活動5年目に突入してなおエッジーな道を拓いていくBiSH。アメとムチを使い分けた配信EPと来るべきアルバム『CARROTS and STiCKS』をさらに楽しむべく、今回は首謀者の松隈ケンタと渡辺淳之介に語ってもらおう!
4月1日、全国6か所の映画館で行われた映像作品「BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR FiNAL “THE NUDE”」完成記念上映会の最後に、ニュー・アルバム『CARROTS and STiCKS』の発表をサプライズ告知したBiSH。前作『THE GUERRiLLA BiSH』(2017年)からおよそ1年半というスパンだけ考えても待望の一作に違いありませんが、今回のリリースに際しては〈#BiSHアメトムチ〉なるプロジェクトが3か月に渡って展開されていくこととなりました。まず、翌2日には渋谷駅地下の壁面に〈剥がせるCD〉を2000枚貼り付けた巨大なピールオフ広告を掲出して話題を撒き、リード曲“遂に死”のMVを公開。3日に4曲入りEP『STiCKS』をApple Music限定配信し、5日の全国ツアー〈LiFE is COMEDY TOUR〉初日にてその全曲をパフォーマンスしました。この先は5月3日にも4曲入りの『CARROTS』を配信し、同5日のZepp Osaka Bayside公演でその全曲を披露、6月にアルバムのリード曲を公開したうえで、7月3日にはそれらを含む全14曲入り(昨年からのシングル曲や1月配信の“二人なら”などはボーナスCDに収録)のアルバム『CARROTS and STiCKS』を投下……と、サブスクとライヴを連動させながら立体的にCDリリースを盛り上げていこうという寸法です。てなわけで、今回は仕掛人の渡辺淳之介(WACK代表)とサウンド・プロデューサーの松隈ケンタ(SCRAMBLES代表)に話を訊きました。
振り切ってみたい
――まず、一連の構想はどういうふうに始まったものでしょうか?
渡辺淳之介「基本的に僕たちで共有しているヴィジョンとしても、avexの戦略としても、BiSHは尖ったものも売れそうなものも、とにかくどっちも取りたいっていうものがやっぱり一番にあって、そのなかでavexからのプロモーション案もあって、この構想に至った感じです。去年の“NON TiE-UP”と一緒の感覚ではあるんですけど、やっぱりBiSHで尖ったこともやりたい気持ちはずっとあって」
松隈ケンタ「ありがたいことに去年は“PAiNT it BLACK”からどの曲もタイアップ付きまくって、そのぶん我々やメンバー、スタッフまで含めたアーティスト・サイドから発信する曲があまりなくて、その反動が“NON TiE-UP”になったんですよね。で、今回はそれをアルバム単位で作ろうというか。ダークなのもやりたいけど、どポップな部分もBiSHの良さなので、そこをクッキリ分けてみたらおもしろいんじゃないかっていうところから作り出しました。なんで、曲は後からだよね」
――じゃあ、分ける発想が最初にあって。
渡辺「そうですね。最初は〈BLACK and WHITE〉って仮で呼んでて。なんで、ブラックな部分は突き詰めつつ、ホワイトの部分は綺麗にやりつつっていうのが一番にありましたね」
――〈アメとムチ〉にしろ、WACKの経営理念みたいなタイトルですね。
渡辺「どっちもありますね(笑)。『CARROTS and STiCKS』は、英語だとホントはSが付かない〈Carrot & Stick〉なんですけど。まあ、タイトルは基本的にカッコイイかなってぐらいの理由です(笑)」
――昨年のツアー名の〈BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR〉とも繋がってますし。
渡辺「はい。馬だったんで、そこにもちょっと掛けつつ。〈ジキルとハイド〉とかいろいろ案はあったんですけど、しっくりきたのがこの〈アメとムチ〉だったっすね」
――とはいえ、“NON TiE-UP”って、例えば幕張のエンディングとかで改めて聴くと尖りつつも凄くポップに響く曲ですけどね。
松隈「そう、あれポップなんですよね、謎に」
渡辺「まあ、僕も松隈さんも凶悪にはなれないっていうか(笑)、聴いて楽しんでもらわないと意味がないっていうところはあるっすね」
松隈「うん。だからこそ、今回の『STiCKS』ではもう一個先に行ってみたいっていうのが僕的にはあって。いままで行ってないところまで振り切ってみた初めてのパターンかな」
渡辺「おもしろかったんですけど、最初に各EP用に10曲ずつくらい作ってもらって、『STiCKS』用の曲が上がってきた時に、〈あの、もうちょいサビがあってもいいかもしんないっす〉って話をしましたよね(笑)」
松隈「そう、最初はもっと過激やったから、珍しく〈行きすぎ〉って言われて。いつも逆やのに。〈え? サビあっていいの?〉って」
――ではその『STiCKS』の話からですけど、MVもある“遂に死”がリード曲で。これが一番エクストリームな出来というか。
松隈「そうですね。作ったなかでも一番エクストリームやったかもしれんね(笑)。まだ“FiNALLY”とか“FREEZE DRY THE PASTS”はビートが普通にあるから。“遂に死”はいままでと違うものを作りたくて、鬼バンドでベース弾いてた小原just begunに初めてメインでトラックを作らせてみたんですよ。僕とはLUI◇FRONTiC◆松隈JAPANから一緒にやってて、彼はあんまり自分で曲を作るタイプじゃないんですけど、たぶんエキセントリックな人なんで、今回は〈こういう感じで作ってみて〉って好きにやらせてみて、僕がメロディー入れました。だから逆にいままでの発想にないものになりましたね」
――小原さんは“しゃ!!は!!ぬあ!!あぁ。死!!いてぇ。”のトラックも共作されてました。
松隈「そうなんです、あれも良かったんですよね。小原は今回“FREEZE DRY THE PASTS”もやってて大活躍で。で、BiSHは〈楽器を持たないパンクバンド〉って言ってて、僕はそんなに気にしてなかったんですけど、やっぱり楽曲をライヴで再現していくバンドだっていう枠が心のどこかにあったんです。でも、今回のテーマをきっかけにそれも振り切って乗り越えようと思って、打ち込みを堂々と入れたんですよ。なんで、できることがもうバーンッて広がったんで、良い意味でムチャクチャなロック、インダストリアルな方向にも行けたかなっていう感じですかね」
渡辺「マリリン・マンソンとかナイン・インチ・ネイルズの『Broken』とか、90年代のインダストリアル感がリファレンスでしたね」
松隈「ああいう人たちってセンス系の音楽だから、セオリーがないんですよ。もう、あの人たちがやってそれで成り立つ音楽なんで、難しかったですね(笑)」
渡辺「でもやっぱ僕も自分の引き出しにあるものを聴き直して改めて思ったのは、あの時代はホントにおもしろかったんだろうなと思ってて、リンキン・パークとかが出てくる前の感じというか。そんななかにPJハーヴェイみたいな感じの子もいたりとかして……まあ、全体に暗いっすね(笑)」
――90年代US特有の暗さですよね。
渡辺「そうっすね。ニルヴァーナとかも含めですけど、あとはマッドハニーとか。『STiCKS』のほうは全体的にそのへんの暗い雰囲気を意識してます」
松隈「おもしろいのが、『STiCKS』のミックスは僕が全部やったんですよ。いつもはうちのエンジニアの沖(悠央)が全曲やるんですけど、もうエンジニアをかます時点で普通のものになるというか、やっぱりああいう人たちの音っていうのは、エンジニアがセオリー通りやっても絶対できないんで、もう全部〈俺によこせ〉っつって、とりあえずディストーションいっぱいかけてみました(笑)」
渡辺「もうムチャクチャですよね、ホントに“FREEZE DRY THE PASTS”とか耳が痛いっすもんね(笑)」
松隈「〈意味わかんない音にしてくれ〉ってずっと言うんで、〈なぜこのシンバルのデカさにした?〉とか、そういうことばっかり考えました」
――緩急もヤバイですし。
松隈「アハハハ。〈こっからくるんや!〉みたいな、聴いたことない角度からシンバルきたりとか、いろいろ音楽的にも細かいことにこだわってみました」
音を散らかす作業
渡辺「でも『STiCKS』を通して聴いて、〈あ、これこれ〉って思いました。ゆらゆら帝国の“グレープフルーツちょうだい”とか、椎名林檎もそうですけど、〈うわ、痛っ!〉みたいな感じじゃないですか。いまはどうしてもその耳触りの良さっていうか、どんどんマイルドにマイルドにっていう方向に行くので」
松隈「まあ、アレンジャーとかエンジニアは、散らかってるものをキレイにする職業なので。だから、整えていくものなんですけど、今回は散らかす作業をしましたよね」
渡辺「逆にね」
松隈「それでも、やっぱマリリン・マンソンとかホントにキレイに散らかしてるし、ただ散らかすだけじゃ素人の音楽になっちゃうんで、そこは一応プロのメジャーでやってるクリエイターとして……」
渡辺「気持ち良く聴ける散らかり方を」
松隈「そうそう、やっぱり作品として聴けるのは、PJハーヴェイとか、あのへんの人たちのはちゃんとしとるけん」
――その意味で言うと、BiSHを始めた当初の〈ジョンスペみたいなのがやりたい〉っていう構想がある程度ここで実現されてる部分もあるのかなって。
渡辺「そうっすね。だから、『STiCKS』に関しては僕の希望が色濃く出てるかもしれないっす(笑)」
松隈「淳之介が昔やりたかったのはこれなのかなって、俺は勝手に思ってたけどね」
渡辺「いや、BiSHが始まって4年ぐらい経って、やっとこれが認めていただける土壌が整ったなという感じは(笑)」
松隈「いまなら良いなって思うよね。4年前にファーストでこれやったら意味わかんないと思うよ(笑)」
渡辺「そうっすね。まあ、今回avexのディレクターの篠崎さんから言われて印象的だったのは、〈とにかく好きにやってくれ〉と(笑)」
松隈「そうやったね。テーマが〈松隈と渡辺が好きなものを作ってくれ〉と。暗い/明るいっていう枠組みだけはありましたけど」
渡辺「なので、メンバーも詞を書いたんですけど、納得いかなくて今回は僕がめちゃめちゃ奪いましたね(笑)。たぶんみんなブーブー言ってると思います」
――前の『THE GUERRiLLA BiSH』でもメンバー作詞が半分以上だったのに。
渡辺「ちょっと〈好きに作っていい〉って言われたので(笑)。逆に珍しく松隈さんからも歌詞の注文がきたりして、表現の仕方だったり、いつもより細かいところまでこだわりました」
――あとは“優しいPAiN”ですね。ここにきての“スパーク”感というか。これはドラムが松隈さんなんですよね?
松隈「そうです、そうです。初心者なのに自分でドラムを叩くという、斬新な」
渡辺「凄いっすよね。曲が上がって松隈さんに会った瞬間に言われたのが〈俺のドラム良かったっしょ?〉って(笑)」
松隈「5~6時間かかりました(笑)。しかもミックスまとめなきゃいけない締め切りの日に朝から録って。だからスタッフもビックリですよ。ドラマー呼んでないのに〈ドラムのセッティングして〉とか言って。〈誰が叩くんすか?〉〈俺に決まってんだろ〉みたいな(笑)。それでやってたら楽しくなっちゃって。まあ、やっぱり若い感じというか、青い感じを出したくて、いままでもニュアンスを凄い大事にしてたんですけど、やっぱり突き抜けなきゃいけないんで、ホントの素人が叩くっていうのがいいと思って」
渡辺「いや、スゲエ良かったっす」
松隈「これをやりきるなら、俺が叩くしかないってことで。この曲はデジタル感は出したくなくて、ルーズな感じにしたかったんで、もう切り貼りも修正もせず、ズレたものはズレたまま入れて。その代わり小節単位で録ってたんで、2~3時間やって〈まだサビに辿り着かねえ〉とか言って、もうスタッフはみんな絶望してました(笑)」
渡辺「〈勘弁してくれよ〉みたいな(笑)」
松隈「また、下手なくせにこだわるんよ、俺が(笑)。自分のせいなのに、〈何だ、いまの違う! もう1回!〉とか言いながらストイックにやりました。レコーディングの時にモモコ(グミカンパニー)が〈このリズムだとライヴとか絶対揃わないですけど、どうするんですかね?〉とか悪気なく言ってたんで、〈コノヤロー〉と思いましたけど(笑)」
――(笑)これに関しては、そこまでしてでも、拙さを追求したかったというか。
松隈「そうですね。求めるイメージ、90年代の人たちの感じとか考えると、そのドラマーしか叩けないビートがあるし、打ち込みじゃ絶対再現できないじゃないですか? もともと“スパーク”も青臭さを出したくて、楠瀬拓哉にわざと良いニュアンスで叩いてもらってたので、それもかなり参考にしましたね」
渡辺「『STiCKS』に静かな曲も入れたかったんですよね。モグワイとかenvyみたいな、ちょっと激しすぎてキレイになっちゃうみたいな……感情はギザギザなんですけど、優しくなるっていう感じをめざせたので、ここに入れたいなっていうところになりました」
――この4曲でまとまりがありますね。
松隈「うんうんうん。この一曲があるだけで締まりが出るというか」
渡辺「EP感ありますよね」
削ぎ落とした気持ち良さ
――一方で5月配信の『CARROTS』ですが、こちらは親しみやすいというか……。
松隈「そうですね。だから『STiCKS』が……告知映像にしてもらってましたけど、売れない、汚い、サビがよくわからないっていう(笑)。その『STiCKS』へのカウンターなんで、『CARROTS』は売れたいってことです。まあ、BiSHはポップで可愛い曲もウリですから、そこを無理せずストレートに出したものかなと思います」
渡辺「そうは言いつつ、これは全然意図してた部分じゃなく感じたんですけど、『STiCKS』が散らかってるという意味で言うと、『CARROTS』はかなり削ぎ落としたというか」
松隈「そうそう、シンプルだね」
渡辺「シンプルに気持ちが良いっていうか、音数も凄く少なくて、俺は松隈さんがそういうふうにしたのかなって勝手に感じましたね」
松隈「最近の風潮としてやっぱりスカスカしてる音がまた増えてきたので。僕の作り方がけっこう詰め込む感じが多かったので、2019年はちょっとスカッと始めようかなという感じはありました。“NO SWEET”だけは僕から提案した別のイメージだったんですけど、淳之介からは〈メロコアがいいんじゃないか〉っていう話もあったし」
――『KiLLER BiSH』の頃、“summertime”とか“KNAVE”を思い出す雰囲気です。
松隈「そうです、そうですね。昔のBiSHのスカスカな感じはちょっと意識しました。あと2曲目の“まだ途中”は超おもしろくて、打ち込みを初めてやらせた生徒っていうか、バンドマンがいて、センスは凄いあるから〈打ち込み勉強して練習でトラック作ってみろ〉っつって、疑似的にちょっと参加させたんですよ。そしたらまあヘタクソで、明らかにベースがズレて、ドラムのリズムも何かヨレてるんですよ、打ち込みなのに(笑)」
渡辺「でも曲はヘボくないんすよね」
松隈「良いんですよ。やろうとしてることはわかるんですけど、どうやって作ったか謎すぎて。だから気になっちゃって、とりあえずメロディー入れてみて遊び半分でみんなに聴かせたら、〈良いじゃないですか〉って、まさかの採用になるっていう(笑)。僕が福岡で育ててる空狐3000っていうバンドの奴なんですけど」
――配信レーベルのscramble edgeから出されてる方々ですね。
松隈「そうです。彼らもBiSH大好きなんですけど、採用されるなんて夢にも思ってなくて。良い勉強にもなるし、新しい風が入ってくるのは凄く良いと思って」
――こちらもミックスは松隈さんですか?
松隈「『CARROTS』のミックスは沖が全部やってて、いつも通りの布陣ですね。普通この幅は作れないし、この企画だからこそどっちもできたので楽しかったっすね。で、ここから一つのアルバムになるわけですし。まだ全曲は出来上がってないんですけど、『STiCKS』と『CARROTS』が混じっても違和感なく聴けるし、凄いアルバムになるなと思ってます」
――作り方の基本は変わらず、どれもトラック先行でやられてるんですか?
松隈「それは基本一緒ですね。先に〈こんな感じでトラック作りましょう〉っていうイメージを出して。SCRAMBLESのクリエイター、いまレギュラーで13人いるんで」
渡辺「スゲエ増えましたよね」
松隈「僕は福岡に帰りましたけど、クリエイターはほぼ東京に置いていってるので、みんな頼り甲斐が出てきたし、チーム全体もかなり屈強になってますね。で、スクール生も150人、200人弱ぐらいいるんで」
――大きいチームになりましたね。
松隈「ただ、前TVでやった時に批判されたりもしたのよ。みんなで机並べてコライトして、何かあんまり音楽的じゃないね、みたいな。ただ、皆が知らないだけで、普通にやってる人は、むしろもっと幅広く他人と一緒に作ってるので。一人で作ってる人でもミックスは誰かに外注してて、演奏もアレンジもその都度外注してて、でも作曲家にしかスポットが当たらないだけで。で、僕がやりたいのは、知らない人とやるよりサウンドのブランド感が取っ散らからないので、むしろ13人でバンドやってるみたいなイメージなんですよね。この『CARROTS and STiCKS』もいままで以上にこだわれて、かなりおもしろいアルバムだと思いますけど、やっぱ一人でやってたら絶対できないですし、いろんな作家さんから曲を集めてもこうはならないので、そこが他のチームとは違うかなというところは自信持ってますね。統一感がやっぱり出るし」
――はい。では7月の『CARROTS and STiCKS』はどうなりますでしょう。
渡辺「いま話せる範囲で言うと、僕も新たに作曲に挑戦しています」
松隈「初めてのパターンで、トラックを淳之介に渡してコライトしたんですよ。過去にもギャンパレでコンペはやったんですけど、ハルナ・バッ・チーンでさえ受かるのに、淳之介はボツられるという(笑)。そして辻山(GANG PARADEのマネージャー)が採用されるという屈辱をね(笑)」
――ああ、“とろいくらうに食べたい”の時にも出されてたんですね。
渡辺「はい、けっこう自信作を……」
松隈「うちはやっぱ質にこだわってますから(笑)。それで自信失っとったのかわからんけど、今回も〈大丈夫っすか?〉って言っとったね。で、〈Aメロこんな感じです〉って作ってきたものが良かったんで、サビを僕が作って」
渡辺「作曲の共作は初ですね」
松隈「まあ、まだ録ってないから採用されるかわからんけどね(笑)」
渡辺「怖いわ~(笑)。まあ、アルバム用のリード曲も素敵なのが出来てますし、EPをガンガン聴いて『CARROTS and STiCKS』を楽しみにしててほしいです」
BiSHのライヴBD「BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR FiNAL "THE NUDE"」(avex trax)
7月3日にリリースされるBiSHのニュー・アルバム『CARROTS and STiCKS』(avex trax)
関連盤を紹介。
各グループの展望
――では、余談というか……まさに〈アメとムチ〉だった先日の〈WACK合同オーディション〉合宿について伺いますけど、ざっくり振り返っていかがでしたか?
渡辺「う~ん、昨日も松隈さんと飲みながら振り返ってたんですけど、総評としては今回ホントに誰も入らない可能性も正直あったなと思うくらい、最後まで悩みました。やっぱりWACKっていうものがどんどん注目されて、ニコ生の視聴者数も去年の倍以上になってビックリしたんですけど(笑)、それによって、もう別次元に突入してるというか。曲もよく知らないとか論外だし、〈自分が入りたい事務所のことなのにな〉って思うんですけど、それぐらいの気持ちでも来ちゃうっていうか。だから、もし次があるなら合宿とかの一段階前でもっとちゃんと審査しないとなって」
――去年とも雰囲気は違いましたね。
渡辺「本質的なところで話をできない子たちをどう見極めればいいのか、僕が心折れそうになって、もう初日から帰りたかったっすね(笑)。たぶん僕が去年みたいなひょうきんなキャラでイエ~イなんてやってたら、何も起こらないし誰も合格しなかったんじゃないのかなって」
松隈「歌唱審査で思ったのは、WACK志望者っていうより、アイドル志望者の子が多くなって、〈アイドルだから歌はそんな期待されてないでしょ〉っていう感覚が強かったかな。ヘタなのは全然いいし、僕もスクールで初心者が歌うのもよく見るんですけど、それともまた違って。ぶっちゃけ音楽面を任される身としては全員ボツでしたけど、まあ合宿の過程で成長したとこもあるだろうし、入ってから鍛えれる部分はあると思います」
――そんななかでEMPiREにはテラヤマユフ(仮名)改めNOW EMPiREさんが加入して、ギャンパレにはWAggからナルハワールドさんが昇格しました。
松隈「WAggの子たちはSCRAMBLESで毎週ボイトレしてるんで、ナルハももう半年見てきたけど、成長は見えましたね。まあ、ちょっと親心のプラスはあるかもやけど」
渡辺「やっぱナルハは目を惹いたし、ここから伸びそうな感じはするんで、ギャンパレに入って変わるといいなと思います。いまのギャンパレにいない華として正統派に行ってほしいですね。チンコとか野グソとか言わなきゃいいなとは思ってます(笑)」
松隈「確かに。ハルナと対比になるといいね。曲を仕上げる立場だけで言うと、声がひとつ増えるだけでサウンドがガラッと変わるんで、そこは楽しみです。僕は歌をエフェクターだと思っていて、自分のメロディーとか淳之介の歌詞をいろんなエフェクターを踏み替えてどう鳴らすかっていうイメージで考えるので、人数が増えて歌割は大変やろうけど、エフェクターが増えるっていう意味では幅も広がるし凄く楽しいですね」
渡辺「まあ、WAggから昇格できる子がいて良かったなと思ってます。あとはそのWAggにセントチヒロノイモウトが入って。彼女は僕的に声が凄く好きだったので、成長を見守りたいっていう〈まだまだ枠〉ではあるんですけど、合宿中に変化がいちばん見えたので、自信を持ってやってもらいたいです」
――あと、BiSについて話せる範囲でお願いします。
渡辺「どこまで載せられるかなっていうところですけど(笑)、端的に話してしまえば、3月の頭ぐらいに〈これはもう解散するしかないよ〉とは告げてました。ずっと話し合いを重ねてきても彼女たちを変えることができなかったのは、もちろん僕自身の責任ですし、悲しいんですけど、彼女たちが本音でまとまれないなら解散もやむなしっていうのが、僕の言える結論ですね」
――9人の総意だと発表されてはいますが。総意とは?と思う部分もあります。
渡辺「どう言えばいいですかね……。続けていく意味はもちろんあるんですけど、やっぱり信じてられるからこそ続けられるんで。きっと映画になるんで最終的にはわかると思うんですけど(笑)、いい大人なら〈ああ、こういうことかな〉ってわかってると思うんで」
――はい。ほぼ書けない話なので(笑)、最後に各グループの今後を話していただいて。
渡辺「はい。WACKの道としては『CARROTS and STiCKS』が出て、BiSHがまだまだ牽引していくのは間違いないんですけど、かつてBiSHも売り切れなかった野音をGANG PARADEは完売できたので、ギャンパレにとっても天王山というか、そこでどういった素敵なライヴを観てもらえるかっていうところですね」
――一方、5月11日で現BiSは解散です。
渡辺「メンバーとは改めて一人ずつ話しながら、僕としては最大限サポートはしたいなと思いつつ、やっぱり離れる子も出てくるのかな。9人で固まるとアレですけど、彼女たち個人個人はいい子たちなんで……でも、やっぱり巡り合わせとか縁とか運っていうのがあるんだなって思いますね。もしかしたらこの機会に学んで、うちを出て成功する子がいるかもしれないし、そうやって僕が負けたと思う瞬間もいつか必ず来るんで怖いっすね。だから僕ももっと早く先頭を走らないと。そうは言いつつ、BiSはやっぱりなくせないし、新メンバーの応募もメチャメチャきてるので、そう遠くないうちに動きはあると思います」
――あとは6人になって7月にシングルも出るEMPiREですね。〈GG WACK〉のファイナルでも5人体制のステージが際立ってました。
渡辺「あの日のEMPiREはホント良かったっすよね。EMPiREはBiSみたいな状況だったのがやっとまとまってきて、今度のツアーも全公演ソールドアウトして良い流れがきてるなか、ここで加入させるべきなのかギリギリまで悩んだんですけど、この勢いに乗って状況を変化させるのはいましかないなと思って。いちばん挑戦する姿勢の見えたNOW EMPiREが良いケミストリーを起こしてくれるんじゃないかなって期待してます。今年はしっかりツアーで地固めして、GANG PARADEを見習うじゃないですけど、浮き足立たずにしっかりした土台を作ることを意識してやっていきたいです」
BiSHの2018年のシングルを紹介。
BiSH×SCRAMBLESが参加した2019年の作品。
関連盤を紹介。

Apple Music独占配信で登場した4曲入りの〈ムチ〉。ギザギザの音像にまみれてフリーキーな咆哮をスティックしてくるリード曲“遂に死”を筆頭に、鋭角的な耳触りのエクストリームな楽曲が並ぶ。勇ましく激情を飛び散らせた“FiNALLY”はセントチヒロ・チッチが作詞したキャッチーでダンサブルなトラック。“スパーク”似のブルージーなフォルムを取りながら何とも言えない虚無と虚脱で満たされた“優しいPAiN”はもちろん、静謐とのコンストラストが暴力的な“FREEZE DRY THE PASTS”はビザールなステージングも併せて観どころとなる衝撃的な逸曲だ。なお、『CARROTS』も含めたアートワークは、2月の初個展「魔法少女DESTROYERS(萌)」も話題になった若きアーティストのJUN INAGAWAが手掛けている。

こちらもApple Music独占配信となる4曲入り。カラッとしたサウンドが纏う『STiCKS』との違いは明らかで、ストレートな青春モードのBiSH節を備えたド直球なメロコア・ナンバーが威勢良く飛び出してくる。冒頭のパンキッシュなギター・ポップ“I am me.”はリード曲に相応しい問答無用な耳馴染みの良さ。そこにモモコグミカンパニーならではの温かい言葉が滲む“まだ途中”とアイナ・ジ・エンド作詞の“CAN YOU??”が軽快に追い打ちをかける。昨今は楽曲の世界観が壮大になっていただけに、こういう親密なスケールのBiSHを(も)待ってた!と快哉を叫ぶ人も多いだろう。ラストの“NO SWEET”は静謐なスロウで、サビでゆったり下降していく旋律の流れも新鮮な美しさ。アルバムへの期待も高めてくれる楽曲集だ。