SAX A GO GO
〈ファンク〉が重要なキーワードだった年? そうやって理屈っぽい話にしなくても、こういう音楽ってそもそも無条件にポップで、圧倒的に楽しいものなのよ……と言わんばかりのフラー・イーストが2015年をファンキーに締め括る!
2014年末に全米リリースされ、2015年を象徴する世界的なヒットとなったマーク・ロンソン&ブルーノ・マーズの“Uptown Funk”だが、実はUKでは別アーティストの歌で先にヒットしていたことをご存知だろうか。そのアーティストこそ、このフラー・イーストだ。彼女が「The X Factor」の番組中でパフォーマンスした同曲のヴァージョンがiTunesチャートを独走した結果、本家のUKリリースが前倒しされる事態を引き起こしたのだという(結果的にはマーク初の全英No.1に)。番組のほうでは残念ながら準優勝に終わったフラーだが、そこで大きな話題と支持を集めた結果、2015年にサイコ経由でメジャー契約をゲット。先行シングル“Sax”の全英3位という幸先のいいヒットを経て、こうしてファースト・アルバムが完成を見たのである。
ただ、現在28歳の彼女はまっさらの新人というわけではなく、実は同じ「The X Factor」のシェイン・ワードらを輩出した第2シリーズ(2005年)に、アディクティヴ・レディーズなるティーン・グループとして出演していたのだ。ソロ転向後はストリクトリー・リズムからデビューし、DJフレッシュやドラムサウンド&ベースライン・スミスとのコラボにも名を刻んでいた。いまそれらを聴き返すと、ウォブリーなエレクトロニクスに挑む歌唱ももちろん魅力的だが、今回のファースト・アルバム『Love, Sax & Flashbacks』はオーガニック&ファンキーなライヴ・サウンドで彼女の肉感的な快活さを存分に引き出していると言えるだろう。
プロデュースを担ったのはエレクトリックやTMS、フレイザーT・スミスらUKメインストリームに欠かせない要人たち。いずれもホーン・セクションを強調して、シック風味やモロなJBノリ、ミネアポリス調、初期ワム!やらナラダやらを連想させる多種多様なファンクネスを仕込み、主役の弾けんばかりに明るい歌唱を健康的にムチムチと輝かせている。そこに彩りを添えた辣腕ポップ&オークや注目のイアン・カークパトリックの手捌きも強気で、オークがジャクソン5“Dancing Machine”を刻んで敷いた“Kitchen”なんて、グウの音も出ないほどのカッコ良さだ。ボートラには“Uptown Funk”とアリシア・キーズ“Girl On Fire”(デラックス版のみ)のカヴァーも収録。総じて、まるで80年代のブラコンやフュージョンのレコードみたいな色味が眩しいジャケそのままに、何だか気分が無性にアガる快作となっている。年の暮れと年明けに爆音で聴きたい感じ!