言いたいことのあるアルバム

 そんななかで要所を締めるコラボは、ISSUGIとの路上感溢れる先述の“Pride”をはじめ、RAU DEFがイキイキと割り込んでくる“Bitch Planet”、そしてPSGが久々に揃った“Stray Bullets”と身近な盟友/名優たちで固められている。

 「“Stray Bullets”はビートが出来た時に、ちょっと無機質だし、グルーヴもあったから〈これ、PSGっぽいな〉って思って。最初から何となく決めてました。やりやすいし、何か〈家族〉って感じでしたね。漠然と〈みんな思うこと書いて〉ぐらいでほとんど打ち合わせもしなかったし、うん。けっこう1人ギリギリで〈ちゃんとやってくれんのかな?〉って奴もいましたけど(笑)、やってくれました。ISSUGI君もずっとちゃんとヒップホップをやってる人だし、RAU DEFに関しては、このアルバムで唯一あっちから〈絶対入れてくれ!〉って言ってきたんすよ、図々しく(笑)。そんで、〈いや、バランスもあるし〉って言ったものの断れない自分もいて、〈ああ、断れない俺を表現してんのはRAU DEFだな〉みたいに思って。ホントに最後に図々しく来る感じで入ってくれて、やっぱちゃんとした役割をやってくれました」。

 彼らの名演も交えつつ、アルバム全体がP監督のこだわりによって流れの良さを生み出しているのもポイント。特に“Stray Bullets”で場面を切り替えて以降、女声も良いアクセントになったチルな“Rain”からの終盤の展開は、文句なしのハイライト“タイムマシーンにのって”や本編ラストに置かれた“Oldies”のホロ苦くも甘酸っぱい風情は素晴らしい。ここでのPUNPEEは架空のノスタルジーという設定を超え、実際にスロウバックした気分で自然に未来の思い出を語るかのようだ。

 「そうそう、前半は自分が凄い詰め込まれてる感じがあって、良い意味で頭でっかちなんすよ。後半の曲はわりと気楽に作ったところがあって、“Rain”“夢のつづき”“タイムマシーンにのって”とかは実際に作ったのも最後のほうですね。確かに、最初はなりきろうとして作ってたのが、最後のほうはもうそっちモードになって、なりきった状態でラフに作れた感じでした」。

 そんなアルバム全体の流れの良さと同時に、全体を柔和に包み込むテーマ性、チャップリンの名画から表題を取った意図も含む大きな考えが『MODERN TIMES』を特別な名盤にしているのは言うまでもない。

 「もちろんただイイ感じの曲を入れてもアルバムになるんだけど、自分はアルバム世代なんで、1曲単位で聴くものっていうよりは、何か意味があるというか……ちゃんとアルバムで言いたいことがひとつあったほうが良いなっていうのは、RHYMESTERさんと『Bitter, Sweet & Beautiful』で仕事した時に喰らったところですね。んで、『MODERN TIMES』というのはバッチリ合うタイトルだと思います。自分は社会風刺まではいかないですけど、いまの時代に対するフラストレーションみたいなものが最終的には自然とパッケージされちゃいましたね。でも“Oldies”で、〈40年後はこうなってたらいいな〉みたいなことは最後に言えたような気がします」。

 喜劇王チャップリンよろしくユーモアとメッセージを軸に、バック・トゥ・ザ・フューチャーしながら〈モダン・タイムス〉に希望を託すPUNPEE。さまざまな引用や隠された仕掛けの数々についての野暮な答え合わせは、まず実際に手に取って聴いてもらってこそ。そうすればあなたは、この『MODERN TIMES』を何年か経って耳にした時に、きっと2017年のベスト・アルバムとして思い出すことになるだろう。

『MODERN TIMES』に参加したアーティストの作品を一部紹介。