これが2018年のラストスパート! 予想なんてできないストーリーを超えて完成した『LAST GANG PARADE』は、未知の道へ踏み出した9人の明日を祝福する……
年明け早々に通算4枚目のアルバム『LAST GANG PARADE』を控えるGANG PARADE。意味ありげな表題とは裏腹に、いつも以上にカラフルな喜怒哀楽の渦巻く仕上がりは実に前向きなもの。プロデューサー/マネージャーの渡辺淳之介(WACK代表)にグループの歩みを振り返ってもらった前号に続き、今回は9人にアルバムの内容を語ってもらいましょう。これがラスト・インタヴューです(2018年の)。
ひとつの転機としての〈LAST〉
——まず、9月のZepp Tokyo公演でこのアルバム・タイトルを発表されましたね。
ユメノユア「〈LAST〉と聞いて、会場のお客さんもビックリしてたと思うんですけど、私たちも最初に知った時はビックリしました。ただ、アルバムが出来上がって思うのは、ギャンパレにとってひとつの区切りになるぐらい良い作品に仕上がったので、そういう意味も持てるタイトルなのかなって思いますね。ひとつの区切りで〈LAST〉。私たちには『Barely Last』もあるので、意外と使ってた言葉だなって、ちょっと冷静になった時に気付いて(笑)」
カミヤサキ「まあ、『Barely Last』よりはポジティヴだね(笑)。どっちかと言うと、何か転機的な」
ユア「そういう意味での〈LAST〉になればいいなっていう感じですかね」
——今回はジャケもふざけてなくて。
サキ「そうですね、うん。切なげ」
テラシマユウカ(ユユ)「アンニュイ」
——ラストっぽい儚さがあります。具体的に制作が始まったのはいつ頃からですか?
月ノウサギ「10月くらいから始めてました」
ユユ「そんな早かった?」
ユア「うん、10月中旬には作詞してて、10末にレコーディングしてるもん」
——ということは、このアルバム名を前提として作られてきたわけですね。
サキ「そうです。最初にあったのは“Message”と“HERETIC”、あと“正しい答えが見つからなくて”とかかな」
ココ・パーティン・ココ「レコーディングはリード曲の“LAST”がたぶん最後で」
サキ「前号のインタヴューで渡辺さんが喋ってるのが“LAST”ですよね」
ユア「伏せ字になってて(笑)」
——はい。作曲した松隈ケンタさんや渡辺さんの思い入れは格別だと思うんですけど、事前に曲の背景を説明しすぎても野暮な感じになりそうで。
ユア「確かに、最初のデモはホントに〈あっ〉って思ったんですけど、改めて全員の歌声が入った“LAST”を聴くと、むしろいまのギャンパレに合わせたアレンジで松隈さんたちも音を作ってくれたのかな?っていうのを凄く感じます。そういう背景に引っ張られないぐらい、デモの段階からパワーアップしてるので」
ヤママチミキ「曲も歌詞も、これだけ前面にエモーショナルというものが出ている楽曲はなかなかないなって。だからこそ自分の表現を丁寧に乗せないと軽く感じられてしまいそうで、歌もダンスもホントに一瞬の気も抜けない曲になったなと思いました」
——これ、サキさんの歌割が。
サキ「そうなんですよね(笑)。思い入れのあるパートをいただいていて、そういうのも含めて自分的には血が騒ぐんですけど、今日ふとアルバムを聴いてたら、“LAST”で普通に泣いてて。どういう歴史を辿って生まれた曲かは抜きにしても、それぐらい心が震える曲ですね。気持ちがギュッて締め付けられるような感覚になるし、でも苦しい感情だけじゃなくて、そこを抜け出して前を向けるような強さを持った曲だと思ってます」
——その“LAST”が象徴的なオープニングというか、異常にエモい雰囲気ではあるんですけど、全体はいろんな色が乗ったカラフルなアルバムになっていますね。
サキ「凄いヴァラエティー感ですよね」
ユア「いろんなアーティストさんの作品を聴いてても、アルバムだと似た曲調のものが多くなるじゃないですか? でもこのアルバムは一曲一曲が違いすぎて(笑)、飽きずに全部聴けちゃう気がする」
サキ「五角形のレーダーチャートあるじゃないですか? グラフみたいな」
ココ「〈エモーショナル〉〈おもしろさ〉〈ハッピー〉〈激しい〉……とか」
サキ「そう、その項目が全部ガンッて伸びてるみたいな感じ(笑)」
——それでいうと、まず、ミキさん作詞の“Message”が〈楽しい〉みたいな感じで。
ミキ「はい。これはデモをいただいた時から明るい曲調で、アルバムの中でもわりとギャンパレらしさが強い曲かなとも思ったので、そういうところを活かせたらいいなっていう気持ちで書いていきました」
——ライヴに来たファンの皆さんに呼びかけるような内容で。
ミキ「来てくださってるお客さんに向けてもだし、興味はあるけど勇気が出なくてなかなかライヴまでは行けないとか、まだギャンパレと出会って間もない人にも向けた歌詞になってます。Aメロ~Bメロではお客さん側の気持ちを書いて、サビは私たちからお客さんに向けて発信してるっていう」
——サビが現場のマナー説明みたいでいいですね。〈危険なことだけはやめてよ〉って、〈真面目か!〉みたいな(笑)。
ユイ・ガ・ドクソン「ダイヴとリフトとサーフのことやんな(笑)」
ミキ「ギャンパレのライヴで何が特徴的かなって考えたら、開演前に必ずマネージャーの辻山さんが〈危険行為は禁止です〉って注意事項を話してくれることで。サビを書いてる時に、その声が再生されて(笑)」
ドク「影ナレで辻山さんに歌ってもらいたいな。初めて来た人もわかりやすい(笑)」
——ダンス・チューンで賑やかだけど、和やかでもあるというか。確かにギャンパレの現場っぽいですよね。
ココ「ハッピーです」
やっぱこういうのがないと
——続いての“HERETIC”は歌謡曲というか、昔の韓流みたいな哀愁のムードで。
サキ「そうですね、ドラマの挿入歌みたいな感じ。みんなの歌い方のアクがかなり強くて、このタイトルをより助長している感じなんですけども。これはWACKの愛憎劇です(笑)。私から見た、WACKの社員さんと渡辺さんの関係性を書いてます。渡辺さんへの愛憎を社員さんが歌ってる感じで」
——想像もつかなかった(笑)。
月ノ「それを聞くと見方がまったく変わりますよね(笑)」
サキ「渡辺さんに憧れてWACKに入ってくる方が多いと思うんですけど、飲みに誘われて朝まで帰れず、飲みの席でいろんなアドヴァイスをいただいたり(笑)」
ココ「コンプラ的に問題ありそうな」
辻山「僕は何も言ってないですからね」
サキ「アハハハ。渡辺さんは凄く愛情深いし、意地悪なことも言うし、だから〈愛情 異端だ〉っていう(笑)。HERETIC(異端者)=渡辺さんみたいな」
——社員さんは最近は定着され気味?
ユユ「安定期ではある(笑)」
ユア「わりと。昔よりは安定期です(笑)」
ドク「でも、〈イバラですら可愛いもの〉って凄いですね」
ココ「そう思える会社(笑)」
サキ「まあ、私の解釈です。〈ピリオドは避けたい〉っていうのも、社員さんにいなくならないでほしいなっていう気持ちだし、尊敬があって書けた歌詞なので」
ドク「まあ、説明を聞けば聞くほど、私は渡辺さんとサキちゃんの歌じゃないかって疑惑が深まります(笑)」
——異教徒(HERETIC)はサキさんかもしれないっていう。〈あんたにもらった~〉って情念が凄いですけどね(笑)。
ミキ「ジワジワくる(笑)」
ユユ「〈あんた〉がおもろいねんって」
——“来了”をもっと濃くしたような歌唱法ですけど、マイカさんの落ちサビだけ変わるのもいいですね。
キャン・GP・マイカ「はい、あえて落ちサビの一箇所だけ普通に歌って。そこだけちゃんと〈愛情〉って歌ってたりとか」
——松隈さんもまた楽しそうな感じで。
ユア「“来了”の時もそうでしたけど、レコーディングが楽しかったです」
月ノ「いちばん時間がかかった曲です」
マイカ「めっちゃ盛り上がったよね」
ココ「そう、やっぱこういうのがないと。こういうのがあってこそ」
——そこから9人版の“BREAKING THE ROAD”を挿んで、“Jealousy Marionnette”ですね。
ドク「カッコイイ、大好き」
サキ「〈ハッ、ハッ、ウラウラ〉」
ユユ「最初の掛け声みたいなのはロシア語です」
サキ「サウンドもちょっとロシア系だって」
ココ「松隈さんが言ってたね」
——作詞はユユさんです。
ユユ「はい、これは世間に対する皮肉みたいな内容で、もともと仮歌に〈マリオネット〉って入ってたんですよ。そこから自分の意志のない人形みたいな姿が浮かんできて、こうなりました。みんな世間体を気にして多数派の意見を信じるけど、実際はそっちの意見がホントに正解なのかわかんないし。でも、少数派が良くないみたいな風潮になってしまうじゃないですか?」
——そういう気持ちになることが多い?
ユユ「はい。自分の意見に気付かず大多数の意見に賛同してたり、自分を隠してそうしてしまったり。実はみんな意外と心の底では〈こうしたい〉っていう意思があると思うんですよ。なのに周りを気にして生きるのって、もったいないなって、人生一回きりなのに。〈自分だってそうじゃん〉って言われたら終わりなんで、ちょっと皮肉っぽい感じで、自分への戒めとしても書きました」
ドク「ユユはいつも、そういう人間の中にあることを気付いて歌詞にしてて、だから共感することが多いですね。何かを気付かされるというか」
——毎回こういう生き辛さを軸に書かれていて、今回も凄くいい歌詞ですね。
ユユ「嬉しいです。別の曲ではまったく対照のことを書いて先に提出してたので、だからこっちはヘイトというか……」
ドク「ブラックジョーク?」
ココ「ジョークではない(笑)」
ユユ「普通に言ったら角が立つようなことも歌詞だったら言える、言ってやろうと思って」
——この曲調だから毒を吐けるっていうのもありますよね。
ユユ「はい。こういうキツいこと言うから韻踏んだちょっとポップな言い方にしようとか、そういうのは何となく意識したりしました」
——ちなみに作曲のLyLyさんという方は?
ユア「SCRAMBLESのスクールの生徒さんで」
ユユ「メロディーのコンペで選ばれて」
——前作に続いて今回もみんな参加して?
ココ「はい。うちらも同じタイミングで」
ドク「普通に生徒さんの応募もあって」
サキ「めちゃくちゃ集まったんですよ」
ココ「何だっけ、90曲ぐらい?」
ユユ「が集まって、そこから3曲選ばれた」
——じゃあ、ハルナさんが作曲された次の“夜暗い夢”もそのうちのひとつ?
ハルナ・バッ・チーン「そうです。作曲は全部やって、詞はユアさんと考えました」
ユア「1番とかサビまでの歌詞はハルナが採用された仮歌の段階で入れてくれてたので、サビとか2番以降を私がちょっと付け足して書いたって感じですね」
——曲名はHilcrhymeさんに引っ掛けたものですけど、“春夏秋冬”とかを知ってて?
ハルナ「はい、『太鼓の達人』をやってたので。〈一生一緒にいてくれや~〉って」
ココ「え、違う、違う!」
ハルナ「同じ歌かと思ってた……」
ドク「でも、ハルナは意外とジェネレーションギャップみたいのを感じさせない知識なんですよ。古い曲とかも知ってて」
サキ「そうだね。お母さんが聴いてたとかもあるもんね、よく」
ユア「月(月ノ)とかのほうが知らないよね」
月ノ「私、全然聴いてこなかったので」
ドク「そう、月とユユが全然知らない」
ココ「ユユも若者ぶるんですよ(笑)。時々ハルナとかと一緒に〈知らない、知らな~い〉とか言ってて(笑)」
ユユ「いやいやいや、ホンマに知らんよ」
——曲がラップとか語りメインなのは、オケの段階で指定があったんですか?
ハルナ「ないです。勝手に語りにしました。トラックを聴いた時に、これは花魁っぽいなと思って、いろいろ調べて花魁の歌を書きました。江戸時代の、風俗の歌です」
サキ「風俗の歌(笑)」
——花魁というものはだいたいご存知で。
ハルナ「あの、私はおばあちゃん子、おじいちゃん子だったので、小さい時に『水戸黄門』とかをずっと一緒に観ていまして」
——時代劇に馴染みがあって。フック以外は朗読っぽいパートが中心ですけど、ミキさんが普通に朗読してる前に、何かまたクセの強い人がいたり(笑)。
ミキ「そうなんですよ、強いんですよ、周りのキャラが(笑)」
ココ「私もYOUさんみたいに鼻声でやったとこがあるんですけど不採用でした(笑)」
ユユ「クセ強すぎたな」