天上天下オンリーワン! 愚連隊のガチンコな巨砲が圧巻のソロ・デビュー!

 「何ならSiSの時点で言われてたんですけど……私の人生、ヤラセみたいやな、って(笑)。ソロ・デビューも〈最初から決まってたやろ?〉って思われても仕方ないぐらい、ちょっと鳥肌でした。それか、誰かに踊らされているのかもしれないけど、こうして踊れるのなら踊ってたいです(笑)」。

 昨年末の『WACK & SCRAMBLES WORKS』リリースに際して行われた企画〈WACK総選挙〉では16位に終わるも、本人いわく「ラッキー・ミラクル・ハプニング賞」という引きの強さを発揮してブービー的にソロ・デビュー権を獲得したユイ・ガ・ドクソン。現在は持ち前の歌唱力とフリーキーなユーモアでGANG PARADEの一角を支える彼女ですが、2016年のBiSオーディション落選~SiSでの流浪という経歴を思えば、こんな未来はとても予想できなかったはず。グループがストイックな“GANG 2”で新章に踏み込むなか、WACKの新設レーベル=WcDONALDからのソロ・デビュー・シングル“Like a virgin”はそれとは好対照な飛び道具に仕上がってきました。

ユイ・ガ・ドクソン Like a virgin WcDONALD(2018)

 プロデュースはグループ同様に松隈ケンタですが、曲調はマドンナ風……ではなく、往年のガングロ&ルーズソックスを纏ったキッチュなヴィジュアルからも想像できるように、かの“Night Of Fire”も想起させるパラパラ必至のハイパーなユーロビート。ギャンパレ本隊ではありえなさそうなこのイケイケ感は、もちろん振り切れたオンリーワンなキャラも踏まえての仕上がりでしょう。

 「確かに、私だからですかね? 曲調がユーロビートで行くっていうのはもう最初から決めてくださってました。松隈さんがお家で曲を作る時はいろんなメロディーをめっちゃ歌うから、奥様も普段は聴かないようにされてるらしいんですけど、この“Like a virgin”は鼻歌で歌われているそうです。そういう凄く嬉しい楽曲をいただきました」。

 刹那的なメロディーは安定の松隈節ながら、やはり性急なサウンドは初のソロ録音ということもあって勝手が違ったようです。

 「凄いテンポが速くて、言葉数が多いから息継ぎが難しかったですけど、ホントに丸ごと歌わせてもらえて嬉しいです。あと、グループのレコーディングでは、やっぱり採用されたいんで(笑)しっかりキメて歌う意識になるんですよ。今回はいろんな歌い方を試して、それを全部入れられるというのが、いつもと違いました。松隈さんもその場のアイデアでいろいろ音を変えていったり、楽しかったです。冒頭の〈デカ☆ティン キミハモッテルカイ〉っていうロボットみたいな声も私なんですけど、その場で話してて決まったんですよ。怒られるかもしれないけどセカオワさんを意識してて(笑)、めっちゃ気に入ってます」。

 一方、作詞はギャンパレの“とろいくらうに食べたい”でも知られるヨウタ颶風が担当。〈収まりきらずにもう一度穴GO〉など、あまり文字にしたくないキラー・フレーズを散りばめて、楽曲のキャッチーな上限をググッと引き上げています。

 「穴は穴です。デモ音源はその前からいただいていたんですけど、歌詞が届いたらまさかのチンコの歌だったので初見でビックリして、ちょっとヨウタ颶風に疑問を持ちました(笑)。でも、すぐにおもしろくなって、こんなカッコイイ音楽で〈デカ☆ティン〉って叫べるなんて他ではありえないし、WACKならではというか、これがまさに私のやりたかったことやなって。ただ、歌詞はけっこう字面のパンチがデカイので、先に歌を聴いてほしいです(笑)。うちの母親にも〈これ、チンコの歌やで〉って聴かせたら〈全然気付かんかったわ〉って言ってましたし、音から入っていただいて、後から〈こんなこと言うてたんか〉っていうおもしろみを感じてもらいたい。でも、ふいに出てくる〈叶わぬ夢なら要らない〉って言葉とか、もどかしい雰囲気は何かギャンパレに通ずるかな?と思ってます」。

 そんなドクソンですが、もちろんこの手の流行をリアルタイムでは体験していません。

 「地元は流行が何年か遅れてやってくる場所なんで(笑)、スカートを短くして、でっかいリボン付けてっていうのを人並みにやってたぐらいですね。でも、昔パラパラが流行ったのは知ってたし、コギャル文化っていうか、ガングロとかのアイデンティティーに凄い興味がありました。でも、また時代が回りつつあって、去年は高校生のダンスとかあってバブルの感じが流行ったじゃないですか? 次はコギャル文化、ユーロビートだって松隈さんが仰ってたんですよ。確かにギャル・モデルの方が再集結してパラパラ披露するイヴェントとか最近ちょっとニュースとかでも観るんで、私も乗り遅れないようにしたい。MVもガングロカフェというお店の方たちに協力してもらって撮影したんですけど、曲を聴いたりMVを観たりして、少し前の、わりと世間的にふざけてた時代をもう一度来させたくて。こういう18禁ソングみたいなの、ないですもんね? このままでは窮屈な世界がもっと窮屈になってしまいますから、ここらで私が間口をパカッと広げたいと思います(笑)」。

 リリース直前の6月10日には東京・TSUTAYA O-WESTでソロ・ライヴも開催されます。

 「〈豪華オープニングアクト〉が出た後に、私はとにかくパラパラを踊ります。わりとチキンなので、最近めっちゃ悪夢を見たりするんですけど(笑)、やらせていただくからには精一杯、もうパンツも売る覚悟でがんばりたい。お客さんもライヴには思い思いにギャルの格好で来てほしいです。みんなたぶん一度はやってみたい願望があると思うので。ガングロが増殖したらおもしろいですよね。それで、男性も女性も一緒に歌ってほしいです。ボイトレの先生が言ってたんですけど、〈デカ☆ティンティン〉っていう挨拶だと思えば恥ずかしくないので」。

 なお、イタリア語で〈チンチン〉は〈乾杯〉の意味なわけで、そう考えるとこの“Like a virgin”は世間を元気にするパーティー・ソング、宴会ソングと言えるのかもしれません。

 「そうなんですか? じゃあ、乾杯するノリで歌ってもらえれば、なぜか凄く楽しい気分になってくると思います(笑)。これからは〈乾杯の歌〉って言います!」。