その存在を知らしめるのに時間など必要ない。一瞬にして世界をブルーに染める歌声、虚ろな目の奥で光る 確かなソウル──過去と未来を彷徨う新たなスターが、いまここで大きな一歩を踏み出す
すべてがすごいスピードだった
「これ、日本のインタヴューなのよね? 初めてだから嬉しい!」。
デビュー・アルバムの発表を目前に控え、取材を受ける彼女の声は弾んでいた。97年生まれ。本国でのアルバム・リリースとほぼ同時に誕生日を迎えたジョルジャ・スミス。エイミー・ワインハウスやアデル、ロードやアルーナジョージ、そしてアップカミングなエラ・マイら、ここ10年のアーバン&ポップ・ミュージック・シーンにおいて、UK出身のディーヴァたちの存在感はこれまでにない勢いで増すばかりだ。
「イギリスのウェストミッドランズに位置するウォルソールというところで育ったの。そんなに人も多くないし、やることが限られていたのね。でも、私の両親は二人ともクリエイティヴな仕事をしていて、母親はジュエリー・デザイナー、父親はソウル・バンドのメンバーとして活動していたのよ」。
ジョルジャの父親はセカンド・ネイチャー(Second Naicha)というネオ・ソウルを軸としたバンドのメンバーであり、その影響もあってジョルジャは11歳くらいの頃からソングライティングを行っていたよう。
「わりとすべての面において、父の影響を受けていると思うわ。曲が書けたら、父の前で曲を聴いてもらって、修正してもらうこともあったし」。
そしてジョルジャは、歌手としてよりプロフェッショナルなキャリアを積もうと、ロンドンに引っ越すことを決めた。最初、YouTubeなどに自身の楽曲をアップするなどして作品を発信していたジョルジャだったが、ブレイクに向けて大きなチャンスとなったのが、2016年にSoundCloud上で発表した“Blue Lights”だ。UKシーンにおいて絶大な人気を誇るスターMC、ディジー・ラスカルの楽曲“Sirens”をサンプリングし、警察による暴行や人種問題といったトピックをジョルジャらしく歌い上げたこの楽曲は、瞬く間に多くの人々の心を掴み、ジョルジャの名前はUKを中心とする音楽リスナーの間で広まることとなった。「“Blue Lights”を出してすべてが変わったわ。そのあとは、すべてがすごいスピードでやってきた、という感じ」と語るほどに目まぐるしいキャリアがスタートすることとなった。
また、彼女の運命を変えたもう一つの出来事が、ドレイクとの出会いである。ドレイクのプレイリスト『More Life』(2017年)に収録された“Get It Togather”は、南アフリカのDJ、ブラックコーヒーによるアフロ・ハウス調のトラックが美しい佳曲であるが、同曲のフィーチャリング・アーティストとして大抜擢されたのがジョルジャ・スミスだったのだ。このコラボに関しては、「まず、ドレイクがDMをくれたの。そして、〈君に聴いてほしい曲がある〉と言って送ってくれたのが“Get It Together”だった。曲をレコーディングしている間、ドレイクとは会う機会はなかったんだけど、彼とヴァースを送り合って、完成させていった曲よ。ツアーの場でドレイクに会ったとき、彼が周りのみんなに〈俺が話してたのはこの子だよ!〉って言ってくれたのが印象的。信じられなかったけど、とても楽しかった!」と説明してくれた。