
GOING UNDER GROUND(以下、GUG)の2年半ぶり、3人編成になって初のアルバム『Out Of Blue』は、何者をも恐れぬ正真正銘のロックンロール作品だ。バンド・サウンドは威風堂々と力強く、フロントマン・松本素生の歌声は雲一つない青空のように澄み渡っている。リード・シングル“the band”と同様のパンキッシュな疾走感が全編を貫いていると共に、キャリア20年を誇るバンドならではのふくよかなグルーヴが気持ち良い。つまり『Out Of Blue』は、長年GUGを愛聴してきたファンのみならず、これまで彼らに触れることのなかったリスナーが聴いても〈フレッシュだね〉〈カッコイイね〉と親指が立つアルバムになっているはずだ。今作が、多くの新しい出会いをもたらすことは間違いない。
その後押しをすべく、Mikikiでは、松本に若いミュージシャンとの鼎談を提案してみた。そこで彼が希望したのは、8月にリリースしたニュー・シングル“マイガール”が話題のシャムキャッツ、そして5月にセカンド・アルバム『SALE OF BROKEN DREAMS』を発表し、先日行われた〈フジロック〉のライヴも好評だったHomecomings。ここでは、シャムキャッツから夏目知幸(ヴォーカル/ギター)、Homecomingsから畳野彩加(ヴォーカル/ギター)、福富優樹(ギター)の3人を招いて、和やかな雰囲気のなか取材が行われた。
★GOING UNDER GROUND“the band”のインタヴュー
★シャムキャッツ“マイガール” に合わせての、KIRINJI堀込高樹との鼎談
★Homecomings『SALE OF BROKEN DREAMS』のインタヴュー
シャムキャッツとホムカミに出会って、自分たちは遅れてるなと思った(松本)
――まず松本さんがなぜこの2バンドと話したいと思ったのかを教えてください。
松本素生(GOING UNDER GROUND)「俺は家が近いのもあり、よくCOCONUTS DISKの吉祥寺店に行っているんですよ。あそこはインディーのバンドをいろいろとリコメンドしているじゃないですか。そこでシャムキャッツとHomecomingsに出会ったんです」
――それぞれどの作品から聴かれていますか?
松本「シャムキャッツは『たからじま』(2012年)、ホムカミは“I WANT YOU BACK”(2014年)の7インチを買ったのがきっかけかな。そのあと京都のMETROに行ったときに福富くんが来ていて、〈Homecomingsというバンドをやってるんです〉と7インチをくれたんですけど、〈俺もう買ったよ〉と」
福富優樹(Homecomings)「そこで、〈え!?〉って(笑)」
松本「夏目くんとは最寄りの駅が一緒みたいで、電車でよく見かけて〈あ、夏目くんだ!〉と思ってました。でも面識がないし〈僕バンドやってて……〉といきなり言うのも変だなと思って、ずっと声をかけられずにいた(笑)。今日が初対面なんですよ」
夏目知幸(シャムキャッツ)「ハハハハ(笑)! 僕もまったく一緒で、いつも電車で〈松本さんだ!〉と思っていたんですよ」
――両バンドの音源を聴いたときには、どんな印象を持たれましたか?
松本「俺は2組とも絶対に自分と似ているところがあると思ったんです。ハモれるところがあるなって。俺らがずっといた場所はもうちょっとJ-Rock寄りみたいな、いわゆるメジャーの土俵――例えばちょうど今日〈ROCK IN JAPAN〉に出たんですけど、シャムキャッツもホムカミも、ああいうところに来るお客さんに向けた音楽とは別のところでやっている感じがして、すごく自由だなと思ったし、羨ましさを感じた。もし学校のクラスにそういう人がいたら、俺もそっちに混ざりたいと思える存在」

――松本さんが彼らのそうした点に魅力を感じたということは、いわゆるJ-Rock的なカルチャーに居心地の悪さを感じている面もあったのでしょうか?
松本「(キッパリと)あった! それはいまでも……いやデビューしてからずっと思っていて。自分が好きな場所とはちょっと様子が違うな、音楽を本当に好きな人がバンドを聴いてくれているのかな、と思っていました。ちょっとおごりがあるように見えるかもしれないけど、音楽が好きな人に〈良いじゃん〉と言ってもらいたかったんです。だから、そことはちょっと違うところに行っているなというのを認識しつつの、この15年だった。そうしたなかで、この2組みたいなバンドに出会って、自分たちは遅れてるなと思っちゃったんだよね」
一同「へー!」
――3人から見て、松本さんがJ-Rockのシーンやカルチャーに居心地の悪さを感じていたというのは意外なことでした? それとも納得できること?
夏目「僕はめちゃくちゃ納得です。自分は高校生のときに、GUGの『かよわきエナジー』(2001年)や『ホーム』(2002年)をリアルタイムで聴いていたんです。高校1年生の冬にスノーボードに行ったんですけど、スキー場に向かう深夜バスのなかでも、ウォークマンでGUGを聴いていた。自分の恋や反抗心などのヒリヒリとした気持ちとGUGの音楽が描く傷口みたいなものが合わさっていて、自分の青春と完全にシンクロしていたんですね。別にJ-Rockという括りで聴いていたわけじゃなくて、自分がグッとくる音楽の1つとして好きでした。だから自分のリスナーとしての経験から、いま松本さんが言っていたことはすごく納得できたし、〈こんなに正直に言えるのか!〉とちょっとビックリしたくらい」
松本「でも本当のことだからね(笑)。夏目くんが聴いてくれたのはファースト~セカンド・アルバムの頃ですよね。(GUG)が超良いときです」
一同「ハハハ(笑)!」
――松本さんがその頃のGUGを〈超良い〉と断言できるのは、どういうポイントからですか?
松本「当時の俺らは、なんだかわからない反骨精神に溢れていたんですよね。デビューする前後はまだ景気も良くて、下北沢のシーンみたいなものがあった。自分たちはそこに完全に属せてないという感じもありつつ、属してたまるかと思っていたんです。みんなと同じことをやってもおもしろくないじゃんという気持ちが初期の作品には反映されている。『かよわきエナジー』『ホーム』『ハートビート』の頭3作は特にそうですね。それ以降はもうちょっとプロっぽくなっていったというか、やっぱり技術を覚えちゃって、手癖で鳴らしていた瞬間もあったと思う。シャムキャッツやホムカミを聴いたのは、その真っ盛り(の時期)でしたね。彼らを聴いたときに、いまのままだと恥ずかしくて〈好きだ〉と伝えられないな、と思ったんですよ。夏目くんに〈俺、シャムキャッツが好きなんですよ〉と堂々と言えるようにならないといけないと考えた」
夏目「えー! そんなことを言われるとは(笑)。バンドのメンバーにいますぐ伝えたいですね」
私たちにとってはいちばん影響が大きい存在なんです(畳野)
――Homecomingsの2人は、夏目さんより年齢が一回り下だと思うんですけど、GOING UNDER GROUNDとの出会いは?
福富「『ホーム』が出たのは僕らが小4くらいの頃なんですよね。僕が最初に聴いたのは、小6のときに〈Mステ〉で“トワイライト”を歌っていたのを観て、当時の僕にGUGやスピッツ、アジカンが刺さったんです。それが音楽を好きになったきっかけであり、ずっと自分の軸にもなっていて」
畳野彩加(Homecomings)「私は福富から教えてもらったんですよ。高1くらいまでは本当に音楽に興味がなくて、ただのアイドル・ファンかつ女子バレー部の一員で(笑)。高1のときに福富と同じクラスになって、そのときに彼がバンドをやっているという話を聞いて、〈へー〉と思ったんです」
福富「クラスでライヴのチケットを配ると、彩加さんが観に来てくれて、そこでバンドって素敵!となったらしく(笑)。なんか入口になるものを貸してくれと言われたので、GUGが入ったMDを作ってあげたんです」
畳野「そこでGUGを聴いて、〈こんなんあるんだ!〉と思ったんですよ。バンド・サウンド自体がすごく新鮮で、それまでなんとなく聴いてきた音楽が違う聴き方になった。歌詞を聴いたり、曲の流れに意識が行ったり、ちゃんと音楽を聴くきっかけになった存在なんです」
松本「それは嬉しいですね。ちゃんとやってて良かったと思うし、その反面、もっとちゃんとやれたはずだという俺もいるんですよ」
畳野「私たちにとってはいちばん影響が大きい存在なんです」
福富「いまだにツアーに行くときも、僕が作ったGUGベストを車で聴きながら行ってますからね。盲目的なファンですよ(笑)」
――そのなかでもHomecomingsの2人が特に好きな作品は?
福富「うーん、僕は『ホーム』がいちばんですかね。ちょっと暗いアルバムなんですけど」
松本「クソ暗い作品だよね。音も変だし」
福富「こもった感じの音ですよね。でもその感覚にグッとくるというか」
夏目「“夜の宝石”みたいな、ドラムがほとんど聴こえないような曲もありますよね。スネアがすごく遠くて」
松本「俺の立場で言うなら『ホーム』を良いと言ってくれる人とは絶対に友達になれるんです」
一同「ハハハ(笑)!」
松本「それは絶対あります。〈『ハートビート』が最高でしょ〉と言われると、〈そっか、なるほど〉って(笑)」
――畳野さんは特に好きな作品と言えばどれですか? ここで『ハートビート』とは言いにくいですけど(笑)。
畳野「いや、私も福富と被っちゃうんですけど、『ホーム』ですね。時期によっていろいろ変わるんですけど、結局戻ってきちゃうのが『ホーム』なんですよね」
松本「『ホーム』を出したときにズッコケたんですよ」
夏目「えー!? めちゃめちゃ良いのに!」
松本「セールス的にもそうなんだけど、俺ら自体も半信半疑で、〈わからないんだけどこれが出来ちゃったんだよね〉みたいなノリだったしね。だから俺らのなかでも、次はちゃんと広がるアルバムを作ってみようとしたのが、次の『ハートビート』だったんです。俺らはいったんそこで終わっちゃっているんですよ。GOING UNDER GROUNDというものは1~3枚目で完結していて、そこから先は模索し続けてきた」
福富「確かに『h.o.p.s.』(2005年)からちょっと違いますよね。盲目的なファンからすると3作目までが一つの物語で、そこから変わっていく流れだった」
松本「ブルーハーツの歴史と一緒ですよ。一応好きではいるけど、初期の3枚には敵わないでしょ、と言われるような。俺らはそういうバンドだったと思う」
――その期間を10年以上続けてこられたわけですよね。
松本「いやー、もうキツかったっすよ(笑)」
一同「ハハハ(笑)!」
松本「そのなかでメンバーが2人抜けちゃいましたからね」
実は俺がバンドを抜けようと思ってたんです(松本)
――皆さんがリスナーとしてずっとGOING UNDER GROUNDを追ってきたなかで、松本さんのキツさみたいなのは察していましたか?
福富「うーん、『おやすみモンスター』(2007年)以降の作品からは感じてたかもしれませんね。次の『LUCKY STAR』(2009年)はジャケで〈アレ?〉となったところもあって」
松本「あー、ペンタゴンのジャケね」
福富「さらにメンバー(伊藤洋一/キーボード)が抜けるというので、〈アレ?〉と。レーベルもビクターじゃなくなり、どうなるんやろと思ってました。でも『Out Of Blue』の1つ前にインディーで出した『ひとりぼっちになる日のために』(2014年)は、ジャケも含めてちょっと戻ってきた感があったんですよ」
松本「うーん、でも苦しかったね(笑)。結局苦しいアルバムでしかなかったなと思う。ドラム(河野丈洋)が抜ける直前に制作した作品で、どうにかGOING UNDER GROUNDというバンドの形であろうとして作っているから、結局ものすごく小さいものだったし、〈もうダメだ!〉というアルバムなんですよね」
――『ひとりぼっちになる日のために』の制作時に、河野さんが抜けることは決まってたんですか?
松本「いや、俺が抜けようと思ってたんですよ」
一同「えー!!」
松本「もうこのバンドはダメだなと思っていたし、潮時だと感じていました。そんななかドラムが抜けることになったんです。俺と(ドラム)の丈さんとでは音楽性がまったく違っていて、その軋轢が良かったのが初期3作だったんですけど、次第にどうにもならないくらい開いていって、『ひとりぼっちになる日のために』はもうバンドの作り方ではなかったんですよ。もっと合理的な作業だった。でも俺は結局バンドが好きだから、ちゃんと作りたいわけじゃないんだよな、と思っていたんです。音源の隙間から聴こえてくる良いほころびこそが、いちばん聴き手に引っ掛かるところなのに、それを整理する作業をやっていて、何の意味があるの?と思っていた。そんななかでドラムが抜けることになって。その前から俺は解散しようと思っていたけど、3人になれば俺が完全に旗振りだから、じゃあ好きなようにできるんじゃない、と思ったのが始まりでしたね」
夏目「よく〈音楽性の違い〉というけど、例えばジャズが好きな人とロックが好きな人でも一緒に音楽はできると思うんですよ。要するに音楽のどんなところをいちばんキラキラさせたいかと思うかですよね」
松本「そうそう。だから(ビーチ・ボーイズの)『Pet Sounds』(66年)を作りたい人と、いやビートルズの『Please Please Me』(63年)こそが最高でしょと思う人では絶対に違ってくるじゃないですか。俺は後者で、演奏や歌がクソだろうがめちゃめちゃ良いなと思えるものをやりたい人。いまのインディー・バンドに感じた魅力もそうなんです。ピッチとか全然合ってないけど、めっちゃ良いじゃんって。俺はそれをおもしろいと思うし、それをおもしろいと思う人にGUGを聴かせたいんです」
――『Out Of Blue』は、いま松本さんが言われたインディー・シーンを好んでいるようなリスナーにも聴かれるべき作品だと思います。3人の感想はいかがでしたか?
福富「僕はもう客観視できない面があるんですけど、このアルバムでもう1回勝負しに行ったんだと思いました。今回またビクターからリリースするのも、熱心なファンにとっては、またドラマが動き出した感じがするんです。(リード・シングルの)“the band”でもそうでしたけど、歌詞が意思表明にしか思えないんですよね。1曲目に収録された“Teenage Last”の〈途切れた青の向こうへ〉という歌詞とかもう……。バンドのストーリーを踏まえて聴いてしまう」
――GOING UNDER GROUNDというバンドの〈青春の終わり〉を告げる作品になっていますよね。
松本「そうですね。だからこそ、それでもロックはできる、こんなにも自由にやれるんだというのを提示しないと、もうお天道さまの下を歩けないなと思ったんですよ。いまの若いインディー・バンドをたくさん聴いて、こんなに才能ある人がいっぱいいるのか!とも思ったけど、そこでそっちに寄せていくというのは、まったく話が違いますよね。まず自分たちがいちばん良いと思うことをやっているバンドでありたいなと考えた」
――おもしろいのは、若いバンドに刺激を受けているにもかかわらず、決して回春を狙ったわけではない。むしろタイトルが象徴するように青の時代の先へ向かったということなんですよね。
松本「あー、だからシャムキャッツやホムカミ、スカート、ミツメなんかを聴いたときに、自分たちがもう若くないことを知ったんですよね。だったらもう本気出して自分の音楽をちゃんとやらないと、バンドの良さってこういうもんでしょというのを体現できないと思った。じゃあ、それを体現するために、シャムキャッツにもホムカミにも似ないような形で、自分たちの音楽をどうやっていけるだろう、というのはものすごく考えた」
――そのなかで松本さんが見つけGUGらしさというのは、どんなものだったんですか?
松本「実は何もそんなにできなかった、ということなんだと思うな。いっぱい音楽を聴いてきたから、いろいろできると思っていたけど、最初から本当に好きなものは決まっていて、実際にそれしかできなかった。じゃあ、それしかできないんだったら腹を括ってその最良のものをやろうと向かったんです」
『Out Of Blue』を聴いて、これをやられたらもう勝てないなと思った(夏目)
――畳野さんは『Out Of Blue』を聴いてどんな感想を持たれました?
畳野「いま素生さんが、もう若くないと言っていたじゃないですか。それをすごく良い意味で感じるアルバムだと思いました」
松本「俺もそういうふうに思ってほしかったんですよ。このバンドは良い歳の取り方したんだなって」
畳野「この間の〈やついフェス2016〉で、私はGUGのライヴを初めて観たんですけど、もう最初から涙が溢れ出てしまって。あまりライヴで泣いたりしないのに、昔の曲も新作の曲でもずっと泣いていて。もう顔がグチャグチャだったんですよ」
福富「僕らの出番の直前でリハに行かなきゃいけなかったんですけど、そしたら“ランブル”が演奏されて」

畳野「もう大泣きしてね。そのあとライヴをしたんです」
松本「良いねえ。GUGに関しては、GUGを心底好きだと思ってくれている人と俺が〈この曲は良いんすよ〉と思うものは外れてないんですよ。だけど、J-Rockのフェスなんかで〈GUG好きなんすよー〉と寄ってくる人の感覚は俺となぜかズレてるんですよね(笑)」
――夏目さんは『Out Of Blue』を聴いてどう思われました?
夏目「音楽的に豊かにしようとすると、楽器ごとの音符を合せないというやり方があるじゃないですか。でもこのアルバムでは、むしろ合わせてきている。だからこそ、すごく強いんですよね。さっき若くないとおっしゃっていましたけど、僕はそれを逆手にとって強みにしているというか、ヴェテランならではの敵わなさを感じました。これをやられたらもう勝てないなと。それを意識的にやったのかが気になったんですよね」
松本「意識的に……やりましたね。キャリアもあるけど、俺らはこれだけなんだぜということを伝えようとした。それが良いことだと思ったんですよ」
夏目「そこに超グッときたんですよ」
松本「〈お前はどうなんだ?〉という問いを投げかけているつもりでもあって。俺はこういうふうにやったから、お前はどうやるんだ?って。じゃあ俺はこうするという反応があれば、それが場をおもしろくしていくので。このアルバムに関しては、これからどんな評価をされるかわからないですけど、そんなのどうでもいいなと思えるんです。これまではもっとセールスや評価がどんなものだろうかと、ヤキモキしてたんですよ。でも、今回はこれを作れたから、次はもっとやれるという喜びや充実感のほうが大きい」

夏目「最高ですね。あとちょっと職業病でもあるんですけど、気になったのは2曲目以降からヴォーカルとドラムの鳴りを変化させているところで」
松本「そうですね。そこは重要かもしれない」
夏目「こういう方法もアリなんだ、すごいなーと耳を惹かれたんです。僕のなかだと曽我部(恵一)さんが『超越的漫画』(2013年)でやっていた感じ――ヴォーカルとドラムにコンプをかけて、バンドっぽくするのに近い気がした」
松本「いま曽我部さんの『超越的漫画』を出してくれたから言うと、あれを聴いたときに〈やっぱこれじゃん〉と思ったんですよ。ロックンロールはこういうことなんだなって。あのアルバムは、なんだかわかんない曲もいっぱい入ってるし、録り方にも違和感がいっぱいあるけど、それが媚びてないというか〈わかってたまるか〉みたいな意志を感じた。俺は〈お前らなんかにわかってたまるか〉と言われているようなレコードが好きなんですよね」
夏目「そうそう、『Out Of Blue』も媚びてないと思ったし、何も気を遣ってないなと思ったんですよ。僕が『かよわきエナジー』と『ホーム』に感じていたヒリヒリしたものに近いなと。『ハートビート』はちょっと気を遣っている感じがしたんですよね」
松本「最初の頃はわかってくれる人なんていないと思っていたからね。でも『ハートビート』がちょっと売れたから、〈あ、わかってくれたじゃん〉となったんだよ。迷い出したのはそこからなんだよね。いまは、もはやどう思われてもいい」
いまは音楽が最高に楽しい。そこに立ち戻るための15年間だったな(松本)
夏目「僕は初期の“アロー”という曲がめちゃくちゃ好きなんですよ」
福富「僕もめっちゃ好き。インディー時代の最後のシングルですよね」
夏目「そういうのも知ってるんだ!」
福富「僕、バンドマンのなかでは日本で1、2を争うくらいのGUGのファンだと思いますよ(笑)。『Cello』※(98年)も持ってるし」
※GOING UNDER GROUNDのインディー時代の初ミニ・アルバム。すでに廃盤となっており、オークションでは高値で取り引きされている
夏目「その“アロー”感が新作にはあったんですよね。気持ちがそのままメロディーになっている気がしたというか。そうそう、高校のときに“アロー”が大好きな友達がいて、“ミラージュ”が出たときも、そいつと2人だけで、めちゃめちゃ良いと盛り上がったんです。で、クラスの誰もそれに付いてこないと(笑)」
松本「俺らはそういうバンドなんですよ(笑)。俺はやっぱり渋谷系をギリギリ通っているから、そのバンド・ブームみたいなのとは別の、クラスで言えばど真ん中のノリノリじゃないところのほうが、おもしろい奴がいっぱいいることをどこかで信じているんですよね」
福富「わかります。中3のときに“STAND BY ME”が給食の時間の校内放送でかかったんですけど、僕は〈ふざけんな!〉と思ったんですよ(笑)。僕の大好きなGUGを、ちょっとCMに使われたからって流行ものみたいにすんなよ!って」
松本「“STAND BY ME”の頃はやっぱりセルアウト期なんだよね(笑)。これ言うと怒られると思うんですけど、〈三ツ矢サイダーのコンペがあるからやりましょう〉とレコード会社の人たちがすごく盛り上がっていたんです。で、リハスタに行くと人がわんさかいて、なんでこんなに人がいるんだろうと思ったら、〈今日コンペの曲をみんなに聴かせる日だよ〉と言われて……俺はその日を完全に忘れていたんですね(笑)」
一同「ハハハ(笑)!」
松本「そのときは、そんなのどうでも良かったからね。もう音楽で食えてるし、好きなレコードも買えるし、毎日がパーティーみたいな気持ちでいて、すっかり忘れていたんです。そこでマジかよ……と思ったんですけど、〈作ってきたんでしょ?〉と言われたから〈はい、もちろん作ってきました〉と。いよいよヤバイぞと思いながら、すぐトイレに入った。ギターを持っていくと怪しまれちゃうから、個室の中で頭抱えて考えて。俺はその場さえやりすごせたら良かったから、鼻歌で適当に歌いながら〈ハートの奥に降る雨 抱いて僕らは旅に出る 涙のち三ツ矢サイダー〉と考えて」
一同「ハハハハ(笑)!」
松本「それをレコード会社の人に聴かせたら〈良い感じだね!〉となったんですよ。でも俺はトイレでギターも持たずに5分で作った曲が、コンペなんかに通るわけがないと思っていたし、そんなことがあったのも忘れていたんだけど、そのあとに電話がかかってきて〈コンペで受かったぞ〉と(笑)。そこでシングルも出すと。でも15秒尺しかないし、なにしろ気持ちも入ってないから、これどうするよ……と、とにかく大急ぎで作ったんですよ。だから制作したときは、いっさい思い入れがなくて」
福富「いやー、衝撃的なエピソードですよ。それでも好きな曲だということに変わりはないけど」
松本「いまはもう別の思い入れができているけど、そのときは詐欺師の気持ちだよね(笑)。たまにファンの人から手紙をもらうこともあるんですよ。〈昔の作品を否定しないでください〉って(笑)。そう言われても、まあ知らねえよって思うし、自分の作ったものだから自分がいちばんわかってるじゃないですか。まあいろいろありますよね。この曲嫌いだな、もうやりたくないなとか。嫌いな曲は100曲くらいありますよ(笑)」
一同「そんなに(笑)!」
福富「例えばどのあたりの曲になるんですか?」
松本「『おやすみモンスター』以降の曲はそうかもしれないですね。『おやすみモンスター』の曲は好きだからいまもライヴで演奏しているけど、それ以降の『LUCKY STAR』や、ポニーキャニオンから出したアルバムからは全然やってないもんね。“LISTEN TO THE STEREO!!”くらいじゃないかな。いまも、まだそのあたりの時期は冷静に振り返ることができないんですよ。辛い思い出しかないから」
――その一方で、いまのGUGは〈全肯定〉という言葉がキーワードになっていると“the band”時のインタヴューでおっしゃっていましたよね。
松本「さっき“アロー”という曲を夏目くんが出してくれましたけど、あの曲を作ったときは金もないし友達もいない。東京に出てきたけど、貧乏でレコードも買えないし、何も持ってない状態だったんですよ。日々の生活を悶々とやりすごしていた。そんなときでも音楽を作れば〈これこそ良いじゃん!〉という感覚になれたんです。街を歩いている嫌いな奴のことも、そういう奴がいてもいいよなと思えた。だから、俺の〈全肯定〉とは、〈みんなオッケーよ!〉という全肯定よりは、もうちょっと〈そういうこともあるもんな〉と、受け入れていく感じに近い。ライヴもそうだと思うんです。踊っている奴もいれば踊ってない奴もいる。後ろの隅っこで壁に寄り添って聴いている奴もいる。だから、みんなが同じダンスを踊らなくたっていいでしょ、という〈全肯定〉なんです」
――なるほど。
松本「俺がバンドをやるスタンスもまったく同じで、他の誰かがどう思うかはどうでも良くて、俺はただこれをやりたい。そうして鳴らされている音楽の魅力をシャムキャッツやHomecomingsに見た。それが『Out Of Blue』という作品の糧にもなっていて」
――そうやって松本さんが作り上げたGOING UNDER GROUNDの音楽を、福富くんたちが聴いて、また新たな刺激を受けているわけですからね。
福富「まさにそうですね。これまで〈アレ?〉と思っていた気持ちも、このアルバムで完全に吹き飛んだし」
松本「嬉しいな。いまの俺は絶倫ですよ」
福富「比喩的な意味ですよね(笑)?」
夏目「ストレートな意味だと、いま言う理由がわかんないでしょ(笑)」
松本「ただのイタイおっさんだよね(笑)。いまは音楽をやっていても、聴いていても最高に楽しいんです。やっとその場所に帰ってこられた。そこに立ち戻るための15年間だったな」
