思春期の頃、僕が影響を受けたアーティストはこんな感じだ。YMO、フリッパーズ・ギター(と、ソロになった小沢健二とコーネリアス)、スマッシング・パンプキンズ。そして97年頃に登場したバンドたち――具体的には、スーパーカー、くるり、ナンバーガールだ。彼らの登場は新鮮かつ、共感できるものだった。僕がYMOに抱いていた感情を〈崇拝〉、フリッパーズ・ギターに抱いていた感情を〈憧れ〉だとしたら、これらのバンドに抱いていた感情は〈共感〉だったと思う。
当時、僕は高校3年~大学1年。友達とバンドを組んだり、オリジナル曲を作ったりして、自分なりの音楽を模索していた。そんな18歳の僕が当時作っていたのはギター・ポップみたいな感じの音楽だった。そんななか、もうひとつ熱心に聴いていたのはソニック・ユースで、当時の僕にとってはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインよりノイジーで前衛的。特に大好きな曲は“Teenage Riot”だった。8ビートでポップで耽溺性があって、ヒンヤリした雰囲気に惹かれた。18歳の僕は、ギター・ポップのエヴァーグリーンな世界観に、マイブラのギター・ノイズと、スマパン的なオルタナティヴ・ロックの肌触りと、ソニック・ユースのヒンヤリした質感と耽溺性を取り入れた曲を作ろうとしていた。
そんなときにスーパーカー、くるり、ナンバーガールと出会い、彼らの音楽を聴いて、当時僕が何とかやろうと思っていたことを、高度なレヴェルで実現していると感じた。そして先を越されていたことに少し落ち込んだ。なかでもナンバーガールの“omoide in my head”は、はっぴいえんど的な文学性と、90年代後期の虚無感と狂気と、焦燥感とセンティメンタリズムが入り混じっていて、特にヤラれたと思った。まさに現代を切り取った作品だと感じたからだ。
次に衝撃を受けたのは、スーパーカーの“Sunday People”だった。そのとき僕は宅録環境をそれまでのカセットMTRからハードディスクMTR~DAWへと移行させながら試行錯誤していて、“Sunday people”のケミカル・ブラザーズ的なリズム・アプローチと、DAW的なエディット感覚に、またしてもヤラれたと思った。
その後、スーパーカーとくるりはゼロ年代に入ってよりテクノ~クラブ・ミュージックと融合したロックを作ることになるが、僕にとって“Sunday People”は、その萌芽を感じさせる重要な曲なのだった。
というわけで、今回はお終い。
佐藤純一
佐藤純一(FLEET)とs10rwのyuxuki waga、kevin mitsunaga(Leggysalad)という3人のサウンド・プロデューサーと女性ヴォーカリストのtowanaから成るfhánaのリーダー。キーボード/コーラスを担当。最新作“calling”(ランティス)が好評リリース中のなか、年明け1月には新シングル“青空のラプソディ”も登場! その他の動向はオフィシャルサイト〈http://fhana.jp/〉でチェックを!