Photo by Philip ‘Birks’

Resonance Records
ナウ&ゼン――プロデューサーが語るロサンゼルスのジャズ・レーベルが届けるお宝発掘音源の魅力

 ウェス・モンゴメリー、ビル・エヴァンス、ジョン・コルトレーン等ジャズ・レジェンズの未発表音源のリリースでにわかにジャズ・ファンの間で人気が高まっている米西海岸の非営利ジャズ・レーベル、レゾナンス・レコード。その副社長であり、プロデューサーでもあるゼヴ・フェルドマン氏が来日し、その魅力を語ってくれた。

 この1月にスタン・ゲッツ・カルテットの76年の2種のキーストン・コーナー発掘音源ライヴ作『ゲッツ/ジルベルト’76』、『モーメンツ・イン・タイム』をリリース、そのうち前者はジョアン・ジルベルトが参加した『ゲッツ/ジルベルト』の70年代版ともいえる貴重なものだ。

 「サンフランシスコのジャズ・クラブ、キーストン・コーナーで1976年5月11日から16日までに行われた一日2~3セットのすべての収録が行われており、音源はそこから厳選したトラックになっている。セットは最初の45分はスタン・ゲッツ・カルテットでのインストゥルメンタルでの演奏、その後ジョアンがステージに加わり演奏し、毎日レパートリーは少しづつ変えていた。これらはクラブのオーナーであったトッド・バルカンのアーカイヴの音源で、発売を実現するためにトッドと信頼関係を得るまで時間はかかったけど、結果としてとても貴重なものを世に出せたと思っているよ」

 このゲッツ関連のCDの直前にはブルーノートでの一連のリーダー作で知られるオルガン奏者ラリー・ヤングの未発表音源ばかりの『イン・パリ』もリリース済み。

 「これはラリーがまだパリにいた頃でNYに戻る直前の録音だね。フランス文化庁のINAとのコラボレーションで実現したもの。今後もこのリレーションシップは継続し、2017年にウェス・モンゴメリーの『ライヴ・イン・パリ』のリリースの予定があるよ。実はジョン・コルトレーンがラリー・ヤングと共演した音源が残っているという情報もある。現在ではどこにあるかはわからないけど、関係者の協力を得て探しているところだ」

 ラリー・ヤング『イン・パリ』のミニ・ドキュメンタリー

 夢のようなレア音源のリリースが続くレゾナンス・レコード。フェルドマン氏の口からは今後のさらなる予定が飛び出してきた。

 「この2月にはサド・ジョーンズ/メル・ルイス・オーケストラの1966年の2月7日、3月21日に行われたライヴを。現レゾナンス・レコードのオーナーであるジョージ・クラビンが19歳の時にヴィレッジ・ヴァンガードで録音したものなんだ。かつて音質の悪いブートレグ盤で出ていた音源があったが、今回は最高の音質で未発表音源を含む初の公式リリースになるよ。また3月か4月には、サラ・ヴォーンの『ライヴ・アット・ロージズ』という未発表ライヴのリリース予定もある。1978年にアメリカのラジオ局でオンエアされた音源だ」

 最後にとっておきの強力リリースの情報を教えてくれた。それはなんとビル・エヴァンス・トリオのヴァーヴ盤『モントルー・ジャズ・フェスティヴァル』のメンバーでのスタジオ録音作品。

 「1968年夏に彼らの欧州ツアー時にMPSの創始者であるハンス・ゲオルク・ブルーナシュワーのプライヴェート・スタジオでレコーディングされていたもので2枚組みの完全未発表作品になるよ。3年前にMPSの関係者から教えてもらった時は、もう頭が爆発しそうになったよ(笑)。ある意味ビル・エヴァンスのディスコグラフィを塗り替えてしまうようなものになるので、これはじっくり時間をかけて取り組んできた。すでにLP用に45分の音源をブルーナシュワー自身が選曲したものがあり、今回はそれをCD1に入れ、その他にレコーディングしていたものをCD2に入れた。ブックレットには僕が行ったエディ・ゴメスやジャック・ディジョネットのインタビューも入っている。2012年に『トップ・オブ・ザ・ゲイト』という完全未発表ライヴ盤を出したことがあったけど、それを超えるビッグ・リリースになると思う。楽しみにしていてほしい」