Photo by Graham MacIndoe

マイク・ミルズ監督の短編映画とリンクした8枚目のスタジオ・アルバムとなる最新作を5月に発表!

 ザ・ナショナルの新作『I Am Easy To Find』は、同名の短編映画と合わせて発表される。約25分に及ぶ短編映画の監督は、マイク・ミルズ。主演はアリシア・ヴィキャンデル。アルバムと映画の関係は、マイク曰く「お互いのことを真似し合うことが大好きな、遊び心とライバル心を持った兄弟のようなもの」。『I Am Easy To Find』はこんなユニークなプロジェクトだが、本稿を書いている時点では、映画は予告編しか公開されていない。

THE NATIONAL I Am Easy To Find 4AD/BEAT(2019)

 アルバムには、シャロン・ヴァン・エッテンやリサ・ハニガンなど計5名の女性ヴォーカリストに加えて、女性中心のブルックリン・ユース合唱団が参加している。マイク監督の「人生はビギナーズ」(2011)は、彼の父親が晩年にゲイであることをカミングアウトしたことを題材とした作品で、最近作「20センチュリー・ウーマン」(2016)は高らかな女性賛歌。また、アリシアがアカデミー賞の助演女優賞を受賞した「リリーのすべて」(2015)は、世界で初めて性適合手術を受けた男性を題材とした小説の映画化である。これらのことと映画の内容、およびアルバムへの女性ヴォーカリストたちの参加がリンクしているのかどうか分からないが、ただひとつ確かなこととして、ザ・ナショナルのブライス・デスナーは過去にブルックリン・ユース合唱団とコラボレートしたことがある。

 ブライス・デスナーは、これまでにフィリップ・グラスやジョニー・グリーンウッド、クロノス・クァルテット、ニコ・ミューリー等ともコラボレートしてきた。アルバムには、こうした彼のキャリアが生かされていて、ミニマル・ミュージックの要素や室内楽的ストリングスの導入、ブルックリン・ユース合唱団の清廉なコーラスが、音楽的特徴となっている。ジョニー・グリーンウッドとブライス・デスナーの相互影響、すなわち〈英のレディオヘッドに対する米のザ・ナショナル〉――この図式がよりいっそう顕在化した。