小森はるかは東日本大震災の後、東京を離れ岩手県陸前高田に移住し、刻一刻と変わる街の風景やそこで出会った人々の営みを記録し始める。本作は、プレハブでたね屋を再開した佐藤貞一氏との交流から生まれたドキュメンタリー。まずは、声、語り口、佇まいといった佐藤氏の被写体としての魅力に圧倒される。そんな佐藤氏は、震災体験を独学の英語・中国語で自費出版もしているという。その意味で、本作は記録する者を記録した映画であり、記録するとは何かという問いをめぐる映画でもあるだろう。本作が感動的なのは、製作過程を含めた映画の存在自体が一つの回答となっている点だ。傑作。