」。
なかでも、徐々にサウンドスケープが広がるスタジアム・ロック風の先行シングル“Bigger Than Me”は、30代になったからこそ書くことのできた楽曲になったと語る。
「あの曲を書くには、ある程度の人生経験が必要だと思うから。ツアーの経験が増えるほど、その時間が、ファンの皆さんだけでなく自分にとっても大切な時間であることをしっかり認識できるようになった。たぶん5年前だったらその心境には辿り着けなかったと思うんだ。今回のアルバムには、そんな曲がいくつかある」。
また、バラード調なイントロから、徐々にスピードを増していく展開が痛快なピアノ・ロック“Silver Tongues”は、ルイのこれからを示すことができたというお気に入りのナンバーだという。
「曲そのものが、自分が音楽的に進もうとしているその先を示していると思う。僕のサウンド的な未来が伝わる曲なんじゃないかな。でも、これはあくまでも現時点のお気に入りであって、リスナーのみんなも同じだと思うんだけど、ツアーでパフォーマンスしたり、時間を重ねていくうちに、新たなフェイヴァリットが出てくるかもしれない」。
この『Faith In The Future』を完成させたことによって、これからの30代という時間が充実したものになりそうだと、期待を膨らませるルイ。
「ようやくシンガー、ミュージシャンとして自信を持つことができているいい状態になった。いままでこういうフィーリングは感じたことがなかったんだ。だから、自分のキャリアがこれからどうなっていくか、次のチャプターが本当に楽しみ。またツアーをするのも待ちきれなくて、特に早く日本でライヴをしたいんだ。これはお世辞で言っているわけではなくて、実は(ワン・ダイレクション時代に)来日した際にアカペラで“Story Of My Life”を歌ったことがあるんだけど、あれは人生において本当にスペシャルな光景だった。それを上回る素晴らしい思い出を、皆さんとまた作りたいんだ」。
ルイ・トムリンソン
91年生まれ、英国はドンカスター出身のシンガー。オアシスやアークティック・モンキーズなどを聴いて育ち、2010年に参加したオーディション番組「Xファクター」の脱落をきっかけにワン・ダイレクションを結成。翌年のデビュー・シングル“What Makes You Beautiful”を皮切りに世界的な人気を獲得する。2016年よりグループが活動休止に入ると、2017年に“Back To You”で正式にソロ・デビュー。2020年1月のファースト・アルバム『Walls』は全英4位を記録した。その後も話題を集めるなか、セカンド・アルバム『Faith In The Future』(BMG/ワーナー)をリリースしたばかり。