「俺たちの掲げるメッセージは思いきりシンプルだ。〈世界は何もせずに変わっていくことはない。それは君次第だ〉ということだ」(トム・モレロ)。
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(以下RATM)、パブリック・エナミー(以下PE)、そしてサイプレス・ヒルという一時代を築いた大物グループからメンバーが集結し、今年の5月に動きはじめたプロフェッツ・オブ・レイジ。それぞれ確固たる音楽性とコアな支持基盤を持つビッグな個性が合体したのだから、これはもう興奮するしかないだろう。そもそもバンド結成を提案したのはRATMのトム・モレロで、グループ名はPEの“Prophets Of Rage”に由来する。そもそもグループとして活動が停止したままのRATMだが、活動再開も噂されるなかでトムがバンド外の大物に声をかけたのは、緊急性の高いメッセージをよりセンセーショナルに波及させる必要があると思ったからだろう。〈緊急〉とはもちろん、アメリカ大統領選挙に他ならない。彼らのスローガンは〈Make America Rage Again〉。これがドナルド・トランプの掲げる〈Make America Great Again〉に宛てたものであるのは言うまでもないだろう。トランプの大統領候補選出が決定される共和党全国大会の開催を見越して動きはじめたバンドは、新曲“Party's Over”で人々にメッセージを送ることになった。このたびリリースされるのは同曲を冠した『Party's Over EP』というわけである。
「この最高のタイトルは、チャックDが思い付いた。彼が〈“Party's Over”っていう曲の案があるんだけど〉と言った瞬間、〈気に入った!〉って答えたんだよね(笑)。というのも、もともと俺たちは共和党の党大会の外でライヴをやると決めていたから。両方の政党(Party)の基盤となるアイデアもシステムも、根底から、少なくともモラル的観点から終わってると思った」(モレロ)。
「このシステムにうんざりしているってことを知らせる必要があると思ったんだ。投票するならトランプか、そうでなければヒラリー・クリントンなわけだ。そして俺たちはいまそのど真ん中の非常に難しい所を走っている。その両者を信じられないという人たちの声を象徴していると思うんだ。つまり俺たちが言いたいのは、〈行動を起こせ! 政治家が君たちのために何かを変えてくれることなんてないから!〉ってことだ。現時点では幸運なことに、そのメッセージをしっかり受け止めてくれている人がいると思う。そうやって人々が目覚めていくのを見るのは本当に感動的だ」(B・リアル)。
「〈パーティーは終わった〉とはそういう意味だ」(DJロード)。
ヘヴィーなステイトメントを支えるのはヘヴィーなバンド・サウンド。同曲や先述した“Prophets Of Rage”のリメイクでは、痛快なまでにラウドな演奏が、怒りのメッセージに弾けんばかりのパワーを漲らせている。もともとPEやサイプレスへの敬愛を表明し、カヴァーや共演歴もあったRATMだけに、この一体感も頷けようものだ(となるとザック・デ・ラ・ロチャの不在も余計に思い出されるのだが……)。
EPの残りを占めるのはライヴからチョイスされたカヴァー音源だ。PEの“Shut Em Down”とレイジの“Killing In The Name”は頷けるとして、興味深いのは“No Sleep Till Cleveland”の名で収められたビースティ・ボーイズ“No Sleep Till Brooklyn”だろう。これはもちろん故アダム・ヤウクへの敬意の表明だという。
「俺たちがものすごく愛した人だったし、もしここに4つめのバンドが加わるとしたら絶対にビースティだったからね(笑)。それにこの曲はどのライヴでやってもめちゃくちゃ盛り上がる。いつだってハイライトのひとつだからだよ」(モレロ)。
どこに住んでいようが、思想信条や立場がどのようであろうが、行動を促すメッセージは誰にとっても有効なもの。轟音を響かせながら、闘いは続く。
プロフェッツ・オブ・レイジ
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロ(ギター)、ティム・コマーフォード(ベース/ヴォーカル)、ブラッド・ウィルク(ドラムス)、パブリック・エナミーのチャックD(MC)とDJロード(DJ)、サイプレス・ヒルのB・リアル(MC)から成るラップ・メタル・グループ。今年5月にレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのTwitterで結成を発表し、5月31日にLAで初ライヴを行う。6月にはNYの〈Governors Ball〉にサプライズ出演し、7月より全米ツアー〈Make America Rage Again Tour〉をスタートし、同時にパブリック・エナミーのリメイクとなる初音源“Prophets Of Rage”を公開。10月5日にファーストEP『The Party's Over EP』(Caroline/HOSTESS)をリリースする。