キャンパスレコード45周年 音楽から見た沖縄の歴史
沖縄の音楽界はかなり独特で、普通に流通する音楽の他に、県内だけで流通する“地域インディーズ”とでもいうべきマーケットが存在する。なかでも民謡は、今でも毎年新曲が発表されるし、うたの世界に魅せられて島外から飛び込んでいく人も少なくない。
そんな沖縄民謡界の縁の下の力持ちというべきなのが、かつて「コザ」の名で愛された沖縄市のキャンパスレコード社長、備瀬善勝氏。通称ビセカツ。これまで数多くの民謡レコードをプロデュースし、時には作詞を手がけることもあるビセカツ氏は、沖縄民謡、さらには沖縄の音楽に関わる人の誰もが知る存在であり、音楽から見た沖縄文化の“生きるアーカイヴ”だ。
そのキャンパスレコードが設立45周年を迎えるという。その節目を見逃さなかったのが、東京で沖縄民謡のリリースを積極的に続けているリスペクト・レコード。(ちなみにリスペクトも設立20周年記念盤を昨年リリースした)。キャンパスレコードの歩みをまとめた45周年記念アルバムをリリースする運びとなった。
「選んだのはどれもよく売れたものですね。1曲目の《ちんぬくじゅうしぃ》はRBCレコードで歴代一番売れたレコードですし。でも、入れたい曲はまだまだあります。もう一度選曲してくれといわれたら、全く違う選曲になるでしょう」
まさに沖縄民謡界の旗頭、ともいえるキャンパスレコードだが、始めるきっかけは全く違うジャンルにあったという。
「沖縄民謡に深く関わった竹中労さんが、復帰前にアングラ・フォークなどのレコードを持ち込んだんです。それを販売することになったのがきっかけですね。その後、民謡を入れた8トラックのカセットからカセットテープへ……沖縄はね、LPよりもカセットの方が売れたんです。あとシングル盤。これはジュークボックスがものすごく普及していたのでずいぶん売れました」
さらに、その拠点が芸能熱が高い場所として知られるコザを含むこのエリアであることも重要だ。
「那覇だと古典音楽はいたけど、民謡やフォークはなかったんです。(唄者の)大工哲弘さんも、那覇では三味線で遊べないからといって、コザまで遊びに来ました。戦後の民謡の中心はコザの、それも園田のあたり。その他はみんな基地でしたからからね」
ここから先は、話がどんどん脱線していくので割愛。そう、ビセカツ氏の話はドンドン拡がっていくのが常で、それがまた面白い。興味ある方は是非コザへお出かけを。ともあれ、沖縄民謡とキャンパスレコードのさらなる発展を望みつつ、45年の歴史を音でたどってみたいものだ。