公演直前のトーク・セッションで訊いたデヴィッド・ボウイと最新作のこと
デヴィッド・ボウイの遺作『★』にフィーチャーされ、サウンド面で新たな可能性を切り拓いてみせたサックス奏者のダニー・マッキャスリンが、『★』に参加したメンバーであるキーボードのジェイソン・リンドナー、ベースのティム・ルフェーブル、ドラムスのマーク・ジュリアナを率いて来日を果たした。
「2015年の夏に『★』のレコーディングが終わって、自分のことをやる時間が出来たときも、デヴィッド・ボウイの音楽がずっと自分の頭の中で鳴り響いていて、それがオリジナルの曲を作るきっかけにもなった」(マッキャスリン)
そうして前述のメンバーを誘ってスタートしたマッキャンのリーダー作『Beyond Now』は、ボウイのカヴァー曲なども含んで完成した。
「現場はデヴィッドとトニー・ビスコンティとエンジニアの最小限のチームだったが、高い能力と高い要求によって、僕らのレヴェルも引き上げたと思う」(リンドナー)「デヴィッドは恐れ知らずで、僕らの限界も拡げてくれた」(ルフェーブル)「常にお互いの音を聴いて、自分がそこに存在をしていることを意識した。それはとても大事なことだった」(ジュリアナ)
それぞれの口から、如何にボウイとの録音が貴重な経験であったかが伝わってきた。
「彼は必ずスタジオで一緒に歌ってガイドをしてくれた。ヴォーカルは別録りで会うことがない人も多いのにね」(リンドナー)
ボウイとマリア・シュナイダーが《Sue》を制作している際に、ボウイがリズムについての要望にマリアが返答として聴かせたのが、マッキャスリンの『Casting For Gravity』で、ボウイはその音楽に興味を持ち、マッキャスリンたちの演奏を聴きにNYのライヴハウスにも足を運んだ。
「デヴィッドは僕らの作品も相当聴き込んでいて、レコーディングでは“あのアルバムのこのフレーズが欲しい”とも言われたよ。デモを作ってスタジオに入ったから一緒にセッションで作ったわけではないが、スタジオではいろいろなアレンジを試した。時には間違いや予定とは違うものが出来たりもしたが、デヴィッドはそのすべてを残したんだ。そこから新たな可能性が生まれることもあるからね。偉大な音楽家のレコーディングとはこういうものかと思ったよ」(マッキャスリン)
ブルーノート東京で観た彼らの演奏は『★』や『Beyond Now』の楽曲が中心だったが、アルバムを更新するような多様な音楽性を内包する驚くべきコンビネーションと精度を見せ、このバンドがさらに継続して活動していく先に表れるものへの期待を大きくした。
※文中の発言は筆者も司会として参加したトーク・セッション (於:cafe104.5)より
LIVE INFO.
MARIA SCHNEIDER ORCHESTRAに、ダニー・マッキャスリンもメンバーとして参加!
○6/7(水)6/8 (木)6/9(金)6/10 (土)6/11 (日)
会場:ブルーノート東京
www.bluenote.co.jp/jp/artists/maria-schneider/