ブルー・ノートを代表する新世代シンガーのひとり、ホセ・ジェイムズが表す新境地。バンド・メンバーにギタリストを迎え、ジャズやソウルに留まらず〈好きな音楽全ての融合〉を試みた大胆な意欲作だ。リズムの微妙なズレや揺らぎが絶妙なグルーヴを生み出す“U R The 1”、注目の女性SSWベッカ・スティーヴンズを迎えた儚くフォーキーな3曲、 鍵盤奏者クリス・バワーズとの共作でファットな電子音と攻撃的なリフが印象的な“EveryLittleThing”など、多彩な楽曲が並ぶ。幅広い音楽を咀嚼してきたホセだからこそ出せるニュアンスが、メロウな歌声をさらに魅力的にするのだ。
前作でのディアンジェロ的な作法に世間が気を奪われている隙に、ホセは次のステージに進んでいた。1年半ぶりとなるブルー・ノートからの2作目は、クリス・バワーズら現代ジャズの奇才が集うバンドにギタリストを加え、シューゲイザーばりのロックやアシッドなフォーク、UKのクラブで刺激を受けたというエレクトロニカを混ぜた音表現で異次元へ。とはいえ、スモーキーでクールな歌い口は変わらず、旧知のベッカ・スティーヴンスがムーディーな美声を交えた“Dragon”のような女性とのデュエットを今回も披露している(日本盤では椎名林檎とも)。本編最後のアル・グリーン曲“Simply Beautiful”では盟友・黒田卓也をトランペッターに迎え、ソウルを歌ってジャズに着地。根があればこその冒険作なのだ。