世界的な演奏家のコラボレーションによる大河ドラマのテーマ曲
2017年の大河ドラマが1月8日からスタートした。今年は『おんな城主 直虎』。後に 「徳川四天王」となる井伊直政を育てた直虎の生涯を描くが、井伊家の人物が主人公となるのは大河第1作以来だ。戦国時代に実在した“女性の城主”である井伊直虎を主人公にしたドラマで、直虎は柴咲コウが演じる。大河ドラマの音楽は毎年話題となるが、今年の音楽は菅野よう子が担当している。菅野といえば、最近では東日本大震災復興支援ソング《花は咲く》の作曲家として知られ、ドラマのジャンルではアニメーション『マクロスプラス』や『攻殻機動隊』の音楽を担当したことで有名である。『マクロスプラス』の菅野の仕事は、その後のアニメーションの音楽に大きな影響を与えたとも言われている。
そして、最も印象に強く残るテーマ曲は、パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団、そして世界的なピアニストである中国出身のラン・ランが演奏している。この世界的な演奏家ふたりが揃って取材に応じてくれるというので、東京・渋谷のNHKに出かけた。
パーヴォ・ヤルヴィ(1962~)はエストニア出身で、2015年9月からNHK交響楽団の首席指揮者に就任した。就任直後からNHK交響楽団と録音を始めるなど、意欲的な活動を展開している。
「日本の歴史については、実はあまり詳しくはありませんでした。ソ連邦時代のエストニアでは入って来る情報も限られていたし、ほとんどの外国人がそうであるように、フジヤマ・ゲイシャというようなことしか知らなかった。でも、オペラではプッチーニの『蝶々夫人』のように日本を舞台にしたものがいくつかあり、それを通して日本という国を知るようになりました」
とパーヴォ。今回の番組オープニングの部分は、まずテーマ音楽ができ、その音楽に合わせて、タイトル映像が作られた。今までの大河とはかなり違ったイメージのオープニングとなったという。
「音楽を作曲する前に、ヨーコはウィーンで行われた僕のコンサートに来てくれました。そこで色々と話をしたのですが、このドラマの音楽には、彼女のとてもオープンでポジティヴな個性が反映されていると思います。もちろん、日本的な部分も持っていますが、基本的には19世紀から20世紀にかけてのヨーロッパのクラシック音楽の構成、和声を元にしており、僕たちにも理解しやすい音楽だったと思います」
隣に座っていたラン・ランも音楽についてこう語る。
「最初にヨーコの音楽を演奏した時に感じたのは、フランスの印象派のような世界を持った音楽ということでした。同時に、流れるような美しさがあって、その中に様々な色彩が感じられました。それがまさにこのドラマの主人公のイメージと重なっているのだろうと想像しています」
クラシックの世界を代表するふたりがこのテーマ音楽に参加したということはとても大きな話題だけれど、では、なぜ、参加することを決めたのだろうか? ラン・ランはちょっと笑いながら、
「パーヴォが、このドラマのキー・ヴィジュアルをとても気に入ったからだそうですよ。柴咲コウさんの凛々しい姿に魅了されたと。僕とパーヴォは昔からの友人なので、誘われたら当然、僕も断る理由はありませんでした」
すでにご覧になった方も多いと思うが、確かに、おかっぱ頭で城主の座に座る直虎のイメージは、これまでの時代劇にはない凛々しさと清々しさを感じさせるもの。パーヴォが魅了されるのも無理はないのかもしれない。
テーマ曲の他に、ラン・ランがソロで演奏する曲もあり、また番組最後に流れる《大河ドラマ紀行》には、やはり世界的な演奏家であるヴァイオリンの五嶋みどりが参加しているのも話題となりそうだ。たくさんの才能が集まって作り出した『おんな城主 直虎』のテーマ曲、そしてオープニング。じっくりとテレビの前で鑑賞してみてほしい。
DRAMA INFORMATION
NHK大河ドラマ 『おんな城主 直虎 』(全50回)
○[総合]午後8時~8時45分 [BSプレミアム]午後6時~6時45分
作:森下佳子 音楽:菅野よう子 語り:中村梅雀
出演:柴咲コウ/三浦春馬/高橋一生/杉本哲太/財前直見/貫地谷しほり/阿部サダヲ/菜々緒/浅丘ルリ子/前田吟/小林薫
www.nhk.or.jp/naotora/