Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載、〈Mikikiの歌謡日!〉。更新は毎週火曜(歌謡)日、数無制限でNEWな楽曲を軸に、たまに私的マイブームも紹介していくので、毎週チェックしてもらえると思いがけない出会いがあるかもしれません◎ *Mikiki編集部

 


【高見香那】

台風クラブ “火の玉ロック”

4月12日に7インチ・シングルでリリースされた新曲。〈バンドをやり始めてから出会って、 そして解散してしまった大好きなバンドたちを歌った歌〉とのことで、ちょっとセンチメンタルなロックンロール・ナンバーなんですが、諦念を感じさせる石塚氏の歌世界の強度がただの春ソングには当然させません。「俺はいつも忘れてしまう/浮ついた夜の静けさや/明け方に窓をかすめ落ちた/星があったこと」という歌い出しの歌詞がたまらないです。

 

オワリカラ “I LIKE IT”

フロントマンのタカハシヒョウリ×大槻ケンヂ対談も掲載したばかりのオワリカラのニュー・アルバム『PAVILION』冒頭曲で、ツダフミヒコ氏の唸るベースリフから始まるファンク・ナンバー。先週末に足を運んだリリース・パーティーでも一曲目でばっちりキメてまして、デヴィッド・ボウイばりの艶やかロック・スターっぷりに惚れ惚れする(白いジャケットが似合う)ヒョウリ氏の変幻自在なヴォーカルに、演奏陣はそれぞれに一筋縄ではいかないキャラの立ち様で(そして上手い)。ヒョウリ氏が〈オワリカラはピンでも成立するミュージシャンの集まりでありたい〉といったことを発言されていたんですが、まさにそうだと感じましたね。いつになく音とパフォーマンスを隅々まで楽しめたステージでした。昨年結成10周年を迎えたこのロック・バンド、脂乗ってます。

 

【酒井優考】

カカポ “カカポのうた”

GWに大量のライヴの予定が入っていてすでにパンク気味ですが、お誘いが来ていたにも関わらず別件で行けなさそうなのでこちらでご紹介を……。ピアノの先生で、周防義和さん(映画音楽でもおなじみ)とのユニットCOMAでも活躍していた小石巳美さんと、無数の打楽器を自在に操るパーカッショニスト川瀬正人さんによるカカポのライヴ映像より。飛べなくなったオウムの名前を冠するユニットのテーマソングでもあるこの曲。〈直し方が分からないものを壊すのはもうやめよう〉とは何を意味すると思いますか。

 

THE LITTLE BLACK “先”

元WHITE ASHののび太と彩、公募で選ばれたドラマー・マットからなるTHE LITTLE BLACK。いつの間にか発表されてた新曲が鬼かっけえ! 急なテンポダウンで彩姉さんのベースがグワングワン……からのいきなりのブレイクにドキッ。動画元に歌詞もあるので読んでくれよな!

 

椎名林檎 “長く短い祭”

4分3秒のハイタッチよ。無敵。

 

【天野龍太郎】

Tsudio Studio “DRAGON TAXI”

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

DRAGON PRIMEコンピレーションアルバムより『DRAGON TAXI/Tsudio Studio』の試聴用動画です。

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5曲ぶんくらい書き進めていた下書き原稿をすべてやめにして、今回は4月21日に京都メトロで開催されたイヴェント〈Yu-Koh α版〉スペシャルということに。

上掲動画で断片的に聴けるこの“DRAGON TAXI”なる曲は、神戸の男前・ツジオさんが〈Yu-Koh α版〉の終演間際、セルフ・アンコールで披露したドラゴンファンク。スラップ・ベースの響きが強烈なトラックだが……〈ドラゴンファンク〉というジャンルがいったいどんな音楽を包含するものなのかは、たぶん誰も知らない。4月28日(日)にDRAGON PRIMEのコンピレーション『新しい龍学1』で正式リリース予定。

 

SNJO “ロング・バケーション”

サウンド・プロデュース、作曲、そして歌唱と、オールマイティーな、なおかつ底知れない才能の持ち主であるSNJOくん。彼がLocal Visionsの新しいコンピレーション『Oneironaut』に提供したこのあまりにも素晴らしい“ロング・バケーション”は、ブラジリアンなリズムが誘惑的。メトロでの出音・鳴りは他の出演者の誰よりもすごかった。

 

feather shuttles forever “提案(feat. Tenma Tenma, kyooo, hikaru yamada, 入江陽, SNJO, 西海マリ)”

thaithefishと台車ことINDGMSKのミックスに音楽観を変えられたというhikaru yamada and the librariansの山田光が取り組んだ、シティ・ポップ/ライト・メロウ的な〈何か〉。5人のヴォーカリストの歌と山田のサックスが寄せては返していくこの曲は、果たしてシーン(のようなもの)を象徴する代名詞的な曲に。イントロのデジタルでクリスタルな音色のピアノ・リフがすべてを物語る。

 

山下達郎 “LOVELAND, ISLAND”

ヴェイパーウェイヴへのオマージュでシティ・ポップのスクリューとともに15分間のDJを終えたthaithefishが、その直前にかけた誰もが知る名曲。〈誰も知らない自分だけの名曲〉をディグし、価値の転倒をはかる〈シティ・ポップ・パルチザン〉たるlightmellowbu的には反則技・禁じ手だったかもしれないが、前触れもなしに突然鳴りだした〈誰もが知る名曲〉はフロアを揺らした。その、閃光のような驚き。奇妙にツイストされた文脈のなかで、〈名曲〉は新たな輝き方をする。

 

【田中亮太】

SEVENTEEN AGAiN “ピリオド”

彼らが2015年にリリースした前作『少数の脅威』は、パンクという生き方との出会いという点で、自分の人生を変えた一枚だった。当時の4人編成が醸していたギャング感にもヤラれたし、いまにも空中分解しそうなスリルに満ちたライヴはいまもよく思い返す。それからバンドはメンバーが2人抜け、元フジロッ久(仮)のろっきーが加入しトリオに。以降、彼らを取り巻く状況が少しずつ大きくなっていることは察知していたが、僕はどこか距離を置いて眺めていたようなフシがあるかもしれない。

EPや7インチなどいくつかのパッケージを経てついに完成した、4年ぶりのアルバム『ルックアウト』が7月10日(水)にリリースされる。この“ピリオド”はアルバムの冒頭曲。スケール感を増したサウンド、ビッグなコーラス。これは、より広い世界と対峙するための覚悟の歌だ。セカオワにワンオクに、あるいは1975に、市井のパンク・バンドが彼ら自身のままでいかに肩を並べることができるかという無茶な問いへの、真摯な答えでもある。〈誰も知らないところに行きたい/誰も知らない歌を歌おう/だけどピリオドは迫ってくる/だから僕はもっと生きたいんだ〉。彼らの行く末を、もっと近くで見ていたいと強く思った。

 

I Don’t Like Mondays. “Do Ya?”

ディスコ/ブギーな潮流をスマートに日本語ポップ化してきた彼らの新曲は90年代のヒップホップにフォーカス。adidasを身に纏って踊り狂ってます。ジャネール・モネイ“Make Me Feel”(2018年)への目配せも匂わせ、モーレツ!なギター・ソロもちょっと殿下フィールがありますね。I Don’t Like Mondays.みたいなバンドが日本にいること、頼もしいです。

 

The trees “Breakfast Club”

東京を拠点に活動する4人組の新曲。ネオアコの清涼感×パワフルなロック・リズムで、いちばん近いのは初期スピッツなんじゃないでしょうか。上ずらないギリギリの高さを滑空する歌声の青さに魅力があります。予期せぬ出会い、いまにも膜を破って飛び出てきそうな胸の高鳴り。そんな気持ちを映したこの曲を、2019年の“ヒバリのこころ”とたとえるのは言いすぎでしょうか。うーん、それは言いすぎかもね。

 

シャムキャッツ “おしえない!”

そんなtreesが、今週末4月27日(土)に下北沢THREEで開催する自主企画〈YOUNGER THAN YESTERDAY〉に、DJで出演するのがシャムキャッツのギタリスト、菅原真一。というわけでシャムの新MVも紹介します。ヴォーカリストの夏目知幸がみずから監督を務め、おそらくアジア・ツアーで撮影した映像を中心に編集。夏目くんのスウィートさが溢れんばかりに詰まった楽曲とあいまって、キュン死必至な作品になっています。ああ、あなたのように世界を見られたならば。