畳野彩加(Homecomings)、平賀さち枝

平賀さち枝とHomecomingsの2組で不定期に活動するコラボ・バンド、〈平賀さち枝とホームカミングス〉がこの名義での2作目となるEP『カントリーロード/ヴィレッジ・ファーマシー』をリリースした。〈名曲〉と評された前シングル“白い光の朝に”から早くも3年と4か月、その歳月においてHomecomingsはフル・アルバム2作のリリースを含む順調な活動を重ね、単独での音源を長らく発表できずにいた平賀さち枝も、昨年ついに新作『まっしろな気持ちで会いに行くだけ』を完成させた。つまり、それぞれの歩みが軌道に乗っているなかでの再タッグであり、実際このEP――ウキウキとした疾走感に溢れる“カントリーロード”やHomecomingsが日本語で手掛けた堂々たるロック・アンセム“ヴィレッジ・ファーマシー”を筆頭とした5曲には、表現者として成熟した両者がふたたび力を添え合う姿が収められている……。

と、ここまで書いてきた前置きのもと、このインタヴューに臨んだのだが、話を訊くと実は“カントリーロード”を含む数曲は、すでに数年前に録音されていたという。では、なぜリリースまでに短くない期間を要したのか? そして、昨年には〈フジロック〉へと本名義での出演を果たすなど、各自の活動と並行しての〈平賀さち枝とホームカミングス〉は、両者にとってどんな意味を持った場所になっているのか? 平賀さち枝、Homecomingsの畳野彩加(ヴォーカル/ギター)、福富優樹※(ギター)へのインタヴューは、話者の1人が感極まったあまり涙を見せるなど、エモーショナルな時間となった。

※福富はSkypeでの参加

平賀さち枝とホームカミングス 『カントリーロード/ヴィレッジ・ファーマシー』 SECOND ROYAL(2017)

 

会う度にそのままでいてくれているのが嬉しかった

――最新作『まっしろな気持ちで会いに行くだけ』についてインタヴューした際に、平賀さんは〈単独音源がなかなか作れなかった時期は、Homecomingsとの活動に救われていた〉とおっしゃっていましたね。

平賀さち枝「それまでのレーベルを抜けて活動が止まっていた時期に、Homecomingsとの出会いがあって、そこで一緒にライヴをしたりCDを作ったりしたからこそ、音楽活動を続けることができたと思っています。だから、ホムカミの存在には本当に感謝していて」

畳野彩加(Homecomings)「ホムカミにとっても、さっちゃんとの活動があってすごくありがたいと感じているんです。日本語だったり2人で歌っていたり、Homecomingsではできないことをやれているから。最初はここまでうまくいって、こんなに長く活動できるとは思っていなかったな」

平賀「うん、まさか2枚出せるとは思わなかった」

――“白い光の朝に”から3年4か月、それぞれの活動をどのように見ていました?

平賀「2014年のときは、〈私がHomecomingsを紹介したい〉という気持ちでいたんですけど、“白い光の朝に”を出したあと、私がウジウジしてちゃんと活動できないなかでも、ホムカミはどんどんCDを出してライヴもやっていて、〈すごいなぁ、いいなぁ〉みたいな気持ちでした。バンドとして変化もしてるけど、誠実で真面目な取り組み方というのは、ずっと変わらずだと思う。〈私も一緒に切磋琢磨したいな〉となれたし、現在はもともとホムカミが好きで、それから平賀さんのことを知ってライヴに来ました、というお客さんがいっぱいいるんですよ」

畳野「さっちゃんから見ると、うちらはいろいろライヴもしていたしリリースもあったし、わかりやすく成長とかが見えていたと思うんですけど、私的には、さっちゃんはいい意味で変わらない、変わらずに良い曲を作り続けている、という感じでした。ちょこちょこ会えていたし、その度にそのままでいてくれているのが嬉しかった」

福富優樹(Homecomings)「だから、平賀さんのお客さんのほうが心配やったかもしれませんね。僕らは一緒にライヴをしたり、“カントリーロード”を作ったり、定期的に動けていた。実は“カントリーロード”は、“白い光の朝に”の1年後くらいに録音までしてたんですよ。そこから出し時を探しつつ、僕らも〈いつ出すんやろな?〉と気にしつつ、今に至ったという(笑)」

――そんな前に録っていたんですね!

福富「去年の今頃にも、そろそろリリースするかという話があったんです。(Homecomingsの最新EP)『SYMPHONY』の前に出すという案もあって」

――2組としては、いつ出てもいいという感じだったんですか?

畳野「うん、別に」

福富「僕は“カントリーロード”をめちゃくちゃ良い曲やと思ったし、絶対に売れる気もしたんで、〈ここまで出さないんやったら映画の主題歌とかにならない限りは、出さなくてもいいんじゃないですか?〉くらいのことは、言ってましたけどね(笑)」

 

一緒に演奏すると、遠くまで進んでいく歌になる

――確かに“カントリーロード”はかなり前から2組で演奏されていた記憶があります。

平賀「“白い光の朝に”をリリースした直後に“カントリーロード”を作って、自分のライヴでは演奏していたんだけど、最初に〈その曲、良いね〉って言ってくれたのが、ホムカミだったんです。福富くんが曲を覚えてコードを演奏してくれて、〈すごいね! 弾けるんだ〉と言ったことを覚えてる」

福富「最初に聴いたのは、さっちゃんがタワレコ京都店でやったインストアやったと思うんです。一回でメロディーを覚えちゃうぐらいのすごい曲やったし、思わずハッとしてしまった」

畳野「〈さっちゃん、またヤバい曲作ってきたなー〉みたいな感じになったよね。メンバー間でも〈あの曲がすごく良かったね〉と話題になって」

福富「そして、レーベルから〈また平賀さんと何か録ってみたら〉と言われたときに、〈じゃあ“カントリーロード”がいいね〉となったんです」

――平賀さんがHomecomingsによって肉付けされた“カントリーロード”を聴いたときの感想は?

平賀「自分1人でこの曲をどうこうするより、ホムカミと一緒に作ったほうが、遠くまで進んでいく歌になるというのは最初から思っていたし、アレンジに関してはもう100%ホムカミに任せていました。何が来てもいつも受け入れているし、ホムカミが決めたアレンジが最良の選択だと思っているから。うん、〈これだ!〉っていう感じでした」

――もうひとつのタイトル曲“ヴィレッジ・ファーマシー”も、以前に録音していたんですか?

福富「あの曲は、去年の夏に平賀さち枝とホームカミングス名義での〈フジロック〉出演が決まって、〈じゃあ、もっと曲がないとな〉と作ったんです。“カントリーロード”と一緒のパッケージに入ることになるんやろうなというのは、なんとなくわかっていたので、“カントリーロード”の曲名や歌詞から連想しつつ、自分が育ってきた街を僕なりの視点で書いたら、2曲が一緒になったときにおもしろいかなと」

――今回のEPは、それぞれ単独名義で収録した楽曲も含め、大人になった立場から昔の場所や出来事を思い出している〈ノスタルジー〉をテーマにした作品なのかなと思ったんですが、それは“カントリーロード”に寄せていくうえで生まれたムードだったんですか?

福富「そこはちょうど、いろいろな方向性が合致したというか。“カントリーロード”に引っ張られていった部分もあったし、Homecomings自体もそういう視点を追求していたときだったんですよ」

――特に『SYMPHONY』というEPは、Homecomingsというバンドの思春期性へと向き合うというテーマで作られていましたね。

福富「そうなんです。だから、お互い引っ張られるじゃないけど、意図せずとも結果的にそうした作品になったことが良いなと思いますね」

Homecomingsの2017年のEP『SYMPHONY』収録曲“"PLAY YARD SYMPHONY”

 

自分にはないメロディーを歌う、その違和感が良い

――“ヴィレッジ・ファーマシー”は、Homecomingsにとって自身の音源としては初となる日本語詞の楽曲ですが、どういうふうに出来ていったんですか?

畳野「これは作曲が私で作詞が福富くんというホムカミとしては新しいスタイルで作った曲」

――Homecomingsが楽曲提供したNegiccoの“ともだちがいない!”(2017年)もそうでしたよね。

畳野「あの曲がなんとなく上手くいったので、その感じで平賀さち枝とホームカミングスでも作ろうと、まず私が曲を作ったんです。私のなかにリズムのイメージがなんとなくあって、そのうえでいちばんこだわった部分は、同じメロディーがずっと続く曲にしようということ。言葉は変わるけどメロディーはずっと一緒みたいな、そういう楽曲を作ってみたかった。そこで出来たものを一回福富くんに聴かせて、彼からは〈最後にグッと上がる大サビがあったほうがいいかもしれないね〉という意見を受けて、またそれを付け足してみて」

――パワフルなドラムにはスタジアム感もあるし、Homecomingsのなかでも屈指のアンセミックなギター・ロックになりましたね。ひたすらループするAメロに、淡々と日本語を乗せていくようで、徐々に熱を帯びていく昂揚感が素晴らしいなと。

福富「曲が同じメロディーの繰り返しやったから、じゃあ歌詞ではむしろ同じ単語を1つも繰り返さないようにしようと考えていました。そのうえで、最後のサビで一つ句点を打てるようなものを書けたらいいなと」

――福富さんとしては、日本語で歌詞を書くうえで苦労した面もあったんじゃないですか?

福富「Negiccoの“ともだちがいない!”を作ったときはめちゃくちゃ考えたんですけど、“ヴィレッジ・ファーマシー”は“ともだちがいない!”でポンと壁を越えられた直後に作ったので、そのままビヨーンと行けた感じもあって。書く方法みたいなものはとりあえずわかったし、英語で作っていた世界観を日本語に落とす方法は見つけられた」

――同じメロディーがずっと循環していく構造の曲をやりたくなったのには、何か外的な要因があったんですか?

畳野「私は、昔からそうなんですけど、はっきりとしたイメージがないまま作り出すタイプなんです。だから、今回も参考音源みたいなのは、まったくなくて。〈“カントリーロード”と両A面で入れるとしたら、どういう曲がいいかな?〉というのは考えつつ、“カントリーロード”が結構元気な曲なので、もうちょっと陰がある、かつホムカミらしいものを作ろうと。2コードでシンプルだけど良い……みたいな曲が私たちの得意なところだとは、うっすら勘付いていて、それをふまえた日本語の楽曲をずっと作りたいなと思っていたんですよ」

――平賀さんが“ヴィレッジ・ファーマシー”を聴いたときの感想は?

平賀「第一印象ですごく爽やかで涼しげな曲だなと思いました。メロディーは変わらず覚えやすくて歌いやすいし、歌詞も口に出して歌いたくなる風通しの良さがある。自分で作詞作曲をしていると人の曲を歌うのに抵抗を感じるときもあるんですけど、ホムカミの曲は私にとってもすごく入り込みやすいし歌いやすいんですよ」

――この曲は、ヴォーカルの分担も“白い光の朝に”や“カントリーロード”とは違っていますね。平賀さんのソロ・ヴォーカルは、最後の最後でしか出てこない。

畳野「いつも〈1番はさっちゃん、2番は私〉というようにわかりやすく分けるんですけど、今回メロディーはずっと一緒だし、いつもと違う感じにしたいなというのも最初からありました。そこでいろいろと試した結果、いまのがいちばんハマったというか。すごく贅沢な平賀さち枝の使い方なんですけど(笑)、最後にさっちゃんが歌って、そこがすごくいいというものにしたかった」

――大サビで畳野さんと平賀さんの声が一瞬重なる箇所もすごく素敵です。平賀さんが“カントリーロード”を指して言っていたように、この曲も平賀さんが最後に歌うことで、〈より遠くに届く曲〉になっていると感じました。

畳野「さっちゃんのメロディーを私が歌うことが当たり前だったんですけど、今回は私がいつも英語で作っているメロディーに日本語をのせて、それをさっちゃんが歌うという初の試みで、すごくおもしろかった。さっちゃんの曲にはない感じのメロディーを、さっちゃんが歌うことによって出てくる、そのちょっとした違和感みたいなものが、逆にすごく良かったり」

――そして、それぞれ単独の名義で平賀さんの“夏風邪”とHomecomingsによるペイヴメントのカヴァー“スピット・オン・ア・ストレンジャー”も収録されています。

畳野「この2曲も実はカントリーロードと一緒に録ってたんです。コラボを5曲とか入れるとなるとすごく大変というか(笑)。お互いの曲が一曲ずつ入っていてもいいねってことで、ちょうど私たちはリリースも控えていたので、じゃあいちばん好きなバンドであるペイヴメントのカヴァーにしようと。それに加えて、さっちゃんの弾き語りを入れたら、作品として良いバランスだなとは想像できたので」

――平賀さんが“夏風邪”を選んだ理由は?

平賀「レコーディング当日まで何を録るかを決めてなかったので、この曲はその場で急いで作ったんです。ホムカミががんばってレコーディングをしている間に、私もがんばって曲を作っていて(笑)」

畳野「そうとは思えないくらいのいい曲なんですよね。“夏風邪”を録ったときは、他のメンバーがいなくて、私1人でさっちゃんが弾き語りしているのを見ていたんですけど、最初の1テイクからもうめちゃくちゃ最高だったんですよ。〈あ、これはいい曲だ〉って泣きそうになりながら聴いていた」

 

本当に尊いもの

――話を伺って、今回のEPが想像以上に長い期間を経て完成した作品だったことに驚きました。みなさんが、あらためて一つの作品として完成したものを聴いてみての感想は?

畳野「私たちの故郷で撮影したジャケットとアー写を含め、はっきりと目に見えるものとして出来上がった段階で、しっかりとしたコンセプトのある、すごくいい1枚になったなって思いました。さっきも伝えてくれたけど、ノスタルジックというか、そういう作品に自然となってたんだなというのを発見できた。それまでは、時間を置いたということも関係していると思うんですけど、これがどんな作品になっているのか、ホントにわかんなかったんですよ」

福富「だから、狙ったわけでなく、曲も歌詞もすべてが繋がっている作品になったんですよね」

平賀「こんなに長い間、こういうコラボレーションが続くのって、あんまりないと思うんです。やっぱりミュージシャン同士だとぶつかり合うことも多いだろうし、一回で懲りるケースが普通だと思うんですけど、なんか私とホムカミは距離感とかもすごく不思議だし、喧嘩とかも一切ないんですよ(笑)」

畳野「まったくない」

平賀「レコーディングでぶつかったり、揉めたりすることもないし、奪い合いとかもない。だから、このユニットはすごく貴重なものという気持ちです」

畳野「私もそう思う。なんかもう……奇跡(笑)。私は、トヤマタクロウくんが録ってくれた今回のアーティスト写真をすごく気に入っているんですけど、これは石川県の手取フィッシュランドという私と福富くんの地元にある遊園地で撮影したんです。その日は天気も神懸かっていて、石川って70%ぐらい曇りだし、しかもこの前日には大雪が降っていたんですけど、その日の朝になるとむちゃくちゃ晴れていて、〈これはもう、いい写真撮れるよ〉と思った。

みんなで遊園地に行って、一日中ただただ歩いて、自然な流れで録れたし、その日はすごく楽しかったんですよね。それが写真を見てもわかるし、表情がほんと最高で、〈みんな、こういう顔をするようになったんだなー、ちょっと大人っぽくなったな〉とか、他人じゃなくて自分たちのことだけどなんか泣けてくるというか、〈めっちゃいい顔してるなあ〉と思いながら見られるんです」

平賀「……(ハンカチで目元を押さえる)」

畳野「わ! さっちゃんが泣いちゃった」

平賀「いや、なんかもう嬉しくて。そうだなあと思って、本当に尊いものなんです」

畳野「そう、尊い。前に録っていた曲が、いまこうやってちゃんと形になり、すごく大切な意味を持っているというのが感慨深い。うん……本当に奇跡が合わさった作品なんだなと思います」

 


LIVE INFORMATION
〈平賀さち枝とホームカミングス『カントリーロード/ヴィレッジ・ファーマシー』リリース記念ミニライヴ&サイン会〉
2018年2月12日(月・祝)タワーレコード新宿店7Fイヴェントスペース
出演:平賀さち枝、畳野彩加(Homecomings)
開演:18:00
入場無料

2018年3月11日(日)タワーレコード京都店
出演:平賀さち枝、畳野彩加(Homecomings)
開演:15:30
入場無料

〈SECOND ROYAL RECORDS 16th ANNIVERSARY PARTY! at 磔磔〉
2018年3月23日(金)京都・磔磔
出演:平賀さち枝とホームカミングス/LEARNERS/カジヒデキ
開場/開演:18:00/18:30
前売り3,700円(ドリンク代別)
※ぴあ(Pコード:106-895)、ローソンチケット(Lコード:55328)
問い合わせ:GREENS 06-6882-1224
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