What A Fool Believes
数年に渡るブラック・クロスオーヴァーの盛り上がりを支えたキーマンのひとり、サンダーキャットが待望久しいアルバムをリリース。シーンの顔役たちを従えてさらにマイルドに裾野を広げた壮大な音絵巻は、未体験の美しさで満たされている!
近年の活動を集大成する最高傑作
EP『The Beyond / Where The Giants Roam』を挿んでの3枚目。前作『Apocalypse』以降は、フライング・ロータス『You're Dead!』、ケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』、カマシ・ワシントン『The Epic』といった重要作に関与してきたサンダーキャットだが、その三者が挙って参加している今回の新作は彼の近年の活動を集大成する内容といっていい。なんといっても極め付けは、すでに各方面で話題沸騰のリード曲“Show You The Way”。これはデビュー作『The Golden Age Of Apococalypse』の“Walkin'”に端を発するヨット・ロック/AORオマージュ(及びそのビート・ミュージック解釈)の決定打となる仕上がりで、ここに寄せる本人の自信のほどはゲストにマイケル・マクドナルドとケニー・ロギンスを招いてるあたりからも窺えるはず。“Bus In These Streets”や“Walk On By”など同路線の傑作がごろごろしているなか、随所に配置されたフュージョン/シンセ・ファンク調の楽曲の充実ぶりもすさまじく、ソングライターとしてはもちろんヴォーカリストとしての成熟をも強く感じさせる文句なしのキャリア最高傑作だ。ファレル、ウィズ・カリファ、マック・ミラーの客演もある。 *高橋芳朗
西海岸クロスオーヴァーの懐かしい最新型
前作『Apocalypse』(2013年)はサンダーキャットにヴォーカル面での意識の高まりを促した作品だったが、久々のフル・アルバムとなる『Drunk』は、単純に初作『The Golden Age Of Apocalypse』(2011年)のフュージョン感に立ち返った側面もありながら、それ以上にブランク期のコラボや演奏活動を反映した情緒豊かなクロスオーヴァー・ソウル作品に仕上がっている。鍵盤奏者のデニス・ハムが多くの楽曲でサポートにあたり、ディアントニ・パークスやカマシ・ワシントン、ルイス・コール、フライング・ロータス、モノ/ポリー、サウンウェイヴといったプロデューサー~ミュージシャンたちも要所で参加。ケンドリック・ラマー、ウィズ・カリファ、ファレルといった客演陣のいままでにない豪華さもフックになるだろうが、軸となるのが主役のベース演奏と歌声なのは間違いない。
アタッキーなフュージョンやメロウ・ミッドの連なる70年代スティーヴィー・ワンダー風の序盤からしてもう最高だが、以降もマイケル・マクドナルド&ケニー・ロギンスを迎えてEW&Fのような淡い光で包んだ“Show You The Way”、ケンドリック・ラマー“Bitch, Don't Kill My Vibe”のフックを引用したブギー・ファンク“Friend Zone”といった極上のナンバーが続き、全体のトーンは初作にも通じるジョージ・デューク的なヴァイブでまったりひと繋がりになった印象だ。EPが初出となるアイズリー・ブラザーズ使いの“Them Changes”がそこに連なるのも納得。というか、野暮を言う気も失せる心地良さに浸るのみ。完璧でしょう。 *香椎 恵