日本ジャズの新しいプラットフォームが誕生

 〈世界のジャズを日本がリードした!〉 1970年以降、〈Made In Japan〉のレーベルが数多く発足して、様々なディメンションの日本ジャズを紹介し続けて来た。時の経済状況や、人気ジャズメンの出現というタレント側の状況で様々あったが、J-Jazzとしての独自性を持った作品がコンスタントに市場を席巻してきた。特にバブル期の90年代以降、大小さまざまなレーベルが立ち上がった。そして、2018年、オリンピックを2年後に迎えたこの時期、レーベル〈Days of Delight〉(以下、DOL)は、岡本太郎記念館の館長、〈太陽の塔再生プロジェクト〉総合プロデューサーの平野暁臣氏によってスタートされた。作品ラインアップは2タイトル。レジェンドたちの名盤からの名演を集めた作品と、土岐英史で始まる新録の作品群からなる。

土岐英史 『Black Eyes』 Days of Delight(2018)

VARIOUS ARTISTS 『Days of Delight Compilation Album -疾走-』 ソニー/Days of Delight Quintet(2018)

 若い世代には土岐麻子の父〉として知られる、日本が誇る、独特のブルース感覚を持ったサックスプレイヤー土岐英史はメインストリームから、チッキンシャックでのソウルフルなプレイまで幅広い音楽性を持ったJ-Jazzレジェンド。今回のDOL新録第一弾は、女性トランペッターとして人気を博す実力派の市原ひかり(82年生まれ)を迎えたクインテット編成の正統派のジャズだ。土岐の魅力は一言で音色(ねいろ)だろう。色っぽいと言ったらいいのだろうか、艶のある音がメランコリックなメロディに乗って胸の深部へ突き刺さる。スムースジャズファンにもアピールしそうな空気感が伝わる。渡辺貞夫に続く世代のサックスの中でも、当レーベルからの作品が待ち遠しい峰厚介と共に、長くファンに支持されてきた理由がわかる。今回は市原の他にも、ハイテンションなプレイでベテランファンにも人気の高い片倉真由子(80年)が参加、アルバムにピリッとしたテンションを付け加えてくれた。奥平真吾(66年)、 佐藤“ハチ”恭彦(68年)の60年代生まれと80年代の女性コンビ、そして、御大は1950年生まれ、それぞれの世代のジャズが溶け合った新しい世界を送り出してくれた。これからのラインアップに期待が高まる。