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亡き師と愛する友に捧げた、美しくも激しいレクイエム

 2008年のセロニアス・モンク・サクソフォン・コンペティションで優勝して評価を高め、デイヴ・ダグラス(tp)・クインテットから、自己のグループでも着々と頭角を顕しているジョン・イラバゴン(ts,ss)が、自らのレーベル、イラバガスト・レコーズより、2枚同時にアルバムをリリースした。ソロのソプラノ・サックスの実験作『Inaction is An Action』と対をなすストレート・アヘッド作品が、本アルバムだ。

 ルイス・ペルドモ(p)、中村恭士(b)、ルディ・ロイストン(ds)のレギュラー・クァルテットに、3曲ヴェテランのトム・ハレル(tp)が参加している。

JON IRABAGON BEHIND THE SKY Irabbagast Records(2015)

 本作は、イラバゴンの師と、愛する友を失った哀しみと、その人生を讃美する曲で構成され、内省的なチューンと、アグレッシヴ・チューンが混在する。トム・ハレル(tp)をフィーチャーした《Still Water》、《Eternal Springs》、《Obelisk》では、激しく2管が絡み合い、ルディ・ロイストン(ds)の激しいプッシュで、グループの表現領域を拡大している。ルイス・ペルドモ(p)とソプラノ・サックスでのデュオの《Lost Ship At The Edge of The Sea》は、イラバゴンのリリシズムがほとばしる美しい対話だ。今やニューヨークのファースト・コール・ベーシストとなった中村恭士は、全編を彩るインタープレイを、どっしりと低音から支えている。アルバムは、イラバゴン自らが、テナーとソプラノの2管を操るタイトル曲で、エンディングへと到達する。

 アルバム・リリース直前にジョン・イラバゴンは、デトロイト・ジャズ・フェスティヴァルの最終日に、インティメイトなピラミッド・ステージに登場した。ルイス・ペルドモ(p)に替わりキューバ出身の気鋭のピアニスト、マニュエル・ヴァレラを擁したクァルテットは、フェスティヴァルのエンディングへ向かうプレリュードを奏で、大きな拍手に包まれた。