『ザ・リバー』35周年目の決定盤!

 ブルース・スプリングスティーンの名盤というと――1作品だけ選べと言われたら――多すぎて即答できない。もちろん1枚を選ぶ必要はないが、あえて言おう。それは『ザ・リバー』である。

 第一線を走り続けていた男のまなざしは、どんなものをとらえていたのか? 当時の“ボス”を目・耳両方で味わえる、完全限定生産盤が発売される。 全部を味わい尽くすにはどれだけの時間がかかるのか? 週末の予定は大丈夫なのか?

BRUCE SPRINGSTEEN ザ・リバー・ボックス~THE TIES THAT BIND: THE RIVER COLLECTION Columbia/Sony Music Japan International(2015)

 まずは2枚組で発表されたアルバムである『ザ・リバー』のオリジナル曲、20曲のリマスター・ヴァージョンで、35年前にタイムスリップ。2CDヴァージョンも発売されているのだが、やはり今回はBOXで持っておきたい!

 というのも、今作の目玉はやはりDISC.3の『THE RIVER SINGLE ALBUM』。当初『THE TIES THAT BIND』として1979年に発売される予定だったがボスが何かが足りないと判断し、中止となった幻のアルバム。中でも特筆すべきなのは《Cindy》《To Be True》《Loose Ends》などの『ザ・リバー』未収録の幻の名曲だ。こんな素晴らしい内容をも、お蔵入りにしてしまう才能のインフラ(笑)。有り余りすぎでしょ。

 そしてさらに驚くべきはDISC.4。彼のもっともキャッチーでポップな魅力が味わえる時期である“リバー”期。未発表曲集などで収録されたものもあるが一同に会するのはこれが初めて。22曲のアルバム未収録曲が1枚にまるっとまとまった。これで『ザ・リバー・ボックス』音源のすべてが完結。

 お次は“目”で味わいましょう。 視覚であなたを刺激する映像2枚! まずは、映像DISC.1。制作時の空気を60分に凝縮したドキュメンタリー映像。この時期のボスの息吹を、まなざしを映像で堪能できることですでにありがたいのだが、やはりボスとバンドの関係性を味わえる人間ドラマには熱いものが込み上げる。ここまでくればすでに立派な映画作品のようだ。

 極めつけは映像DISC.2(DVDではDISC.2&3)。完全未発表だった〈ザ・リバー・ツアー〉が遂に映像化。 1980年11月5日アリゾナのTempeでのショーより24曲。更に、様々な場所でのライヴ映像や貴重なリハーサルシーンも収録されており、てんこ盛りでお腹いっぱい!

 最高すぎる内容に、週末の予定は全部キャンセルするしかなくなるのである。