BOSS ON BROADWAY
ブルース・スプリングスティーンの半生を自身の言葉で歌い語った感動の舞台がパッケージ化!
このたびお目見えした『Springsteen On Broadway』は、ロック界の生きる伝説、ボスことブルース・スプリングスティーンが2017年10~12月にブロードウェイで行ったショウの実況盤だ。世界的なベストセラーとなった自伝本「ボーン・トゥ・ラン ブルース・スプリングスティーン自伝」を元にしたトークと、それに紐付いたテーマを持つ彼の曲がギターかピアノの弾き語りで披露されるといったシンプルな構成だが、そこは稀代のエンターテイナーであるボスのこと。ただの弾き語りライヴやひとり芝居にはならず、まるでカフェやバーで友人と過ごしているかのようにフランクな雰囲気のなか、ライヴMC巧者としても知られる喋り芸と心に響く歌をワンセットにし、笑いあり涙ありの魔法のようなパフォーマンスが繰り広げられたスペシャルな演目となっている。
Disc-1では、生まれ育ったニュージャージーの田舎町の情景描写、ロックンロールとの衝撃的な出会い、父や母との関係、故郷を飛び出して独り立ちした頃のこと、バンドの下積み時代の苦労、大陸横断の旅で魅了されたアメリカという国の美しさなどを、時にはユーモアを交え、時にはシリアスに物語っては歌っていく。続くDisc-2では、代表曲“Born In The U.S.A.”を書かずにはいられなかったヴェトナム戦争にまつわるタフでシリアスな逸話の数々、バンド・メンバーとの友情や結束、家庭を持つことで生まれた心境の変化、人々が集うことのメリットや民衆の怒りと希望、そして最後にホームタウンをいまふたたび訪れて感じた永遠の思いが、わかりやすくも深い考察を含んだ瑞々しい感受性からくる詩的/文学的/哲学的な表現によって描かれている。
彼のストーリーテリングにひどく興味をそそられ、魂を強く揺さぶられた後に、さらに心に染み入ってくる歌。現代最高峰のエンターテイメント作品であり、そして鑑賞した人のその後の人生観を決定的に変えてしまう小説や映画のような感動を覚える、芸術作品とでも表現すべき2枚組だ。