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際立つ2つのピアノ・バラード

 なかでもひときわ耳を引くのは、コールドプレイ“Viva La Vida”のカヴァー。これまでもアルバムに1曲ずつ、アークティック・モンキーズやミューズ、レディオヘッドらロックのカヴァーにトライしてきた3人が、この超有名曲を流麗なピアノ・バラードへと昇華させている。これはカルト的人気を集めたTVドラマ「カルテット」からのセルフ・カヴァー“Theme from quartet”と並んで、fox capture planを新たに知る人のための最適な入り口のひとつになるはずだ。

 「コールドプレイは以前からカヴァー候補に挙がっていたんですけど、改めて“Viva La Vida”を聴くと、メロディーがすごくきれいだなと思ったので。イントロやリフが印象的な曲で、そのままやるのはおもしろくないから、バラードっぽく変えてみました」(カワイ)。

 「カヴァーする時って、リズムを含めてその曲のアイデンティティーを尊重する場合と、むしろ変えたほうがいいだろうっていう場合の2パターンあって、“Viva La Vida”は完全に後者ですね。『カルテット』はドラマの反響がすごく大きくて、それがきっかけで僕らを知ってくれた人も多いみたいで、関われて本当に良かったと思います。原曲はホーンやギターが入ってるんですけど、今回はストリングス・クァルテットで再録しました。僕らの代表曲のひとつになり得る曲だし、オリジナル・アルバムにも入れるべきだなと思ったので」(岸本)。

 アルバム後半には、肩の力を抜いたジャム・セッション“PLASTIC JAM”や初期の代表曲“疾走する閃光”に通ずる要素を持つ“Real, Fake”と、めまぐるしくシーンが変わってゆく。そして最後に待ち受けているのは、前作の制作時に録音してストックしておいたというピアノ・バラード“Pain”だ。従来のfox capture planにはなかったダークでエモーショナルな感情がふつふつと湧き上がる、オルタナやラウド・ロックのリスナーにも訴求力抜群の壮絶に美しい一曲。これは彼らが新たな可能性を切り拓くうえで、重要な曲になるはずだ。

 「“Pain”はナイン・インチ・ネイルズの『The Downward Spiral』というアルバムの最後に入っている“Hurt”にインスパイアされて。ああいう曲を作りたかったんですよね。メロディーがすごくきれいなバラードなんだけど、やたら暗くて裏がありそうな、〈病んでる感〉を出してみました。特に何もないんですけど(笑)、いまの自分ならそういう曲を書けるんじゃないか?と思ったので」(岸本)。