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ミュートマスがヴァイタルな大人の男になるまで

 90年代後半にCCMシーンで活躍したアーススーツから、枝分かれする形で産声を上げたミュートマス。2002年の結成当初は〈DJシャドウビョークをヒントにエレクトロニカを作ってみよう!〉という、ポールとダレン・キング(ドラムス)のお遊びユニットだったとか。そこから徐々にメンバーが増え、地元のニューオーリンズを中心にライヴ活動をスタート。そして2007年、バンドに大きな転機が訪れます。2005年に自主で発表した初作『Mutemath』がワーナー経由で再リリースされ、また同時期には映画「トランスフォーマー」の挿入歌を担当することに。〈ポリスmeetsレディオヘッド〉とも評されてきた彼らのサウンドはたちまち広まり、大ヒット映画「トワイライト~初恋~」のサントラ参加も追い風に、2009年には2作目『Armistice』を完成。この頃のミュートマスは、前作でも垣間見られた80s志向をより突き進み、『Vitals』に通じるようなイイ意味での軽薄さを纏いながら、〈US版ミュージック〉な匂いを漂わせていましたっけ。

2009年作『Armistice』収録曲“Backfire”

 

 しかしリード・ギタリストの脱退を経て登場した2011年の4作目『Odd Soul』では、意外にもシンプルかつハード・エッジなロックンロールへシフト。シンセの音を控えめにし、グランジオルタナ感覚でクリームやザ・フーを解釈したようなプロダクションが、ファンの間で物議を醸すことになります。30セカンズ・トゥ・マーズインキュバスリンキン・パーク……と、当時ツアーを共にしていたグループの顔ぶれからも、スタイルの変化は窺い知れるでしょうか。

2011年作『Odd Soul』収録曲“Blood Pressure”

 

 このバンドにとって異色の『Odd Soul』を最後にワーナーと別離。メンバーも入れ替わり、何だかんだで5年もブランクが空いてしまいましたが、ふたたび得意の煌びやかな80sモードに突入したミュートマス。〈これを待っていた!〉という声が早くも各所で上がっていることは、言うまでもありませんよね。 *山西絵美