C.O.S.A.
圧倒的なイントロダクション
知っている人はもう知っているが、知らない人もいま知るといい。東海シーンの俊英たちが続々と相応な評価を獲得しつつある昨年からの流れにあって、その真打ちとも言えるのがC.O.S.A.である。彼のソロでは初めての全国流通盤となる新作『Girl Queen』は、昨年に発表したKID FRESINOとのタッグ作『Somewhere』と同じくSUMMITからのリリース。とはいえ、彼の凄みはそういった前置きによって限定されるものではない。先頃サニーデイ・サービスの新作『Popcorn Ballads』に抜擢されていたように、その魅力は着実に多方面へと浸透しはじめているところなのだ。
87年生まれのC.O.S.A.は、C-Cityと称する愛知は知立市の出身。12歳でリリックを書きはじめ、16歳の頃には名古屋でライヴ活動を始めていたそうで、CampanellaやRamzaらとMdM(MADE DAY MAIDER)クルーに名を連ね、数作のビート・アルバムをbandcampで発表しながら主にトラックメイカーとしてローカルに名を広めていく。DJ RYOWのミックスCDに収められた楽曲や、SOCKSやG.B.Lへのビート提供もありつつ、それ以上に大きかったのはやはり盟友Campanellaと組んだ『コサパネルラ』(2011年)、そしていわゆる〈NEO TOKAI〉の現況へ導線を引いたTOSHI蝮の『BLUE CHEEESE』(2012年)へのプロデュース参加だろう。
SUMMITに繋がる縁としては、MARIAの“Helpless Hoe”(2013年)に名前がクレジットされていたことを覚えている人もいるかもしれない。その吠えるようなビートは、前年に彼が“Locals”として世に出していたもの。そんなスポットライトに前後して再度マイクを握るようになったC.O.S.A.は、ビート集『2013 Instrumentals』に自身のラップした“桜町Weekender”を初収録している。そして2015年4月に登場したのが、ディラの『Ruff Draft EP』を模したジャケも印象的な初のラップ・アルバム『Chiryu-Yonkers』であった。
C.O.S.A.がラッパーとしての才を開花させた同作は、限定的な流通にもかかわらず好事家の間に広まり、名盤としての評価を確たるものとする。なかでも先述の“桜町Weekender”と“知立Babylon Child”は際立った名曲で、物凄く雑に言ってしまえば、彼のラップにはTOKONA-XとILL-BOSTINOが同居しているかのような情緒と剥き出しのリリシズムがあり、率直な語り口からは懐の深さが感じられる。以降はMAKERの佳曲“無重力ピエロ”をはじめ、KID FRESINOやBUSHMINDらの楽曲にラッパーとして客演。そしてSUMMIT仲間たるHi'Specとの“Amigos”、さらに先述の『Somewhere』を経て、このたびの『Girl Queen』が完成したわけだ。
今回は6曲入りのミニ・アルバム。Gradis Niceによる幕開けの“1AM in Asahikawa”で、クールな熱を帯びた言葉が凍てついた風に舞うのを感じることができれば、もうそこはC.O.S.A.の世界だ。ドープな抽象性を“WGD”に注ぎ込む同胞Ramza、ダークな“Ridin'”を手掛けたハーレムのV Don(2チェインズ、FEBBほか)はGradis同様に『Somewhere』から続投した布陣で、威風堂々たるラップとも流石の好相性を見せる。映画「憎しみ」から題を取ったセルフ・プロデュースの“La Haine Pt.2”も彼一流の路上感を伝える出来だ。一方、初顔合わせとなる理貴(KOHH、般若ほか)の“I Can See Your Palm”は本作の芯にある部分を歌った最高にロマンティックなハイライト。メロウな聴後感を残して作品を締め括るのは、FRESINOとのタッグ作で知られるArμ-2製の表題曲だ。もしもこのヴォリュームに物足りなさを感じたなら、本作は次なる動きへの圧倒的なイントロダクションとなるに違いない。
C.O.S.A.の参加作を一部紹介。
『Girl Queen』参加アーティストの作品を一部紹介。
Reaching the SUMMIT
★Pt.1 SUMMIT『Theme Songs』
★Pt.2 VaVa『low mind boi』
★Pt.4 CDで追うSUMMITのディスコグラフィー